オリジナリティ溢れる9バンドが、己の独尊な音を武道館でぶつけ合った7時間
DECEMBER’S CHILDREN | 2013.01.16
7時間に渡り、今や日本を代表するといっても過言ではない尖鋭的なバンドを観た。そして、その出演バンドのプレイが終わる毎に、私の心を占領していたのは<凄い!!>の二文字ばかりであった。
この日の会場は日本武道館。日本最大級にして「ロックの聖地」とも世界的にも見知されている会場だ。その会場を満杯にしていた、この日のイベント。タイトルの『DECEMBER’S CHILDREN』は、おそらくはローリング・ストーンズのアルバムタイトルから、その名が採られたのであろう。開演前、そして転換中に、場の雰囲気をリセットさせるかのようにBGMとして流れていた彼らのレパートリーが、それを物語っているようでもあった。
この日、出演したのはオープニングアクトの堕落モーションFOLK2を含み全9バンド。様々なタイプの世界的に勝負の出来るオリジナリティ溢れるジャパニーズ・ロックバンドたちが7時間に渡り、己の独尊な音を満員の会場でぶつけ合った。
まずは白パジャマを着た3人組、geek sleep sheepがステージに現れる。凛として時雨のベース&ボーカルの345とMO’SOME TONEBENDERのボーカル&ギターの百々和宏、そして、acid android、L’Arc?en?Cielのドラマーyukihiroからなる、男女ツインボーカルのオルタナバンドだ。「2回目のライヴが武道館だ」という彼ら。クールなトーンやハイトーン、ヒステリックな歌声と楽曲毎に歌い分けられるボーカルと、空間をねじ曲げるかのようなオルタナギターの百々。包み込むような神秘さを帯びたボーカルと固いトーンを中心としたベースで曲に表情を寄与する345。そして、腹にくる低音を中心に、緊張感とダイナミズムを叩き分け、フロントの2人が泳ぎ易い広場を作り出していくyukihiroのドラムは、各々のグループでは見ることの出来ない独自性を発揮。インストナンバー、スリリングさとドライヴ感を両有したナンバー、緊張感溢れるナンバーやサビの疾走感が開放感を呼込んだナンバー等、全6曲を披露した。
2番手のMUCCが現れると、先ほどのヒリヒリとした雰囲気から、一気に漆黒のダイナミズムが会場を侵食していく。「Are You Ready? Mother Fucker!!」とボーカル達瑯の一言から始まった、この日。疾走感溢れるスクリーモな歌声にポップなコーラスも彼ららしい、重と軽の融合にて会場のあちらこちらでヘッドバンキングの花が咲を咲かせた「Mr.Liar」。モノクロの世界観から一変。会場の雰囲気に色付けをしていくかのようなサビの4つ打ちの上昇感が気持ち良かった「G.G.」、ベースもスラップを交え、会場にファンキーなダンサブルさを持ち込んだ「フォーリングダウン」、ギターとベースが縦横無尽にステージを駆け回り、ザックザクなギターと、ガリンガリンなベースが放たれまくった「蘭鋳」、白色ライトが美しく且つ神々しく発光し、その光量が上がる中、ゆっくりとワイドに、その深淵を広げていった「シャングリラ」と全6曲。漆黒の闇からだだっ広い大地に導いていく雄大な物語のようなステージを堪能させてくれた。
続くドレスコーズが登場すると、ここまでにはなかったロックスター性がステージから放たれる。長身揃いのメンバーだけに、ことさらこの広い武道館のステージでも、その勇姿はグラマラスに映えている。そんな彼らは、現ラインナップが揃ってまだ1年未満にも関わらず、武道館でも似合う<バンド観>をしっかりと味合わせてくれた。疾走感溢れる「Lolita」、モータウンビートによるポップさが楽曲を引っ張っていった「SUPER ENFANT TERRIBLE」、ノイジーなギターにカウパンクのりのドラム、通例よりトーンを落とした志磨のボーカルの融合も独特な「レモンツリー」、かと思えば、この日の彼らのハイライトとも言えた「Automatic Punk」では、中間部にてスリリングなカッティングと土着性を帯びた暴発ドラミングが素敵な融合を見せ、曲中何度もストームを巻き起こす。数度に渡る高揚感が会場中に襲いかかり、何度もロックバンド的カタルシスを我々に与えてくれた。初見の人が数多かった関係上、当初は訝しがっていた会場も、徐々に邂逅。彼らがステージを去る際には、満場喝采の拍手が彼らに贈られたのが印象的であった。
そして、次はピエール中野。この日の彼のプレイ形態が事前に告知されていなかったこともあり、DJ、ラップ、即興音楽等々、これまで幾つかの個人活動も行なってきた彼が、この日はどんなスタイルで来るのか?の期待値が高まる中で、そのステージは開始された。結果はナント先述のその全て。彼の出番を告げるステージの幕が開くと、中央にはドラムキットが。まずはそのドラムキットと照明の演出による魅せるドラムソロが披露される。そう、凛として時雨のワンマンライヴの際も、聴衆にその手さばき足さばきの超絶さで口をあんぐりさせてきたアレだ。そして、Perfumeの「レーザービーム」に合わせ手数多くドラムを被せると、続いてはMUCCのギター、ミヤと共にギター&ドラムでの即興セッション、そして、「ライヴハウス武道館へようこそ」「ここは東京だぜ」の武道館至上屈指の有名フレーズを満員の会場に放った後は、用意されたDJブースに。そこでは時雨ワンマンライブでのMCコーナーでお馴染みの嵐の「A・RA・SHI」にて歌&ラップが披露され、続いてゲストのBABYMETALも登場し彼女たちのレパートリーを披露。ラストはお決まりのX JUMPで締められ、満員の会場は彼のやりたかったこと全てに楽しんだ。
ライヴハウスだろうが武道館だろうが、数十人だろうが数千人を相手だろうが、いつもと変わらないジェットロックンロールを、この武道館でも我関せずに放ってくれたのはギターウルフ。我々にはいささかお約束となっているステージアクションでも、この日彼らに初接触のオーディエンスたちには、かなり刺激的で新鮮。”こんな世界もあるのか!?”と驚嘆を漏らした方も多かった。赤いライトが中心のステージ演出と、終始鳴り止まないフィードバックとハウリングが、ロックの粗暴さとカッコ良さ、そしてスリリングさを改めて教えてくれた彼らのステージ。この日一番の激速を見せてくれた「ケンカロック」、グイグイと会場にその音塊を突っ込ませていった「ワイルドゼロ」等、もはや独壇場とも言えるそのステージは痛快の一言。ラストの疾風怒濤のような「ロックンロールエチケット」が終わり、彼らが去っていった会場には、<孤高>という言葉がしっかりと残った。
少々のインターバル経て、ここからは後半。まずは再び下ろされた幕が開き、TK from 凛として時雨が現れる。既にステージにスタンバイしていたメンバーたち。今回は、下手からベースの日向秀和、鍵盤、バイオリン、ドラムのBOBO、そして中央にTKという5人編成だ。これまで数度しかライヴを行なっていないだけに、あの作品での構築性の再現の度合いに期待も高まる。そして、それは1曲目の「haze」が始まり、わずかの時点で合点。その再現性の完璧さに加え、ライヴならではの高揚感や躍動感がみなを虜にしていく。他にも、アコギならではのデリケートさが楽曲に更なる美しさを寄与していた「flower」、切なさを広げながらも、歌による時折のエモーショナルさが、楽曲にアクセントをつけていった「12th laser」、幾何学な曲展開ながらも、各人の卓越したプレイヤビリティを経てポップさに洗練された「Abnormal trick」。また、「新曲を演ります」の一言の後にプレイされた曲では、ドラマティックなイントロと日向のスラップを交えたベース、TKのギターソロ代わりのギターソロと各人の魅せ場も盛り込まれ、且つBOBOの生み出すダンサブルさが会場を揺らせた。そしてラストは、ゆらゆらと始まりながらも、最後はとてつもない昇華が会場を支配していった「film A moment」と7曲をプレイ。極めて高いアカデミックさとハイエンドなテクニック、ライヴならではの臨場感を持って、作品以上の体感を我々に与えてくれた。
「いわゆるTK挟みの中の出番ですが、みなさんが"(9mmが間にプレイしていたことが)夢だった"と思われないライヴをします」と、途中のMCにて和ませながらも、しっかりとアライアンスを交わしてくれたのが、膝(トリの一つ前)の9mm Parabellum Bullet。新鋭のロックバンドとして時雨と共に台頭し出した2006年頃、よく同じカテゴライズに押し込められていたのも昔の話。今や説明不要なぐらいの独自性を擁し、且つ幅広い人気を博しているのは言わずもがな。この日も、まさに彼ららしいライヴを展開していた。
重厚なカッティングと哀愁性を帯びた歌、そして、アクティヴィティなステージパフォーマンスでいきなりオーディエンスをがっちり惹き込んだ「Discommunication」を口火に、疾走スカナンバーがダンスを誘った「ハートに火をつけて」、ポイントポイントでお客さんも大合唱した「Vampiregirl」、重厚なギターリフとラストの怒濤の2バスが会場を揺るがせた新曲、はたまたベースの中村もアップライトベースに持ち替え、会場にスウィンギンなムードを程よく持ち込んだ「キャンドルの灯を」、ラテンのビートに会場中が跳ねた「Black Market Blues」、ギターの滝のライトハンドも色彩的に織り交じり、この日一番の怒濤さを見せつけた「Punishment」と全9曲。その疾風怒濤さとフィードバックノイズを残し、彼らはステージを降りた。
そしてラストは、公ではこの日が約1年ぶりのライブであった、凛として時雨。フェスやイベントライヴでの彼らをあまり見ることのなかったことも手伝い、ワンマン以外での短いセットリストの中、どのような曲がどんな流れで飛び出してくるのか?にも興味が募った。トリに相応しく、この日一番の凄さを会場に集まったオーディエンスに魅せつけた彼ら。飛び出した1曲目は、345がリードボーカルの「illusion is mine」であった。その予想外の出だしに少々面喰らう。そして、ライヴはいつものワンマン時よりも、ボーカル&ギターのTKとボーカル&ベースの345によるツインボーカル性や三位一体となったバンドの一丸性を打ち出すような楽曲が次々と飛び出していく。加え、「I was music」ではサビのストレートさが疾走感を伴い会場を走らせ、「DISCO FLIGHT」では、サビでのダンサブルさが快楽と高揚、ラストはピエール中野のツインペダルによるバスドラが地響きのように会場を揺らせた。そして、この曲を通し、また新しいファンを掴んだであろう、今の彼らの真骨頂の「abnomalize」、男女ボーカルの抜きつ抜かれつのボーカルチェイスが身体を奮わせた「JPOP Xfile」等が披露された。そしてこの日は、「6月28日にこの日本武道館で単独ライヴを行なう」との重大発表も。それを受け会場は更に熱狂。ラストの「nakano kill you」へと雪崩込んでいく。最後はTKがソロをヒステリックにキメ、ギターを投げ出し、フィードバック音を残し、この7時間に及ぶ2012年最後にして最大の「尖鋭ロックバンドの祭典」の幕を閉じた。そう、<凄かった...>の印象を強く我々に残して。
【取材・文:池田スカオ和宏】
ライブ イベント 凛として時雨 9mm Parabellum Bullet ドレスコーズ geek sleep sheep ピエール中野 MUCC ギターウルフ
セットリスト
「DECEMBER’S CHILDREN」
2012.12.27@日本武道館
geek sleep sheep
- new song 1
- new song 2
- new song 3
- new song 4
- new song 5
- new song 6
- Mr.Liar
- G.G.
- MOTHER
- フォーリングダウン
- 蘭鋳
- シャングリラ
- Lolita
- SUPER ENFANT TERRIBLE
- レモンツリー
- Automatic Punk
- (This Is Not A)Sad Song
- ベルエポック・マン
- Trash
- Drum Solo
- レーザービーム (Perfume)
- ギターセッション(GUEST:ミヤ<MUCC>)
- A・RA・SHI(嵐)
- ヘドバンギャー(GUEST:BABYMETAL)
- ジェット ジェネレーション
- ミサイルミー
- UFOロマンティクス
- ケンカロック
- ワイルドゼロ
- オールナイトでぶっとばせ!!
- ロックンロールエチケット
- haze
- flower
- 12th laser
- phase to phrase
- Abnormal trick
- 新曲
- film A moment
- Discommunication
- ハートに火をつけて
- Vampiregirl
- 新曲
- キャンドルの灯を
- Black Market Blues
- 新しい光
- Talking Machine
- Punishment
- illusion is mine
- I was music
- DISCO FLIGHT
- abnormalize
- JPOP Xfile
- Telecastic fake show
- nakano kill you