coldrain&SiM、現行のラウドロックシーンを牽引する2バンドのヘッドライナーツアーをレポ
coldrain,SiM | 2013.04.11
現行のラウドロックが、メタルやエクストリームミュージック好きのみならず、幅広い音楽好きにも確実にグリップし、次のロック界の新生面になる予感をますます強めたライブであった。加え、この日は、昨年惜しくも急逝した、近い音楽性と志しを持った朋友、Pay money To my PainのボーカリストKへの温かいオマージュを感じた1夜でもあった。
coldrainとSiMというラウドロックの若き牽引者と言っても過言ではない2バンドをヘッドライナーに、全国9箇所にて行なわれてきた、ライヴハウスツー『MONSTER ENERGY OUTBURN TOUR 2013』。そのファイナルが、この日、渋谷AXにて行われた。全国各地ソールドアウトを記録し、着実に全国にラウドロックへのシンパシーを持つ若者が増えていることを物語っていた同ツアー。この渋谷AXもマックス2000人近く入る大バコながら、既にチケットはソールドアウトしており、キッズたちが、"暴れるゾ~!"といった佇まいでライヴのスタートを持っていた。先に断っておくが、この<暴れる>は、決してバイオレンス的な暴れるとは、少々趣きが異なったもの。どちらかといったら、良い意味での熱狂的な狂騒とでもいうか、危険よりもスポーティさを感じるものだ。
各地で1バンドのゲストを迎え行われた同ツアー。この日のトップを飾ったアメリカ・アリゾナ州フェニックスにて結成されたメタルコアバンド「BLESSTHEFALL」が、その神々しいまでのステージングと、DOOMでいてポップなサウンドにて会場にモッシュサークルと、ジャンプの嵐を吹き終えると、フロアの密度が更に上がり、"これでモッシュピットが作れるのだろうか?"との疑問が沸くほどの密集を見せ始める。
SEに乗って、まずはギターのSHOW-HATE、ベースのSIN、ドラムのGODRiがステージに現れる。そう、最初の出番は、SiMだった。まずはその3人が向かい合い、デモンストレーション的に音壁を作り上げる。その音壁を破るようにのっしのっしとボーカルのMAHがステージに登場。オートチューンのかかったボイスでライヴへとイントロデュースしていく。1曲目は「Get Up, Get Up」。ラガの入ったボーカルとデスボイスとを歌い分けるMAH。サビでは会場全体にジャンプを呼び込み、早くも会場各所ではクラウドサーフやモッシュピットが現れ出す。とは言え、間には彼らの特性ともいえるレゲエのゆったりとしたブロックを織り交ぜ、それがことさら後半の起爆を呼び起こす。「AX、新曲だ。聴いてくれ!!」のMAHの煽りの後、4月3日発売のメジャー移籍シングル「EViLS」から、新曲の断片がプレイされた。まだ発売前だというのに、楽曲の分かりやすさとノリやすさもあるのだろう。同曲では、みんながノリ、踊り、一緒に呼応する。最後にもう一度盛り上がりを作るかと思いきや、あえてハズすようにヤラず。「やるわけねぇだろ! バカ!!」と嬉しそうにMAHが叫ぶ。やられた(笑)。SHOW-HATEのギターソロから入った「Faster Than The Clock」では、"今度は俺たちの番だ!"と言わんばかりに、SHOW-HATEとSINが広いステージを左右に走り出す。サビのGODRiによる激速ツービートでは、会場中が疾走&シンガロング。ライヴが更に加速していく。次に飛び出したのは「Amy」。楽曲に合わせ、ギター&ベースが足を垂直近くまで上げ出す。いつもながら魅せる演出だ。しかも、これをキチンとプレイしながら行うのだから恐れ入る。同曲のラストには、シンクロするように、楽器を回しながらしっかりプレイしていたのだから、もう敬服だ。
「このツアー8本やってきたけど、どの箇所も楽しかった。全国来てくれた人もいるだろうけど、この日が最初で最後って人もいるだろう。だけど安心してくれ。楽しかった8箇所分、全部ここでぶっばなしていくから」とMAH。「KiLLiNG ME」のイントロが流れると、"待ってました!"と会場も各所でウィンドミルや2ステップが現れ出す。電話のコール音を呼び声に、彼らの面目躍如ともいえるレゲエパンクが心地良さとその反動の激しさを生み出していった「Fall In Love With You」、「お前らが今、一番ムカついていることをぶつけて欲しい」の後、GODRiのツインペダルが地響きを立てて会場を襲い、歌もお客さんに任せた「I Hate U」。「どんな頭でっかちなやつでもノラせられる曲を演ります」のMCの後には「JACK. B」がプレイされ、ここではギター&ベースによる楽器回しも披露。「おおっ!!」と会場から感嘆の声が上がる。そして、「ここに一緒に出てもらいたくても、叶わなかったバンドの曲を演ります。ここでこの曲を演るのは、何か意義があってのことだろうから」と告げ、Pay money To my Painの「Weight of my pride」をプレイ。GODRiも一打一打、これでもかとスネアを叩く。ラストは怒涛のショートチューン「f.a.i.t.h」で締め。SHOW-HATEのきらびやかなライトハンドも飛び出し、モッシュサークルも大きくなり、その周りも早くなっていく中、彼らはステージを降りた。
やおら再びフロアの密度が上がっていく。トリのcoldrainの登場だ。ドラマティックなSEの中、一人ひとりがゆっくり現れる。ベースのRxYxOが会場を煽る。SEがクライマックスを迎えると、デモンストレーションの音の中、「東京~!!」とシャウトしながらボーカルMasatoが登場する。まずは「No Escape」から。早くもステージ狭しと走り、歌うMasato。ギターのY.K.C、Sugi、そしてRxYxOによる3本のサオ(ギターやベースのネック)が並び、それが最前のお客さんに触れるところまで伸びる。フロアはヘッドバンキング&ジャンプの嵐だ。Masatoがグロウルなデスボイスとクリアボイスを効果的に使い分ける。続いてのタイトル通りアドレナリン&ドーパミン大分泌の「Adrenaline」では、無数のクラウドサーフが生まれる。重いギターリフの上、きらびやかなメロが泳ぎ回る。2本のギターの有効性がここで発揮される。また同曲では、Masatoも交え、2人ギターとRxYxOがフロントに並ぶ圧巻の場面も見れた。躍動的でダイナミックな「Inside Of Me」では、疾走2ビートも飛び出し、合わせて会場の至る所に大小のモッシュピットが生まれる。ここでのハイライトは、Masatoのハイトーンボーカル。後ろから当たる段々と眩しくなっていくライトが神々しく、美しい。
「力残ってますか?東京。もっといきましょう。あったまったところで、全員がぶっ飛ぶヤツ演るから」とMasato。そのあとにプレイされた「To Be Alive」の3本のサオが並んでのカッティングの絶景ったら。同曲ではザックザックに重いギターリフと、サビのストレートになっていくところがツボ。モッシュピットの回転速度も上がっていく。続いてダンサブルなサビとアンセムのような大合唱大会となった「Rescue Me」、そして、やはりここでもPTPへの温かいオマージュは現れた。「どうしてもここで一緒に演りたかったバンドがいます。でも出来ませんでした。この場所に立つと決まった時から、何かヤツに届けられるんじゃないかと思い、1曲演ります。正直、一緒に歌いたかった曲だし、その夢は叶わないかもしれないけど、よかったら俺と一緒にみんなも歌って下さい。Next Song Is 『Pictures』」。大歓声が上がる。そう、PTPのナンバーだ。イントロに合わせたフロアのクラップと共に始まった同曲。会場中が明るくなり、全体での大合唱が育まれていく。まるでアンセムのように誇り高く響き渡った同曲。渾身の力を込め、メンバーも叩き、弾き、一丸性が育っていく。ここからはヘッドバンキング必至のナンバーが立て続けに鳴らされる。「ラウドロックは好きですか?頭振るのは?歌うのは?暴れるのは好きですか?」と、美しさと激しさが同居した、現れたストロボもよく似合っていた「Die Tomorrow」。「頭ふれ?」の後に飛び出した「Six Feet Under」では、ヘッドバンキングとコブシ、そして呼応の応酬がめまぐるしく展開された。ラストは4月17日発売のニューアルバム『THE REVELATION』から「The Revelation」をプレイ。ライヴをガシッとヘッドバンキングの嵐で締める。
ここからはアンコール。coldrainが出てくるも、Masatoはいつものガイコツマイクではなく、通常のボーカルマイクを使用。「いつもこのツアーで俺のことを物マネするヤツがいて(SiMのMAHのこと)、いよいよ仕返しの時が来た」と告げ、SiMのMAHのライヴのイントロデュースを完コピ。そのままSiMの「Get up, Get up」のカバーに入る。なるほど、マイクはその為だったのか。この曲では、SiMのギターのSHOW-HATEも飛び入り、コーラスに加わる。続いて今度は、本家MAHが登場。「いいか、物マネってのは、こうやるんだよ!!」と、今度はMAHがcoldrainの「Final Destination」をイントロデュース。大どんでん返しに会場が湧く。それを引き継ぎ、バンドが「Final Destination」に入り、Masatoもマイマイクに持ち替え、一気に歌い上げる。会場も、"ここで力を出し尽くさなきゃいつ出すんだよ!"と言わんばかりに、大盛り上がりの阿鼻叫喚状態に。いやー、みんな楽しそうだ。気づけばステージには、SiM、BLESSTHEFALLのメンバーもおり、このツアー最終の大団円を飾る。
「俺らのようなバンドのシーンというものがあって、歴史があるんだったら、こういうツアーから新たなる歴史を作っていきたいと感じるツアーでした。みんながいなきゃできませんでした。ありがとうございます」
これは、この日のcoldrainのボーカル、Masatoのライヴ中盤のMCの一部だ。私はこの話を聞く間中、何度もうんうんうなづいた。やはり今、何かが蠢いており、シーンが孵化を迎えようとしている。色々な方面で、色々な方法論で、ラウドロックがポピュラリティを得るタイミングが、ほら、そこまで来ている。
【取材・文 池田スカオ和宏】
リリース情報
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セットリスト
『MONSTER ENERGY OUTBURN TOUR 2013』 FINAL
W / coldrain、SiM、BLESSTHEFALL
2013.3.28 渋谷AX
SiM
- 1. Get Up, Get Up
- 2. 新曲
- 3. Faster Than The Clock
- 4. Amy
- 5. KiLLiNG ME
- 6. Fall In Love With You
- 7. I Hate U
- 8. JACK. B
- 9.Weight of my pride(COVER from Pay money To my Pain)
- 10. f.a.i.t.h
- 1.No Escape
- 2.Adrenaline
- 3.Inside Of Me
- 4.To Be Alive
- 5.Rescue Me
- 6.Never Look Away
- 7.Pictures(COVER from Pay money To my Pain)
- 8.Die Tomorrow
- 9.Six Feet Under
- 10.The Revelation
- EN1. Get up, Get up(COVER from SiM)
- EN2. Final Destination