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UKプロジェクト所属バンドによる、イベントの東京編をレポート!

UKFC on the Road | 2012.08.28

 この日の大トリを務めた[Champagne]の川上洋平(Vo/G)が途中のMCでこう言った。「“UKプロジェクト”のUKって、United Kingdomって意味じゃないよ。Unknown、知られてないバンドを世に輩出するレーベルだから」。そうアーティストの口からわざわざ説明を受けると、レーベル名に託した創業者(87年発足)の熱誠が、脈々と受け継がれていることを実感する。「UKFC on the Road 2012」と題されたイベントは、インディ・レーベル“UK Project”所属バンドが一堂に会したツアーで、今年2回目を迎える。昨年は仙台、新潟、福岡のみだったが、今回は東名阪を加えた計6カ所で開催された。東京公演は屋内と屋外の2ステージを使ったライヴ進行で、時間軸もほぼ被らないため、もれなく全バンドを観ることができた。

 トップを飾ったのはthe telephonesだ。アフロヘアの被り物で登場したメンバー4人の姿に、開演14時から満杯のフロアはいきなり沸点を迎える。冒頭曲「Love&DISCO」から観客は飛び跳ね、2階席にもその振動が直に伝わってくる。煌びやかなシンセが鳴り響く虹色のロック・サウンドに、新木場STUDIO COASTの巨大ミラーボぬールが見事にマッチしている。石毛輝(Vo/G)は呪文のごとく“DISCO”という言葉を連発し、ひたすらアッパーに煽りまくる。そのステージは底抜けの楽しさに満ちていた。踊れる音楽という機能性に特化した歯切れの良さとわかりやすさは、余人の追随を許さない。

「トイス!トイス!」とハヤシ(Vo/G)のお馴染みの挨拶で幕を開けたPOLYSICSは、今年結成15年目を迎えてなお、音の尖鋭度は増すばかり。ハヤシのハイトーン・ヴォーカル、3ピースならではのタイトな演奏力、そこに愛嬌たっぷりのピコピコ音が乱れ飛び、ロックもテクノも飲み込んだ最狂のグルーヴ感を放つ。後半はフミがメイン・ヴォーカルを務めたニュー・シングル表題曲「Lucky Star」も披露され、これがまた聴き手のツボを押さえまくったキャッチーな仕上がりで、好意的に受け入れられていた。今のポリは瑞々しい衝動が溢れ、万人を唸らせる高性能サウンドで心を射抜く。いや?参りました。

 作品毎に進化や深化を遂げ、ロック・バンドとして独自の成長を続けているBIGMAMAは、1曲目「beautiful lie,beautiful smile」からクラウド・サーファーを大量に生み出し、この日いちばんの熱狂度で迎えられる。触った瞬間に壊れそうな繊細かつ美しいメロディは、デビュー時から持っていた。が、今の彼らはしなやかな力強さと言うべきタフさを身につけている。オーディエンスの熱気を真正面で受け止め、倍にして返すパワーを誇示している。中盤はニュー・シングル「風船夫婦の俯瞰show」収録の新曲「Mr.&Mrs.Balloon」をプレイし、深海の底で揺らめく神秘的なギターが印象を与えてくれた。その後、金井(Vo/G)が「今日のライヴを特別なものにしたくて」と前置きし、[Champagne]の川上をフィーチャリングして「Paper-craft」まで演るサービスぶりで、金井と川上の熱き掛け合いに会場も過熱した。

 これまでのモッシュ&ダイブの喧騒とは一線を引く、異世界を創出したのはTHE NOVEMBERSだ。ステージ後方に備えられた巨大スクリーンを活用し、幻想的なサウンドで聴く者、観る者を釘づけにした。空、雲、羽などがうっすら確認できる抽象度の高い映像は、そのまま夢とうつつの境界線をたゆたうバンドの世界観と融合していた。意識の深層に語りかけてくる、壮大かつセンチメンタルな演奏に多くの観客が引き込まれていた。

 20時40分、遂に[Champagne]が登場すると、開演時と変わらずフロアは満員。つまりほとんど観客が、開演から今までずっとおり、彼らの出番を待っていたのだ。ライヴは、ニュー・シングル表題曲「Kill Me If You Can」で幕を開けた。展開の凝った起伏激しい曲調だが、そのスリリングさが胸に突き刺さってくる。それから「言え」、「Cat2」、「city」の3連発も圧巻で、つくづく楽曲クオリティの高さと、それを支えるテクニックを持ち合せた稀有なバンドだなと感じた。私事で恐縮だが、彼らがデビューしたとき担当者に「こんないいバンド、どこで見つけてきたんですか?」と思わず質問したことがある。その気持ちは今も変わらない。さらに逞しくなった彼らの今後が楽しみだ。ラストに川上は「愛してるぜ、新木場ー!」と叫び、長丁場のイベントは熱狂の渦の中で幕を閉じた。

 ほかにもRIDDLE、LOST IN TIME、きのこ帝国、武藤昭平withウエノコウジ、paionia、THE★米騒動と6バンドがそれぞれのステージで、個性極まるパフォーマンスを展開した。半年の活動休止期間を経て、今年7月に復活したRIDDLE(SHUNSUKEがドラムからベースに変更!)は泣きのメロコアを爆発させ、「僕ら今年で10周年、“UKプロジェクト”に10年所属してます。(レーベルとは)もう素敵な家族です」と語った海北(Vo/B)のMCを含め、心の芯から温まるLOST IN TIMEの演奏も相変わらず素晴らしかった。あと、初めて観て打ちのめされたのがTHE★米騒動だ。2010年の「閃光ライオット」(10代限定のロック・フェス)でグランプリを獲得した3ピースで、フロント2人が女の子。ファンクやダンサブルなノリも吸収した骨太のグルーヴ感に加え、演奏のタメや速度チェンジも絶妙で、ロックとは何ぞや?の問いに応えたフック満載のプレイに大興奮した。ライヴをまだ観たことがない方は是非!

 最後にイベント全体の感想を述べたい。今日出演したアーティストが口々に「プチフェスみたい」、「フェスみたいに楽しいね」と言っていたが、本当にそんな空気がここにはあった。降水確率70%を跳ね返し、晴れ渡った空の下でケバブを食べ、ビールを飲む人もあり、個人個人が自由気ままに楽しんでいた。さらに、出演者の音楽ジャンルはバラバラにも関わらず、イベントを通して中弛みさせない緊張感もあった。今後も知られざるアーティストをどんどん輩出して欲しいし、このイベントが最高の音楽に触れることができるフェスのような役割も果たしてもらいたい。

【取材・文:荒金良介】

【撮影:古渓一道】

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【撮影:石井亜希】

THE NOVEMBERS/BIGMAMA/[Champagne]/RIDDLE/きのこ帝国

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