中田裕二、ソロ2度目の全国ツアー“IMPERIAL SUITE”の東京公演をレポート!
中田裕二 | 2012.11.16
昨年、リリースしたファースト・ソロアルバム『ecole de romantisme』とそれに続くツアーは、中田裕二の“歌”に対する洗練されたアティテュードが発揮されて、椿屋四重奏時代からするとジェントルでハンサムなテイストが全面に出ていた。ツアーの東京公演は日本橋三井ホールで行なわれ、“大人の街・日本橋”で自分の音楽を楽しんでほしいという中田の思いがライブ全体を支配していた。
それが今秋、発表されたセカンド・アルバム『MY LITTLE IMPERIAL』では、オープニングの「MY LITTLE IMPERIAL」から ロック色の濃いギター・リフが炸裂。♪俺だけのこだわり♪と歌う中田は、2作目にして“メロディアスなポップと、パワフルなロックの両立”という彼独自の音楽世界を堂々と世に問う決心をした。“MY LITTLE IMPERIAL”とは、“ささやかな我が帝国”という意味だ。
そして12月まで続く“IMPERIAL SUITE”ツアー序盤の3本目は、前回と同じく日本橋三井ホールで行なわれたのだった。
バックバンドは4人。ギター、キーボード、ベースにドラムという、いわゆる“4リズム”という編成。歌モノとして音楽を成立させる必要最小限のセットだ。ステージは金属パイプがアブストラクト彫刻のように配置されて、これも中田の世界観を必要最小限に表わしている。客席は、前半分がスタンディング・フロア、後ろ半分が着席というスタイルで、この夜の内容を予感させてくれる。
そしてライブは、『MY LITTLE IMPERIAL』に込めた中田の思いを解き放つように展開されたのだった。
エレキギターを掻き鳴らすワイルドな中田、アコースティック・ギターを優しくストロークするハンサムな中田、ハンドマイクの中田は優れたエンターテイナーとしてホールを盛り上げる。
「我が帝国へ、ようこそ」と中田。「久々のお江戸日本橋でございます。日本橋っ子、“バシッ子”の中田裕二としては、ここでまたライブをやれて嬉しい。手加減なしでやりますので、とことん楽しんで いって下さい」。
前回、ここでライブを行なったのは、単に前作アルバムのコンセプトのためではなかったのだ。中田は自分のソロのキープレイスとして、“日本橋”を心に決めたのだ。ただ前回は“ジェントルな中田” がメインキャラクターだったのが、今回はトータルな中田裕二の音楽を日本橋で楽しんでほしいと彼は考えている。
実際、中盤の強烈なファンクロックにオーディエンスが身体を揺らせたかと思うと、アコーディオンが入ったヨーロッパ風のシャッフルを軽快に歌って和ませる。ハッとさせられたのはポップなR&Bナンバーだった。バンドが繰り出す切れ味鋭いリズムに、中田はシャープに反 応して見事なパフォーマンスを見せたのだった。
多彩なリズムを楽しむ中田に、オーディエンスはぐいぐい引き込まれていく。それはアルバム『MY LITTLE IMPERIAL』 を作った際に中田のモチベーションとなった、“音楽を作る歓び”そのものがライブで再現されているからだった。
そうして、それを可能にしてくれる腕利きのバンド・メンバーに対して、中田は全幅の信頼を置く。「去年のツアーも凄かったけど、今回のツアー・メンバーも凄い! 異常に楽しいです」。そのオマケとして、MCではメン バーが中田に絡む、絡む。信頼感と、同世代ならではの気楽さが、予想外の笑いを生む。この日も、日本橋の有名デパチカの惣菜店でアルバイ トしていた時の話題にメンバーが絡んで、盛り上がる、笑わせる。その一方で、「僕はバシッ子なので、日本橋のいいところをみなさんに紹介 したい」と、中田が勇んで話し始めたのに、思い切りスベる、スベる。
この面白おかしいMCとカッコいい演奏のギャップも、バラエティに富んだ音楽性も、中田裕二という一人の人間の中でひとつの“世界”を成す。ツアー序盤だけに、ライブとしての完成度はこれからの課題だが、ライブを強く意識したアルバム『MY LITTLE IMPERIAL』で表現したかったコンセプトが、次第にはっきりした姿を現わしつつある3本目だった。
おそらく中田が洗練とスリルを独自の配分でミックスした“バシッ子ロック”を、確信をもって体現したときがツアー・ファイナルになるだろう。
【取材・文:平山 雄一】
リリース情報
お知らせ
中田裕二 TOUR ’12"IMPERIAL SUITE"
2012/11/17(土)郡山Hip Shot Japan
2012/11/22(木)浜松Live House 窓枠
2012/11/23(金・祝)名古屋Electric Lady Land
2012/11/25(日)柏PALOOZA
2012/11/30(金)岡山IMAGE
2012/12/01(土)広島ナミキジャンクション
2012/12/07(金)仙台Rensa
2012/12/08(土)盛岡Club Change WAVE
2012/12/15(土)水戸ライトハウス
2012/12/16(日)横浜Bay Hall
2012/12/18(火)大阪umeda AKASO
2012/12/23(日・祝)赤坂BLITZ[追加公演]
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。