ファンモン初の全国アリーナツアー最終公演@仙台で見えた、彼らの“誇り”。
FUNKY MONKEY BABYS | 2012.05.17
壮絶なファイナルだった。ライブ直後の楽屋挨拶で、ファンキー加藤、モン吉、DJケミカルの3人は、全身全霊を使い果たした素晴らしい表情をしていた。それは見方によっては疲労困憊の抜け殻のような姿に映るのかもしれない。が、3時間を超える彼らのパフォーマンスを経て出会うFUNKY MONKEY BABYSのツラ構えは、9000人と魂の交歓を果たした者にしか与えられない輝きがあった。3人はひたすら歌い、笑い、踊り、訴え、投げかけ、心を尽くし、最後に楽屋で泣き顔を見せた。“誇り”という言葉は、今日のFUNKY MONKEY BABYSのためにあると思った。
前日の春の嵐が嘘のように晴れ上がった仙台郊外のセキスイハイムスーパーアリーナに、続々と人が集まってくる。初めてのアリーナツアー“笑って歌ってもりあがァリーナ -行くぞ日本!!-”もついに最終日。東北地方最大規模の会場が、あっという間に埋まっていく。場内が暗くなると、いつものように白いウエアの2人が登場して“ファンモン・エクササイズ”をリードする。日本一の運動量をオーディエンスに要求する、ファンモン・ライブに欠かせない準備運動だ。
大スクリーンに映し出された隕石群のCGが会場を揺るがす中、まずステージに表われたのは、DJケミカル。スパイダーマンの扮装で空中を飛んでいるのに、会場は大騒ぎ&大笑い。DJブースに戻って蜘蛛の糸を投げながら「準備はいいかーい!」とDJケミカルが叫ぶと、ファンキー加藤とモン吉が走り込んできて、ライブが始まった。一気に3曲、アンコール並みのハイテンションだ。
「ただいまー、FUNKY MONKEY BABYSです。お前たちが吐き出すCO2と湿気のせいで、ステージ上は最悪だ。でも、そんな熱気をありがとう! いよいよツアーファイナルだぜ。ってことは、集大成。いいライブにしなきゃいけない。だから120%の力で音楽を楽しんでいただきたい。あ・・・叫ぶたびにメマイがする。行けるか、仙台。あなただけに歌う“希望の唄”だー!」とファンキー加藤。早くも酸欠状態になっている。大丈夫か?と思っていたら、大丈夫だった。そのまま4曲。最後の「この世界に生まれたわけ」がいちばん力強かった。
「楽しんでるかぁ? しょっぱなから“お前たちのCO2”とか言ってごめんね。今日は初めてファンモンを見る人もたくさんいらっしゃるけど、いつもこんな感じなんスよ。あんま、きれいな感じじゃない。あ、それと、見てください。実在するんですよ」とファンキー加藤がDJケミカルを指さしたから、会場から爆笑が起こる。「ファンモンが好きって言うと、周りの人から『あの真ん中の人、何やってんの?』って言われるでしょ(笑)」。
そのDJケミカルは、ライブごとに自らのタンクトップにご当地の有名人の似顔絵を描いてステージに立つ。この日は、モンキーマジック、ダルビッシュ有投手などが大いに会場を沸かせた。
「FUNKY MONKEY BABYSが初めて地元以外でツアーをやったのは、東北なんですよ。そこで仲良くなったファンが“みちのくBABYS”を作った。だからここが“BABYS”発祥の地。そして仙台もいいけど、俺たちの地元・八王子もいいところ。行き方は、新宿からGO TO WEST!」とファンキー加藤が叫んで「八王子純愛物語」が始まった。
ここからがこの日のハイライトだった。
キレッキレのリズムで歌うファンキー加藤、モン吉はハスキーな声で楽しさ全開。受けてDJケミカルはスクラッチをキメる。「空」でモン吉がスムーズなキャラ立ちラップをかませば、ファンキー加藤がメロディを丁寧にトレースする。DJケミカルは曲に合わせて独特のダンスを披露。FUNKY MONKEY BABYSのエンターテイナーとしての資質が爆発する。
そして後半はまさに肉弾戦。ステージと客席が熱気の火花を散らす。
「去年の暮れに2012年のツアーをどうするかメンバーとスタッフで話し合って、“2011年に置き忘れた笑顔を取り戻せるようなツアー”にしようと決めた。23公演のスケジュールを組んでいったら、偶然、ファイナルが仙台になった。そのとき、神様が俺たちにプラスアルファを背負わせてくれたと思った。俺たちが全国を繋いで、その笑顔を仙台に届けるツアーなんだなと思った。だから帰る頃にはみんなを笑顔にしたい。みんなが背負ってるものを降ろしてもらって、FUNKY MONKEY BABYSの音楽に寄りかかってください」。このファンキー加藤の言葉を聞いて、熱くならない人はいない。
「人は幸せにならなくちゃいけない」と言って始まった「ちっぽけな勇気」が凄かった。途中、ファンキー加藤が生声で「力を貸してくれ、東北!」と叫ぶ。オーディエンスが大声でそれに応える。おそらく震災後、「力を貸してくれ、東北!」という言葉を吐いたアーティストは、彼が初めてだろう。僕もこのセリフに度肝を抜かれた。それは全力でステージに立つ者の心からの誠意と、それを受け入れ認めるオーディエンスの間にしか成り立たない交歓の一瞬だった。思わず僕は記者席で、胸が熱くなった。歌い終わって、ファンキー加藤はステージに正座して「ありがとう」と言った。すでにエナジーがギリギリで、立っていられないのかもしれなかった。
そこまでやり切ってからのアンコールである。「今回のツアーで、仙台がいちばんしんどい。でもそれだけみんなに押されて、140%出せた。忘れたくても忘れられない」とファンキー加藤。「昨日から風邪引いてて、でもみなさんのおかげで乗り切れそうです。あっ、ヤベ。立ちくらみ」とモン吉。「この伊達正宗公の名刀で、殺陣を披露しよう」とDJケミカルらしく照れる。
「ヒーロー」ではファミリーでライブを楽しむオーディエンスが、笑顔を浮かべ合いながら3人と一緒に歌っている。家族全員でジャンプする光景も、ファンモンのライブの特徴である。仙台だけの特別プレゼント曲「Lovin’ Life」が終わると、約束どおり、会場全員が笑顔になっていた。とても感動的なファイナルだった。
【取材・文:平山雄一】
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