前へ

次へ

明るく力強く一つになった空気に、the pillowsの今を見たツアーファイナル

the pillows | 2012.06.28

今年1月にリリースされたアルバム『TRIAL』を引っ提げた全国ツアーが、6月16日のZEPP TOKYOでファイナルを迎えた。厳密には、山中さわお(Vo&G)の体調不良で6月22日に延期になった新潟公演が最後のライヴになったのだが、とは言え、この日は、ファイナルならではの空気感に満ち満ちていたと思う。

 ソールドアウトということで、たくさんのバスターズ(pillowsのファン)で埋め尽くされた会場。熱い拍手に迎えられて、メンバーは気張る様子も見せずにふらっと現れると、山中の「アウイエー!」という叫びから、『TRIAL』の1曲目を飾っていた「Revival」でライヴの幕を開けた。それから、「Xavier」「ROCK’N’ROLL SINNERS」と、サクサクと進んで行く。山中は「久しぶりじゃないか、みんな元気?」と問い掛けると、「さわおさんは元気?」と逆に返してくる男の子の声が。それに対して、さわおは「俺は元気ありまくりよ!」と答えてみせる。もちろん、オーディエンスも負けてはいない。「Flashback Story」では、オーディエンスも「ワン、ツー、ワンツースリーフォー!」とカウントを叫ぶ。また「ターミナル・ヘヴンズ・ロック」では、イントロで歓喜の声援が。やっぱり、バスターズの一体感や熱狂は、群を抜いている。

 その後のMCで山中は「昨日、今年初めて蚊に刺されてさ」と言いながら、サポートメンバーの鈴木淳(B)に「イライラするから足の指を一本折らせて」と、ムチャクチャな絡み(!!)。鈴木が「いいよ」と笑顔で言うと、今度は真鍋吉明(G)に「淳が役に立たないから、いつも楽屋で弾いている『ふるさと』弾いてくれよ」と、言いたい放題(!!)。しかし、この後に披露された「ふるさと」が実に染み入るメロディで、プレゼントのように嬉しく感じられた。こういうナチュラルな機転は、結成20年を越える余裕からくるものか、それとも、何年も経っても絶えぬ遊び心からくるものか?……きっと、どっちとも言えるはず。

 そして、「僕が若者だった時の曲」という山中の言葉から、97年にリリースされた5thアルバム『Please Mr.Lostman』に収録されていた「ICE PICK」へ。「隠れた人気曲」とも言っていたけれど、pillowsの曲には、シングルではなくても深く心に刻まれているものが多い。繊細な歌詞が思い出と重なって、キャッチーなメロディによって蘇るからだろう。その後は、「ポラリスの輝き 拾わなかった夢現」「エネルギヤ」「Rescue」と、『TRIAL』の収録曲を立て続けに披露。山中の、「毎回、完璧なライヴをやろうと思うんだけど、100点満点なライヴは少なくって、でも、あのライヴなければよかったなって思うことは一回もなくて……やっぱ楽しいよな、ライヴって」という言葉も、とても実感をもって響いてきた。「そんな気分に合う曲」と紹介したのは「ジョニー・ストロボ」。そして、『TRIAL』の中でもハイライトと言える「持ち主のないギター」では、辺り一面をどっぷりと熱い夢へと誘う。さらに、そこからガラッと空気を変えるように激しくはじまった「TRIP DANCER」への流れは、とてもドラマティックだった。

 メンバー全員のMCタイムでは、鈴木が左右違う靴を履いてリハに行ってしまった話で笑わせ、佐藤シンイチロウ(Dr)がアロハシャツとサングラスのファッションの意味は、物販のアロハシャツの宣伝であることを明かし、場が和んだところで、真鍋が「最終日、何事もなく、ここに4人で立てて嬉しい」としっかり締める。そこからは山中曰く「一番新しいテーマソング」の「トライアル」を皮切りに、怒涛の流れ! 本編ラストは、ライヴで聴くことが本当に楽しみだった「Ready Steady Go!」。銀テープが飛び出し、歌詞の《Busters!》のところをみんなで叫び、眩しく突き抜けて締め括られた。

 客電が点いても、アンコールを求める声は大きくなる一方。その様子に山中は「何で、みんなアンコールで元気になるの?」と言いつつも、嬉しそう。そして、ツアー中にはホテルでDVDを見るということ、そして、前に見たことのあるDVDでも、前とは違うところが気になったりすることに触れ、最近見返したという映画『ペーパー・ムーン』の話へ。「字幕で歌詞が出るんだよ、“紙で作った月でも君が信じてくれれば本物になる”って……素敵じゃないか。ピロウズの夢見がちな曲も、君たちが信じてくれた瞬間から、本物になるだろう」と言い、はじまったのは「Funny Bunny」。つまづいた時にピロウズを聴きたくなる理由を、山中が自ら教えてくれたような気がした。

「楽しかったかい? また俺たちに会いに来るかい? オッケー、約束だ!」という山中の力強い言葉を残して、メンバーが去り、「Ready Steady Go!」が流れる。それに合わせて、歌い続けるオーディエンス。すると、再びメンバーが登場! 山中は前方のオーディエンスと拳をぶつけ合い、本当のラストは「No Surrender」。演奏を終えると、「またこんな夜を、エンドレスで繰り返したい。サンキュー、バスターーズ!」と山中は絶叫し、ステージを降りた。

 久しぶりに全編からナイーヴな世界観を感じたアルバム『TRIAL』だったが、ライヴは明るく力強かった。そこがかつての彼らとは違うところ。うつむきながらも進んでいかなければいけない現実だけではなく、あなたがいるから笑顔になれるという現実も『TRIAL』は見せてくれたんじゃないんだろうか……そんなことを考えさせられる、素晴らしい夜だった。

【取材・文:高橋美穂】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル the pillows

関連記事

リリース情報

トライアル

トライアル

2012年01月18日

avex trax

01. Revival
02. Rescue
03. Comic Sonic
04. Flashback Story
05. エネルギヤ
06. ポラリスの輝き 拾わなかった夢現
07. Minority Whisper
08. 持ち主のないギター
09. トライアル
10. Ready Steady Go !

このアルバムを購入

セットリスト

  1. Revival
  2. Xavier
  3. ROCK’N’ROLL SINNERS
  4. Comic Sonic
  5. Flashback Story
  6. メロディー
  7. ターミナル・ヘヴンズ・ロック
  8. ICE PICK
  9. ポラリスの輝き 拾わなかった夢現
  10. エネルギヤ
  11. Rescue
  12. ジョニー・ストロボ
  13. Minority Whisper
  14. 持ち主のないギター
  15. TRIP DANCER
  16. トライアル
  17. アナザーモーニング
  18. POISON ROCK’N’ROLL
  19. Ready Steady Go!
ENCORE
  1. Funny Bunny
  2. Waiting At The Bus Stop
ENCORE2
  1. No Surrender

お知らせ

■ライブ情報

CHEMICAL BUMP SHOW!!
(山中さわおソロツアー)

2012/07/06(金)大阪 umeda AKASO
2012/07/07(土)名古屋 アポロシアター
2012/07/13(金)Shibuya O-WEST

※その他ライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る