きゃりー! 日本武道館から世界へ!プレミアムライブをレポート!
きゃりーぱみゅぱみゅ | 2012.11.21
2012年11月6日、日本武道館。
そこは明らかに、いつもの日本武道館の景色とは違っていた。
開演前から場内には、レトロな遊園地の園内に流れているイメージの3拍子な音楽がうっすらと流れ、オーディエンスをこれから始まろうとしている“ドキドキワクワクぱみゅぱみゅレボリューションランド”へと誘った。
ステージの可愛いだけではない、どこか哀愁が漂うシュールな世界も、これからここで始まるSHOWを予感させた。
18時ちょうど。この日だけの遊園地が開園した。
絵本から飛出してきたような、サーカスを思わすセットの中に、突然現れたきゃりーぱみゅぱみゅ。様々な配色と、キリンや子鹿や豹などの動物柄のファーでパッチワークされたバルーンドレスに身を包んだきゃりーに、会場は割れんばかりの歓声を送った。
アイドルのコンサートとも違う、アーティストとの歓声とも違う、バンドのライヴの歓声ともまたまた違うその歓声は、例えるならば、遊園地のパレードや、アトラクションに対して向けられる感激に近いモノだった。
客席には老若男女が大集結。親子連れも多かったその光景は、確実に彼女が日本を制覇したことを物語っていた。
マカロン色のキュートな衣装を身に付けた“きゃりーダンサーズ”と共に、全身を使った大きな振りつけで魅せるステージに、オーディエンスはペンライトを振って応えた。客席に広がる何色ものペンライトも演出の一部のような、最高のシュチュエーションが目の前に広がった。
「改めまして、きゃりーぱみゅぱみゅです! 元気ですか? 楽しんでますか? ワンマンライヴツアーではライヴハウスだったんですが、今日はこんなに広いところでコンサートが出来て本当に嬉しいです! ありがとうございます! 武道館では、“リアル飛出す絵本”をやりたくて、こんな感じにしてみました! 私もですね、スタイリストさんといろいろと相談して、“よし。じゃぁ、きゃりーという動物を作ってしまおう!”ということで、いろんな動物をイメージしたパッチワークで衣装を作ってもらいました! 毛皮も入っているので、動物愛護団体の人が見たらボッコボコにされそうですけど、大丈夫ですよ、これ、全部フェイクなんで!」 と、緩いながらも、これまたシュールな話題を盛り込み、客席を笑わすきゃりー。
可愛いだけじゃない衣装も、可愛いだけじゃないキレ味を持ったダンスも、可愛いだけじゃないその存在も彼女の魅力。ふわっとした雰囲気とシュールさとの共存こそ、彼女の最大の武器と言ってもいいだろう。
そんな彼女の魅力をコンサートで引き立てているのが、キュートな衣装に身を包みながらも、ハードでアクロバティックなダンスを繰り広げる“きゃりーダンサーズ”であるのだが、この日は、この日のために新しくオーディションして選ばれたという“きゃりーキッズダンサー”たちとの共演も見せてくれたのだ。
きゃりーに呼び込まれでステージに登場したキッズたち。きゃりーは、入りたてほやほやのキッズたちと共に、「チェリーボンボン」と「ピンポンがなんない」と「ちょうどいいの」の3曲を届けた。大人顔負けのダンスを披露するキッズたちと、そんなキッズとの息の合ったきゃりーのパフォーマンスに会場の声援は更に大きなモノとなった。
きゃりーの可愛く丸い声は、中田ヤスタカ(capsule)サウンドと実に相性がいい。思わず口ずさんでしまうさすがのメロディセンスと、跳ね感のある言葉のチョイスは絶妙。パステルな世界観の中、きゃりーという存在を通して届けられるその曲たちは、更に魅力を増していく。これぞ。アート。
まさに。音楽は聴覚だけのモノではなく、視覚で大きく左右されるのだと言うことを、再確認されられた瞬間でもあった。
「CANDY CANDY」では、PVで登場した、あの“似せきゃりーぱみゅぱみゅ”がステージに登場し、アクロバティックなダンスを披露。その外見と実力のアンバランスさを生で見ることができたことに、オーディエンスは歓喜の声を上げた。
そんなダンスシーンと、ふわふわなクマの着ぐるみがステージを繋いだ後、きゃりーはラベンダーの妖精になって登場した。
自らがデザインしたという、薄紫のたっぷりフリルのワンピースは、そのフリルの分量といい、パフスリーブの膨らみといい、スカートの長さといい、ボリューム感といい、最強で絶対の黄金比。きゃりーはここで、自らが描いたというデザインの原画をステージ左右のスクリーンに写し出して見せたのだが、ん?、これまたなんともシュール(笑)。
「ラベンダーの妖精をイメージして描いたこんな感じの私の絵をですね、スタイリストさんが、こんなに素敵にデザインして具現化してくれたんです! すごいですよね?(素直に感心)」 と無邪気に紹介。
“きゃりーぱみゅぱみゅ”というアイコンを、みんなで楽しんで作り上げてる感が伝わってきた。高校時代から、原宿という街が大好きで、人目を気にすることなく、自分の好きな洋服を着て、それに合うメイクをして、大好きな洋服を集めていたという彼女ならではの発想を、今はみんなでもっともっと大きなモノにし、彼女の脳内をより具現化しているのだ。本人が、半年という歳月をかけて構成や衣装を考えたというこの日のライヴは、そんな彼女の脳内を、よりリアルに感じたモノでもあった。
そして。ラベンダーの妖精は、フレンチポップな「RGB」で、ワイヤーアクションによって空を飛び、オーディエンスを喜ばせたのであった。
さらに後半戦。
きゃりーは、大好きだというピエロに扮して登場し、高校時代、ピエロのコスプレをして原宿の街を闊歩した思い出話をして会場を盛り上げ、フィナーレへと繋いだ。
オールキャストがステージに集結して届けられたフィナーレでは、曲中に歴代の楽曲がインストで盛り込まれ、きゃりーは、きゃりーダンサーズとともにダンスで楽しませてくれたのだった。
アンコールでは、ナント、『SMAP×SMAP』でお馴染みの、稲垣吾郎扮する“ゴリーぱみゅぱみゅ”を呼び込み共演し、来年2月から、世界10カ国20箇所でワールドツアーを開催することを報告したのだった。
日本のきゃりーぱみゅぱみゅから、世界のきゃりーぱみゅぱみゅへ。
3枚目のシングル「ファッションモンスター」は、世界63カ国に配信され、フィンランド、香港、台湾では、iTunesエレクトロニックチャートで1位を獲得するなど、海外でも着実に存在を浸透させている彼女。今回発表された、海外ツアーは初のワンマンワールドツアーとなるが、このワールドツアーが終わる頃には、更にそのキャラクターに磨きがかかるはず。
原宿から飛出したファッションアイコンきゃりーぱみゅぱみゅは、確実に世界にその名を知らしめ、制覇することとなるだろう。
【取材・文:武市尚子】
【撮影:上飯坂一】
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