今年３月から５月に渡って展開した「全国47都道府県モールTour ?ヒカリ灯していいですか？?」を経験して、大きく成長したHi-Fi CAMPのツアー「結果、ハメはずしていきますか...!!」のファイナル直前の渋谷O-EASTライブを観に行った。

　ステージのフロントにはKIMとSOYAの二人のボーカルが陣取り、その後ろにはキーボードのAIBAとDJのTOSHIROが位置取る。いつもの４人のフォーメーションだ。オープニングの「SKY HIGH」はKIMとSOYAの声が緊張からか少し上ずっていたものの、二人の特長がはっきり分かれていて、ツインボーカルの楽しさがストレートに発揮される。メンバーもオーディエンスも、今までのライブの中ではいちばんリラックスしていて、続く「Boys be Ambitious!!」で早くも両者に一体感が生まれる。ポップなメロディと、ダンサブルなリズムのアッパーチューン２曲の威力は絶大だ。

　最初にKIMが口を開く。「よーこそ、仙台から来ましたHi-Fi CAMPです。今日は最後までハメ外していって下さい。まずは心の奥の方から熱くしたいと思います。友達と離れ離れになる時は楽しい約束をたくさんしてまた再開したい。そんな想いを詰め込んだ曲です。」と、ミディアム・バラード「桜」を歌い出す。 ♪明日って言葉　こんなに切ないのは♪というリリックは、大震災直後から制作が開始された最新アルバム『SUNRISE』の核になる心情そのものを表わしている。KIMの切ない歌声の魅力が全開になって、ライブ前半のハイライトになった。

　そこからは聴かせる曲が続く。KIMに加えて、SOYAも“伝えたい気持ち”をためらいなく前面に押し出して、Hi-Fi CAMP本来の良さが充分に感じられて心地よい。それに応えて、フロアからは温かい拍手が起こる。Hi-Fi CAMPは以前より、オーディエンスとの距離をぐっと縮めることに成功している。
「去年は音楽活動ができない時期があって、年末にここO-EASTでのイベントに出て以来の東京でのライブになります。今日は『SUNRISE』の曲を、余すことなくやります」とKIM。そう、今回のツアーは『SUNRISE』の全曲演奏という、潔いセットリストが組まれている。TOSHIROのスクラッチ・プレイが印象的な「Pride」、AIBAの弾くピアノがエモーショナルな「Lost Love Song」では、SOYAがキレのいいラップを披露して盛り上がる。特に「MY WAY ?Realistic Dreamer?」は落ち着きとスリルがバランスよく配されていて、Hi-Fi CAMPの魅力の全貌を表現していた。

　先の全国モールツアーの報告や、嘆きソングが得意なSOYAをイジるMCなどを織り交ぜながら、ライブは楽しく進行していく。途中、ボーカル二人が浴衣に着替える間は、なんとAIBAとTOSHIROがしゃべるコーナーもあって、普段は“無口でクールなトラックメーカー”というイメージのAIBAの面白キャラクターが炸裂するシーンも用意されていて、お得感満載(笑)。
浴衣姿になったKIMが、「ハメ外して、ついてきてくれー！」と叫んで終盤の盛り上がりに突入。持ち味の切ないバラードとは対照的なヴィヴィッドな魅力にあふれるダンスチューンで、フロアをアオりまくる。KIMは団扇、SOYAは扇子を手に、ステージ狭しと駆け回る。「Summer・D・Live」では、恒例のタオル回しで、会場全員が大騒ぎ。一転してラストは、今も暮らす地元・仙台、東北に捧げる「ヒカリ」と「SENDAISTA」で感動的に締めくくった。

　12月に今年２回目のワンマンツアーをやることを発表した後、アンコール１曲目のこの日の“日替わりメニュー”は、「夢の向こうへ」。続く「だから一歩前へ踏み出して」では、KIMとSOYAが左右のステージ前に置かれたステップに上がって、アクティヴなパフォーマンスで会場中に笑顔を振りまく。
「次の曲で最後です。今年、全国モールツアーで、ライブで触れ合う大切さを知って、みなさんとの絆を感じた。これからもHi-Fi CAMPと一緒に過ごしてください」。 　最後の最後は、Hi-Fi CAMPのデビュー曲「キズナ」。彼らの原点となるこの曲は、デビューしてからの４年の年月と、故郷を蹂躙した試練を乗り越えて響く。

　Hi-Fi CAMPは優れた楽曲と、魅力的な二人のボーカルを擁しながら、4年かけてここまできた。だが、彼らが「温かい音楽を作り、届けること」を目標にして、地元・仙台に住んで活動することを選んだことの意味が、ここに力強い形をもって現われた。「ハメ外してくれましたか？　心に響きましたか？　またライブに来てくれますか？」というSOYAの別れの挨拶が、そのすべてを物語っていた。彼らの未来は、ここから始まる。