驚愕のオープニング映像で幕を開けたavengers in sci-fi SHIBUYA-AXレコ発ライヴ
avengers in sci-fi | 2012.05.18
アルバム『Disc 4 The Seasons』をリリースしたavengers in sci-fiが、6月からスタートする全国ツアー(渋谷クアトロでの追加公演も決定!)に先駆けて、SHIBUYA-AXにてレコ発ライヴ「2 Yang 1 Wrong -Live 4 The Seasons-」を行なった。当サイトにて行なったインタビューで、「四季を感じながら制作をし、何かを意識したというより、自分の中から沸いてきたものを正直に出して、音楽にした」と木幡が語ってくれた、バンドの特徴的な部分でもある、宇宙的でダイナミックなバンドサウンドを利用し、精神宇宙を描きだした作品が、どう展開されるのか……ライヴは意外なオープニングで幕を開けた。
客席の電気が落ち、大歓声が巻き起こる中でスクリーンに映し出されたのは、赤い鳥居。深夜の薄暗い神社で、狐のお面を被った男が鳥居から顔を覗かせている。不気味だ。鳥居の奥に隠れたと思った次の瞬間、画面の下から突如狐のお面が顔を出すと、客席から“怖い!”という声があがる(笑)。確かに怖い。オープニング映像で悲鳴があがるライヴなんて、生まれて初めての経験だ。アルバムには“和”のニュアンスが組み込まれているとはいえ、まさかジャパニーズホラーが来るとは誰も想像していなかっただろう。そんな映像が繰り返される中、画面に映っていた狐面の男がステージに設置されているギターアンプの後ろからひょっこりと顔を出すと、先ほどまでの悲鳴は歓声に変わった。そこから、ステージ中央に設置されていたドラムパッドに近づき、いたずらに1発、2発と叩き始め、豪快にリズムを刻み始めると、「The Planet Hope」のイントロが流れ出す。その音に導かれるように、メンバー3人がステージに登場。ユニークな演出でオーディエンスのテンションを一気に昂らせた。
歓声が沸き起こる中に響き渡ったのは『Disc 4 The Seasons』の1曲目に収録されている「Yang 2」。流麗な琴の音色と共に、ステージの上から様々な色のレーザーが降り注ぐ。そんなドラマチックなイントロの後、一気に音を爆発! アルバムで提示した日本人の奥底に眠る本能を刺激する“和”の躍動的なグルーヴに、たちまちフロアにはモッシュの嵐が巻き起こった。そのままアルバムの流れ通りに「Psycho Monday」へ。木幡は軽やかにステップを刻み、稲見はオーディエンスを指差してガンガン煽る。
木幡「今日はスーパームーンらしいです。月がめちゃめちゃ近いらしいぞ。月から変なもんが降りてくるかも……狂ったように踊り狂っていってください!」
神秘的な月の力と、情熱的な音の力が共鳴して、オーディエンスのリミッターを解除していく──「sci-fi=サイエンス・フィクション」というバンド名にピッタリな夜だ。
中盤では、スクリーンに映し出されたワイヤーフレームダンジョンが、心の中で葛藤しながらも、光に向かって歩みを進めていく心象風景のように見えた「Skywalker」や、スペーシーな要素は抑えめで、バンドサウンドを力強く響かせる「Stairway To The Sun. I」に続き、興奮のダンスグルーヴの中で木幡が踊り、稲見が咆哮する「Stairway To The Sun. II」をドロップ。そして、「Wish Upon The Diamond Dust」では、季節外れの雪を降らせる演出も飛び出し、音、光、特効、ありとあらゆる角度から極上の空間を作り上げる。ちなみに、雪は“天使(マネージャーのこと)に無理を言ったら降らせてくれた”とのこと。そんなエピソードと共に天使への感謝を告げると、フロアからは暖かい拍手が送られた。
ライヴは終盤へ向け、更にヒートアップ。ドラムの長谷川が鬼のようなリズムを叩き出し、センチメンタルとダイナミズムが同居する「Two Lone Swallows」から、ライヴの鉄板である「Universe Universe」、「Homosapiens Experience(Save Our Rock Episode.1)」へ。熱狂が渦を巻くフロアにはクラウドサーフする者も現れ、さらに「Sonic Fireworks」で、スクリーンに大量の打ち上げ花火が咲き乱れ、浮遊感と躍動感があいまったサウンドが鳴らされると、肩を組み、輪になって回るオーディエンスの姿があった。2階席から見ていると、まるで彼、彼女達自身が花火のようで、キラキラと輝く笑顔は、夏の夜空を彩る花火よりも圧倒的に美しかった。ラストは「The Planet Hope」。オープニングに登場した狐面の男が、仲間を引き連れて再び登場。総勢9人の狐面達がジャンベなど様々な打楽器を打ち鳴らす。3人もドラムパッドや大太鼓を叩き、血湧き肉踊る狂乱の宴を繰り広げた。
今までのavengers in sci-fiは、無重力空間を超高速で突き抜けて行くイメージだったのだが、初めて『Disc 4 The Seasons』を聴いたとき、彼らが地上に降り立ったような印象を受けた。インタビューで木幡にそう尋ねたところ「上から俯瞰するっていうよりも、それこそ地上に降りて、自分の目の高さで見た世界のことを書きたくなった」と話してくれた。そして、こうも言っていた。「音楽は、あくまでも他の人と繋がるための手段であって、自分は音楽より人間の方が好きなんだっていうことが分かった」と。
壮大な宇宙を旅していた彼らが大地へと帰還し、待っていた多くの人々と手を取り合い、朝まで踊り明かしているかのような大団円。彼らと、彼らの音楽に集まったオーディエンス達が作り上げた素晴らしい空間に、胸を熱くさせられた夜だった。
【取材・文:山口哲生】
リリース情報
セットリスト
- Yang 2
- Psycho Monday
- Wonderpower
- Beats For Jealous Pluto
- Delight Slight Lightspeed
- Pearl Pool
- Skywalker
- Stairway To The Sun. I
- Stairway To The Sun. II
- Radio Earth
- Before The Stardust Fades
- Wish Upon The Diamond Dust
- Starmine Sister
- Two Lone Swallows
- Universe Universe
- Homosapiens Experience(Save Our Rock Episode.1)
- Sonic Fireworks
- The Planet Hope
- Nayutanized
- Odd Moon Shining