RADWIMPS、横浜アリーナでのライブの模様をレポート!
RADWIMPS | 2013.05.02
さいたまスーパーアリーナで行われた『絶体延命』のツアーから1年と8ヵ月。“死ぬまで生きろ”という叫びは、“今日で最後でもいいと思えるくらい、毎日を自分なりに生きろ”という叫びに変わった。がむしゃらに生きることで見えてくる、そこに宿る生きる幸せを、彼らはこの日、RADWIMPSという生き方で証明してくれた。
いつからか。世の中の出逢いのすべては、偶然という名の必然で出来ていると感じるようになった。年齢を重ねるごとに、その想いは日に日に強くなり、その必然に感謝するようにもなった。父と母が出逢い、私という命が宿り、そして生を受け、いろんな偶然という必然を繰り返し、今、ここに居る。そして。この文章を書いている──これも必然。 野田洋次郎と桑原彰が出逢い、RADWIMPSが生まれ、そして、この横浜の地で開かれた同じ大会に出場した山口智史と武田祐介と出逢い、4人はRADWIMPSという1つの人生を共に歩むことになった。これも偶然という名の必然だ。同じ時代に生まれ、同じ大会に出場し、彼らは偶然出逢った。そんな偶然は、RADWIMPSという音をこの世に鳴らし、多くの人と出逢い、そして、多くの人を救う必然となった。
2013年4月17日19時13分。『RADWIMPS LIVE 2013春ウララレミドソ』横浜アリーナ2Daysの2日目。
会場内の照明がすべて落とされた闇の中、ステージに光る8個のブルーのライトがゆっくりと円を描くようにまわり始めると、野田の声が真っ直ぐに響いた。「愛し」である。うっすらとある光の中に、花びらが静かに舞うのが見えた。とても美しい情景だった。一瞬の沈黙の後、野田を一筋の光が照らすと、桑原、武田、山口が音を発し、その静寂を破った。フロアに一気に広がったバンドサウンドに、オーディエンスは歓喜の声と共に、右手を高く振り上げた。
「はっちゃけんぞ!」(野田)
野田が叫ぶと、曲はリズミックなギターとアタック感を強く感じるリズム隊の音が印象的な「ギミギミック」へと繋がれた。
「透明人間18号」や「トレモロ」を間髪入れずに届け、すっかり会場を魅了すると、「シザースタンド」では、ピアノ、アコギ、アップライトベースという音色で彩どられ、山口のドラムはゆったりとした時を刻んでみせた。
「横浜はやっぱり特別な場所です。僕たちにとって。この横浜アリーナであったバンド大会でこの4人は出逢って、それから10年ちょっと。10年とか生きちゃうんだな、人間って。長く生きるか解らないけど、誰よりも濃く生きたいと思ってます。だから、みんなも濃く太く生きよう! でも俺さ、普段から、“なんで生きてるのかな?”ってしょっちゅう考えちゃうんだよね。だから、今日はここで、その意味を掴んで帰ろうと思います」(野田)
オーディエンスはそんな野田の言葉に応えた。
届けられたのは「有心論」。生ていることを感じさせられたその瞬間にオーディエンスは大きな歓声を送り、そこに声を重ね、共に歌った。
「神様は想像してなかったと思うよ。人間を作った時に、こんな素敵な世界が出来るって。それくらい今、君たちは美しいです。ありがとう!」(野田)
ゆっくりと進む音と唄が会場中を包み込み、そこに体温を感じた「ブリキ」。共にすべてを曝け出し、だだっ子になった「DADA」。歯切れ良くもルーズな世界の中で大合唱となった「G行為」。曲中でステージ中央に集まった4人が、音をかき鳴らし、感情をぶつけた「おしゃかしゃま」。そして。RADWIMPSという生き様を歌った(語った)「独白」では、約1万2千人が無言で聴き入った。
“ありがとう!”というオーディエンスの声に、野田は“こちらこそ、ありがとう”と優しく応えたのだった。
最新シングル曲「ドリーマーズ・ハイ」で締めくくられた本編は、オーディエンスの歌う、彼らの1stシングルでもあった「もしも」によって、アンコールへと繋がれた。
そんなアンコールは、ナント、アリーナ後方から4人が登場するというサプライズから始まったのだ。4人は、高くせり上がったセンターステージで肩を寄せ合ってピアノを弾きながら「白と黒の4匹のワルツ」を届け、さらに、4人は各自の楽器を構えると、野田はピアノの前にすわり、ループ・サンプラーで“ウララレミドソ”を幾重にもループさせると、その場で作り上げた実験的ナンバーをオーディエンスに聴かせたのだった。
この日。最後に届けられたのは、Wアンコールに彼らが選んだ「最大公約数」。
“僕の二歩は君の三歩 僕の四歩は君の六歩”
そんな風にこれからも歩いていけばいいと思うその想いを、彼らはオーディエンスに心から歌って届けた。そして。彼らは、彼らの歩幅でしっかりと歩き、またここに帰ってくることを約束し、ステージを去ったのだった。
「今回の地震で、大事なモノがより大事になりました。大事じゃなかったモノが、たくさん大事に思えて、大切な人をより大切に思うようになりました。みんなも、大切な人を世界で1番幸せにしてあげて下さい──」(野田)
『絶体延命』のツアーのMCで、野田が言った言葉が、脳裏の奥から蘇ってきた。“死ぬまで生きろ”という叫びが聞こえたあのライヴから1年と8ヵ月。この日、改めて“生きる”ということの意味を、彼らに教えられた気がした。
「“今日で最後でもいい”──そう思えるくらい、毎日を自分なりに生きて下さい」(野田)
野田は、この日、そんな言葉を残した。
悔いなく生きることは簡単ではない。しかし、それ以上に素晴しい生き方はない。
“あなたが死ぬ そのまさに一日前に 僕の息を止めてください──”
この日のライヴでも歌われた「25コ目の染色体」。その言葉に託された深い愛しさには、1分1秒でも、愛しい人よりも先に逝きたいという願いが込められている。愛しい人の死が、どれほどに辛く怖いかを、野田は知っているのだろう。
しかし。この日、野田は “今日で最後でもいい──。そう思えるくらい、毎日を自分なりに生きて下さい”と力強く叫んだ。震災を受け、大事なモノがより大事になり、大事じゃなかったモノが、たくさん大事に思え、大切な人をより大切に思うようになった彼は、自分が悔いなく生きることで、自分を愛しく想ってくれている人たちを幸せに出来る、最上級の愛情を知ったのだろう。
1年8ヶ月前よりも、少し強くなった彼らを見た気がした。
「今日を忘れずに、また生きていきます。ありがとう!」(野田)
ステージを去った彼らに、オーディエンスは、何度も“ありがとう”を叫んだ。
帰り道。まだ肌寒く感じた夜風を受け、肩をすくめた瞬間、“生ていること”を改めて実感した。そして。野田と桑原と武田と山口の出逢いの必然と、RADWIMPSとオーディエンスの出逢いの必然を嬉しく思った。
ウララレミドソ。ウララレミドソ。
そっと空を見上げて口ずさんだ。なんだかとても心が柔らかになった。
人生ってなんだかいいもんだな。
そんなふうに思えた。
私からも言わせてもらおう。
この日の素敵な景色をくれた彼らとオーディエンスに。
最高に幸せな時間をありがとう──。
【取材・文:武市尚子】
【撮影:太田好治】
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リリース情報
セットリスト
RADWIMPS LIVE 2013 春ウララレミドソ
2013.4.17 @ 横浜アリーナ
- 愛し
- ギミギミック
- ソクラティックラブ
- 透明人間18号
- トレモロ
- シザースタンド
- 有心論
- 遠恋
- シュプレヒコール
- ブリキ
- 螢
- DADA
- G行為
- One Man Live
- おしゃかしゃま
- 独白
- 25コ目の染色体
- ます。
- 君と羊と青
- いいんですか?
- ドリーマーズ・ハイ
- 白と黒と4匹のワルツ
- me me she
-
ENCORE2
- 最大公約数
お知らせ
RADWIMPS 野外LIVE 2013「青とメメメ」
2013/09/15(日)国営みちのく杜の湖畔公園みちのく公園北地区 風の草原
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。