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弱虫のロックが大会場に鳴り響いた! 奥田民生、ASIAN KUNG-FU GENERATION 待望の初ツーマンライヴが実現!!

弱虫のロック論 -GOOD CRITIC- | 2013.03.08

とことん“音楽が主役”の、じつにピュアなイベントだった。

 2月27日、Zepp Tokyoにて、奥田民生とASIAN KUNG-FU GENERATION初のツーマン・イベントが開催された。この音楽ファンの心を鷲掴みにしそうなスペシャルなイベントは、ある単行本の発売を記念して企画されたものである。
その単行本とは、音楽評論家・平山雄一氏の第二音楽評論集『弱虫のロック論 -GOOD CRITIC-』(角川書店・刊)。氏が親交のある2アーティストに自らオファー&ブッキングし、初ツーマン実現の運びとなった。

チケットは即完、超満員のZepp Tokyo。この日のイベントの説明も兼ね、平山雄一氏の歴史などを映像で流した後、この日、最初にステージに姿を現したのが、平山氏本人。本年還暦を迎えた気合で、髪を赤く染めての登場だ。「弱虫?!」と第一声。イエー!と応える客席に「こんなにたくさんの弱虫が集まってくれてありがとうございます」と挨拶した後、イベントにまつわる幾つかのエピソードの披露後、いいムードの中、氏の紹介から、最初のアクトがステージ袖から歩み出てきた。奥田民生。歓声の中、平山氏と握手を交わし、ハグっぽい感じで抱き合い(?)、ステージ中央へ。
 自らの左手側にズラリと並んだギター&ベースを見つめ、ちょっと迷ってから1本を選び出し、スタンバイ。
「こんばんは(観客:こんばんは)えーと、よろしくお願いします。1時間あるからね。1時間たっぷりで、4曲くらいいきたいと思います」とトーク。男性客から「民生さん、何やるんですか!」と声が飛ぶ中、まるでその問いに曲でレスポンスするように「ドースル?」を演奏し始める奥田民生。ゆるりとステージはスタートした。
 次の曲では、イントロのワンフレーズが鳴っただけで、観客から歓声があがる。「さすらい」。エンディングでは、奥田のかき鳴らすギターの音に呼応するように、会場から少しずつ大きくなる拍手が起こった。ニヤリと笑って話し出す。
「今日は平山さんの還暦とかの本のヤツって、言われて来ました(笑)。こんな微妙なイベントに来ていただき、ありがとうございます」
 と軽く笑いを取り、平山雄一氏&自分の歴史やエピソードへ。曰く、デビュー時からお世話になっている、デビュー時から(平山さんの容姿が)変わらない、それはあんまり傍に居て欲しくない風貌、などなど。そして最後はこう締めくくった。
「平山さんがリクエストしてくれた曲を。さすが、平山雄一、渋いヤツです」
 この言葉を受け披露されたのが「家に帰れば」。リズムとメロの絡みも抜群ながら、奥田民生のギタープレイも堪能できる1曲だ。
 時計を見ながら「もう20分か」とつぶやいたり、メモをとって曲順を確認したりしながら、奥田民生のステージが続く。本人のリラックスしたフラットなスタンスが、観客を巻き込んでいく。ただ音楽を楽しむ空間が、そこには出来上がっていた。
 中盤では、照明がステージに花を描いた「野ばら」や自身もメンバーの地球三兄弟のライヴでも演奏しているボブ・ディランのカバー曲「My Back Page」などを。  観客の“期待”という名の水面に、音楽の真髄をシンプルに、そして気軽に放り投げるその様は、奥田民生のライフスタイルに直結しているようで、彼の音楽家のとしての懐の深さと普遍性を同時に感じさせた。
 ライヴは終盤へ向かう。骨太なシャウトに大きな拍手が起こった「無限の嵐」を終え、再びゆるゆると呟き始める奥田民生。残り時間を確認し「これやったら、これだけで終わるなー。こんな飛び道具で終わっていいのか」と、ベースを手にし、アップテンポでリズムボックスを鳴らして「サマーヌード」(真心ブラザーズのカバー)。フィリーソウルのベースラインを再現しようとするも、途中から自らが笑い出してしまうほどのプチ惨事に。「ダメだ、これ」と、ギターに持ち替えた瞬間、観客はどっかーんと大爆笑。楽器を変更した後は、しっかり歌いきり、笑いと拍手喝采が入り乱れた。最後のMC(?)。
「時間がきましたんで、もっかい同じ曲をやって終わろうかね」と脱力&苦笑させ、「今日結構、良かったと思うよ。平山さん、泣いてると思うな。前座にありがとうございました。この後も続くので、ぜひ“えーっ!”となってください」と、独特の愛とエールで、次のアクトにつないだ奥田民生。最後の曲「イージュー☆ライダー」は、観客全員、大合唱となった。

 転換。平山雄一氏の還暦&第二音楽評論集の出版を祝う、アーティストからのコメント動画が流れる。敬称略で流れた順番に紹介しよう。布袋寅泰、ゴスペラーズ、MISIA、電大、スピッツ、浜崎貴司。氏の幅広い人脈&音楽の幅に、客席からは拍手と様々なコメントが飛び交っていた。その中のひとつ、個人的に最も印象的だった言葉を紹介しよう。
「どんだけ取材してんだよ! いつ寝てんだよ」

 再び暗転するZepp Tokyo。1階フロア、最前列の人口密度が、グッと高くなる。薄闇の中、観客がひとつの塊になって、ぐらりと揺れているのが見えた。
 ASIAN KUNG-FU GENERATION。SEと拍手の中、メンバー、サポートメンバーが、順番にステージに現れる。最後に、軽く拍手をしながら、ボーカル&ギターの後藤正文がステージ中央へ。歓声がステージへなだれ込んでいく。
 イントロ。旋回するムービングライト。白光のライトが眩しく明滅する。「それでは、また明日」。間髪いれず次の曲へつなぐ。プリミィティヴで力強いドラムが、イントロの輪郭を作っていく中、マイクにスッと寄った後藤がひとこと。「どうもこんばんは。ASIAN KUNG-FU GENERATIONです」大歓声がレスポンスした。1曲の中で、彼らの豊富なルーツとアグレッシヴなスタンスが感じられる「AとZ」。エンディング。フィードバックする残響音に潜るように体を折り、ゆらゆらと揺れている後藤の姿は、じつにクールでカッコ良かった。「新世紀のラブソング」を終えたところで、最初のMC。後藤がマイクをとる。
「どうもASIAN KUNG-FU GENERATIONです」と改めて挨拶した後で、ステージ転換時に流れたお祝いコメント映像について、インパクトが大きすぎる旨の感想を述べた。さらにその映像が印象に残りすぎて「もう俺、歌う自信が無い(笑)」と観客を笑わせる。そして、メンバー紹介へ。メンバー4人に加え、パーカッション、キーボード&ギター、コーラスを加えた7人体制は、昨年行われた彼らの全国ツアー「ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2012『ランドマーク』」と同様の形だ。このスタイルは、サウンドの音圧はもちろんながら、楽曲の広がりやボトムアップに一役かっていたように思う。前述した「新世紀のラブソング」など、個人的には混沌とした趣も楽曲の特徴だと思っていたが、この日はサイケデリック・ロックの彩りも感じさせた。音楽がアーティストのエネルギーでうごめきながら、変貌していく瞬間を目の当たりにした気がした。
 後藤が言葉を続ける。「平山さんは昔から知ってます、デビューの頃からです」と前置きをし「ではあの頃のファーストアルバムから」と「無限グライター」へ。最前列の観客が、前のめりになる。後藤もステージ前で前のめりになるアクションを見せた。緊張感を緩めず、サウンドを紡いでいくASIAN KUNG-FU GENERATION。サウンドの破片が、一定のリズムが、曲の断片を描きながら綺麗に客席に舞い降りる。増えていく音色。楽曲が輪郭を表す。「マーチングバンド」。ギターのフレーズとループが次の曲へ誘っていく。トライバルなパーカッション。満員の客席が大きく波うち拍手が起こり「N2」。楽曲のひとつひとつが、しっかりとメンバーの体に入っている。まるで、ASIAN KUNG-FU GENERATIONという生命体の細胞分裂を観ているかのようだ。鮮やかで刺激的なバンドの息遣いが、そこにはあった。
 後藤が再びマイクをとった。
「髪切って若返ったでしょ?」と軽くジャブ。観客から感想が飛び交う。ひと呼吸おいて、こう続けた。
「平山さん、還暦おめでとうございます。思えば自分のお父さんやお母さんと同年代の方に、自分の音楽論を話すっていうのは、考えると恥ずかしい」と、氏と自分との関係を自己分析した後、雑誌には規定の文字数がある、1時間話して300文字くらいにまとめるってものすごい能力と、シニカルな本音をチラリ。そして、雑誌の話題から「ユニコーンの記事を読みたくて音楽雑誌を買ってた」さらには「『奥田民生ショウ』(奥田民生オンリーの単行本)を予約して、プロマイドをもらうくらい好きでした」と、この日のイベントに対する思いを、カミングアウト風に綴った。
 キラーチューン「リライト」では、間奏で観客全員のクラップが綺麗に揃う。観客のテンションをさらに煽るように「ループ&ループ」。後藤のシャウトに、観客が大きな声でレスポンスした。サビで明るくなる客席。そこには、目をキラキラさせた(本当にそう見えたんです!)、この日のもうひとつの主人公達の姿があった。 「アジカン、最後の曲です」と、最新シングル「今を生きて」。音楽、そして時代と真摯に向き合ってきたこのバンドだからこそ、説得力を持って響かせることのできるポジティヴ・チューン。ふと見れば、フロアの中程、両手でダブルピースをしている男の子の姿が見えた。

 鳴り止まないアンコールに応え、再びステージに姿を現したASIAN KUNG-FU GENERATION。後藤が「ありがとうございます。1人メンバーが増えます。奥田民生!」と、憧れの人を呼び込む。大歓声の中、登場した奥田民生は「どうもはじめまして。頑張ります」とひとこと。「2曲くらいやりますんで!」という後藤の言葉を受け、奥田民生の「マシマロ」へ。奥田の「東京!」という煽りに、観客から“イェー!”のレスポンス。2番を後藤が歌いだした瞬間、この日1番の大歓声が起こった。続いてASIAN KUNG-FU GENERATIONの「君という花」へ。2番を奥田民生が歌う。その“憧れの人”の様子を、奥田の左隣でチラ見していた後藤正文は“こりゃもう本当にたまらん”というような、はにかむような笑顔を見せたが、同時に“ここで笑っちゃいかん”というような趣で、笑顔を我慢するような素振りも見せていた。そんな中、ギターを大先輩・奥田民生に任せて、後藤はハンドマイクでステージ前方へ。ギターを弾きながら同じくステージ前方へ奥田民生は、後藤の様子を見ながら、彼のすぐ近くに移動。肩ごしにゆるーく絡むようなアクションを見せた。それに気がついた後藤から、見たこともないような満面の笑顔がこぼれた。  奥田がエンディングを仕切り、見事に「君という花」の最後を決めた。
 ギターを置いた奥田は、まずはバンドのメンバー達にそれぞれ一礼、そして最後には客席に向かって一礼してステージを後にした。
 後藤はバンドに、観客に、そして奥田民生に大きな拍手を送っていた。

 音楽が主役となり、そしてその音楽を共有したすべての人が主役になっていたーーそんなピュアで素晴らしいイベントだったと思う。

 リスペクトできる先輩の背中が見える。
 それは、後輩にとって、とても嬉しくてありがたいことだ。

【取材・文:伊藤亜希】


平山雄一氏の最新評論本『弱虫のロック論 -GOOD CRITIC-』の詳しい情報は、こちら

http://www.kadokawa.co.jp/goodcritic/

tag一覧 ライブ 弱虫のロック論 -GOOD CRITIC- 奥田民生 ASIAN KUNG-FU GENERATION 平山雄一

セットリスト

奥田民生&ASIAN KUNG-FU GENERATION
弱虫のロック論 -平山雄一第二音楽評論集リリース・パーティ-
2013.2.27@ Zepp Tokyo

奥田民生
  1. ドースル?
  2. さすらい
  3. 家に帰れば
  4. 野ばら
  5. スカイウォーカー
  6. My Back Pages
  7. イオン
  8. 月ひとしずく
  9. ひとりカンタビレのテーマ
  10. 無限の風
  11. サマーヌード
  12. イージュー☆ライダー
ASIAN KUNG-FU GENERATION
  1. それでは、また明日
  2. AとZ
  3. 新世紀のラブソング
  4. 無限グライダー
  5. マーチングバンド
  6. N2
  7. No.9
  8. リライト
  9. ループ&ループ
  10. 今を生きて
Encore
  1. マシマロ
  2. 君という花

お知らせ

■BOOK INFORMATION

2013年2月27日発売
「弱虫のロック論-GOOD CRITIC-」
著者:平山雄一
予価:1,500円(税込)
発行:(株)角川書店
発売:(株)角川グループパブリッシング

リリース情報

奥田民生・カバーズ2

奥田民生・カバーズ2

2013年03月06日

KRE

1. 103 / Butch Walker
2. 恋のかけら / 曽我部恵一BAND
3. サウンド・オブ・ミュージック / OKAMOTO’S
4. 人の息子 / ストレイテナー
5. さすらい / the HIATUS
6. And I Love Car / 松たか子
7. 御免ライダー / 大江千里
8. イージュー★ライダー / andymori
9. The STANDARD / Chara
10.マシマロ / 怒髪天
11. 夕陽ヶ丘のサンセット / 住岡梨奈+堂島孝平×A.C.E.
12. CUSTOM / HUSKING BEE
13. 野ばら / 矢野顕子

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リリース情報

ユニコーン・カバーズ

ユニコーン・カバーズ

2013年03月06日

KRE

1. スターな男 / フラワーカンパニーズ
2. デーゲーム / くるり
3. ヒゲとボイン / POLYSICS
4. 雪が降る町 / Scott & Rivers
5. デジタルスープ / UNISON SQUARE GARDEN
6. Pink Prisoner(カバーアルバム「ALL COVERS BEST」より) / コブクロ
7. 大迷惑 / JUN SKY WALKER(S)
8. 人生は上々だ / 氣志團
9. 服部 / グループ魂
10. Maybe Blue / DOES
11. I’M A LOSER / THE STARBEMS
12. HELLO / ザ・ビートモーターズ
13. 自転車泥棒 / YUKI
14. ひまわり / Andy Sturmer

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リリース情報

今を生きて(初回生産限定盤)

今を生きて(初回生産限定盤)

2013年02月20日

KRE

ディスク:1
1. 今を生きて
2. ケモノノケモノ
ディスク:2
1. 今を生きて (MUSIC CLIP)
2. 今を生きて (メイキング)
3. 映画『横道世之介』劇場予告編

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