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ひたすら“歌”にこだわった、徳永英明のツアー後半、NHKホールの模様をレポート

徳永英明 | 2012.12.25

 ここ数年、女性シンガーの楽曲をカバーしたアルバムをリリースし、名曲の数々に新たな命を吹き込んできた徳永英明。2012年5月には、カバーシリーズとしては第5弾となる『VOCALIST VINTAGE』をリリース。ここに収録された曲達は、60?70年代……つまり“良き昭和の時代”に日本で愛された流行歌の数々。40?50代の方々にとっては幼き日の思い出として、60代以上の方々には人生の様々な場面に寄り添ってくれた歌として、心に深く刻まれているものばかりであった。 その『VOCALIST VINTAGE』を掲げ、9月から『HIDEAKI TOKINAGA CONCERT TOUR 2012 VOCALIST VINTAGE & SONGS』がスタート。ヴィンテージな名曲達が、新たな魅力を持って披露されていった。
 そのツアーの後半、ちょうどオリジナル・シングル「名前のないこの愛のために」が発売されて間もないタイミングで行われた東京公演のひとつ、11月 30日NHKホールを取材した。

 このコンサート、実におごそかなオープニングだった。幕が開くと、ステージ上にはすでに徳永がスタンバイしており、まずはオリジナル曲「My Life」をしっとりと聴かせる。スーツ姿にサングラス、そしてステージセットも昔の歌番組のようにレトロな雰囲気。2曲目にはなんと自身のデビューシングル「レイニー ブルー」を披露し、会場は大きな拍手と歓声に包まれる。そこにはオリジナル曲を聴きたいであろうファンの気持ちをくみ取った徳永本人の心意気を感じた。
最初のMCでは「紅白が決まりました!」と、紅白歌合戦の出場決定を報告。このあとも、MCでは紅白の舞台裏を面白おかしく語ってくれたが、そもそもNHKホールは紅白歌合戦の舞台となる会場でもある。紅白当日の楽屋のトリビアから、そこでの大物共演者とのエピソードなど、興味深いトークで、会場をなごませてくれた。
 その後は『VOCALIST VINTAGE』からの曲を中心に展開。「夢は夜ひらく」「伊勢佐木町ブルース」など夜を思わせるヒット曲に、場内は一気に昭和ムードへ。中盤には新曲「名前のないこの愛のために」を聴かせたが、本編後半では徳永自身のヒットナンバーが続々。「MYSELF?風になりたい?」「NEWS」、そして「夢を信じて」や「Hello」。「Hello」では客席からも合唱が起こり、昭和の名曲同様、彼のオリジナル曲も多くのファンの人生を彩っているのだと実感。本編大詰めは、日本のみならず、世界で愛されているスタンダードな大ヒット曲「上を向いて歩こう」が選ばれた。そして、ラストは「壊れかけのRadio」。徳永英明のファンでなくとも、この歌に支えられた人がどれほどいたことか! 昭和を彩る楽曲達と肩を並べ、彼自身のオリジナルもまた、変わらぬ輝きで聴く者の心を照らしているのだ。

 アンコールでは再び『VOCALIST VINTAGE』からの曲達で昭和の世界へと誘う。ディープで切ない女心を歌った「人形の家」や「別れのブルース」は、彼の繊細でハスキーな声でなければ男性で歌いきるのは難しい。コンサートではより情感も増し、圧巻だった。さらに「ブルー・ライト・ヨコハマ」や「恋の季節」など、当時の日本は子供からお年寄りまで、全国民に愛された大ヒットシングルを熱唱。しかも「恋の季節」ではこの曲を歌ったピンキーとキラーズの衣装を意識して、シルクハットをかぶって歌うという演出の細かさ。そして、シメの1曲に選んだのは「僕のバラード」であった。ファンの中からは根強く支持されているバラードである。最初から最後まで、ひたすら“歌”にこだわった究極のコンサートの締めくくりにふさわしいエンディングに、NHKホールは暖かな拍手にあふれた。

 ソングライターとしても高い評価を得ている彼だが、貪欲に歌を追求していく姿勢には頭が下がる。しかも、カバーを通してはぐくんだ唄の心を、2013年 にはオリジナルで形にしてくれそうだ。ステージ上でも「オリジナルを出したい」と語っていただけに、2013年、彼の奏でる新しい“歌”にも期待したい。

【取材・文:海江敦士】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 徳永英明

リリース情報

VOCALIST VINTAGE(初回盤)

VOCALIST VINTAGE(初回盤)

2012年05月30日

ユニバーサル・シグマ

ディスク:1
1. 夢は夜ひらく
2. 悲しい酒
3. 虹色の湖
4. 人形の家
5. 再会
6. 酒場にて
7. 夕月
8. 北国行きで
9. ブルーライト・ヨコハマ
10. 伊勢佐木町ブルース
11. 恋の季節
12. 愛の讃歌
13. 別れのブルース
14. 真夜中のギター
ディスク:2
1. 人形の家 (Music Clips)
2. 夢は夜ひらく (Music Clips)
3. 上を向いて歩こう (Music Clips)

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セットリスト

『HIDEAKI TOKINAGA CONCERT TOUR 2012 VOCALIST VINTAGE & SONGS』
2012.11.30 @NHKホール

  1. My Life
  2. レイニー ブルー
  3. 夢は夜ひらく
  4. 伊勢佐木町ブルース
  5. 悲しい酒
  6. 愛の讃歌
  7. 名前のないこの愛のために
  8. MYSELF~風になりたい~
  9. NEWS
  10. 夢を信じて
  11. Hello
  12. 上を向いて歩こう
  13. 壊れかけのRadio
ENCORE
  1. 人形の家
  2. 別れのブルース
  3. ブルー・ライト・ヨコハマ
  4. 虹色の湖
  5. 恋の季節
  6. 僕のバラード

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