tricot、ツアー序盤のハイライトの東京ワンマンをレポート!!
tricot | 2013.06.25
「tricotのライヴは凄い!!」と、最近多方面からよく聞くが、果たして、その<凄さ>のメカニズムは、何だろう? 4人のルックスからは想像もつかない音楽性? 緻密なアンサンブルやキメを難なくこなしてしまう各々の高いプレイヤビリティ? 音響/ポストロックを通過しながらも極めてポップで歌謡的に響くところ? どれも正解だと思う。合わせて私なら、<これだけ緻密で複雑な音楽性を、肉体にも頭にも非常に分かりやすく表現してしまう、その無意識なプレイ感覚>もそこに加える。そしてそれらは全て、この日の渋谷クアトロにて終始炸裂していた。
「お友達と行く!沸騰ツアー2013~梅雨~」の6日目を迎えた、この日。東京でのワンマンライヴは、実に10カ月ぶりだった。ここ最近の4人の勢いを表すかのように、単独ライヴとしては最大規模にも関わらず会場は満員。これからここで行われる沸騰劇に多くの人が心躍らせている。
合わせて、この日は、これまで以上に彼らの<ライヴバンドである凄み>を感じた。各楽曲はライヴならではの様相を呈し、どの曲も作品以上の熱と生命力を持って終始会場に襲いかかってきた。しかし、それら以上に私が感心したのは、4人がしっかりと<勝負勘>を持っていたところ。それはライヴ終盤に現れた、その場の思いつきで急遽対応したにも拘わらず、この日一番の盛り上がりを見せた、後述の光景が立証してくれた。
SEとウィスパーの歌声の中から現れた4人。各々フォーメーションにつくと、程なく中嶋が「おもてなし」を歌い出す。ドラマーkomaki♂の打ち出す16ビートと、ギターのキダのポリリズムの混じったフレーズ。その土着さにいきなり会場が踊り出す。反面、サビのダイナミズムも魅力的な同曲。いきなり緻密さとダイナミズムの融合といった、tricotの核心が会場を襲撃してくる。ノンストップで続く「消える」に入ると、中嶋が、歌はエモーショナルさや熱を交え伝えながらも、その佇まいはあくまでもクールといったアンバランスさを見せ、表現の稀有さを味あわせてくれる。
「渋谷クアトロ~! 周りに踊らされるな! 好きに踊れ!!」と中嶋が力強くアジテーション。それを起爆にダンサブルな「夢見がちな少女、舞い上がる、空へ 」に入ると、komaki♂の躍動感たっぷりながら、しなやかなドラムが会場の踊りっぷりを誘発し、ヒロミ・ヒロヒロのピッキングとは思えないベースの弾力と低音が楽曲に弾みを加える。そして、中嶋のポエトリーリーディングが起こると、会場もそれに呼応。より、みんなが好きに踊る。他の音響やポストロックバンドと違い、緻密で計算高いサウンドながらも、極めてフィジカルで躍動的なのが彼らの音楽性の特徴。難しいけど、逆に何も考えなく懐に飛び込めば、非常に分かりやすくて楽しかったりもする。
序盤からグイグイ引っ張っていく4人。サビの疾走感とスピード感がたまらない「飛べ」、一層激しい阿鼻叫喚場面を発生させた「G.N.S」、フロントの女性陣による3声のコーラスが激しい曲の中、スイートさを呼び込んだ「ひとのみで」。後半のラテンポップが会場に更なる盛り上がりの火をつけた「アナメイン」と、ペース配分なんてお構いなし、グングンテンションのメートルを引き上げていく。とはいえ、この日はワンマン。ノリばかりではなく、キチンと聴かせ、浸らせる部分も用意されていた。中でも、中盤での「テレキネシス」では、多くの人が彼女たちの歌を聴き浸っているのが印象的であった。
そして、この日は新曲も何曲か披露された。中盤で現れた「POOL」は、艶やかに甘く歌う中嶋の歌声も印象的。ラテン/アフロポップも交え、初披露ながら会場をしっかり躍らせていたし、1カ月程前のライヴで初めて聞いた際より練られ、より自身のものになった感のある「おちゃんせんすうす」は、ダンサブルなビートとドリーミーさの融合が耳を惹いた。また、アンコールの際に初披露された「おやすみ」は、ダイナミックスと中嶋の歌が映えるナンバー。3声のハーモニーが深みと広がりとドリーミーさを楽曲に寄与していた。どれも今後の彼らの幅や色を感じさせる楽曲ばかり。以降の作品化も楽しみだ。
また、この日はサプライズも用意されていた。後半戦への突入の際には、赤い公園のボーカリスト佐藤千明がゲストで登場。一緒に赤い公園の「のぞき穴」をカバーする。新世代ロックバンドの融合ということもあり、フロアの盛り上がりにも更なる油が。佐藤、中嶋のツインボーカルなんてそうそう見れない場面なので、なんだか得した気分だ。
ライヴが楽しくて仕方がなかったのだろう。ラスト前には、セットリストに無かった「高速爆裂パニエさん」が、中嶋の思いつきで突然プレイされる。同曲では、ヒロミがフロアのど真ん中まで赴き、そこで激しいベースプレイを展開。同曲の高速と激しさ、komaki♂の打ち出すブラストビートも手伝い、モーゼの十戒のごとく彼女のプレイスペースが空けられ、その周りではクラウドたちによる土下座しながらのヘッドバンキング、いわゆる「ドゲバン」も見られた。
この日の圧巻は、やはり本編ラストに向かう「爆裂パニエさん」「高速爆裂パニエさん」「99.974℃」「MATSURI」の盛り上がり4連発に尽きる。彼らの高いプレイヤビリティと激しさ、そして分かりやすいポップさや血沸き肉躍る楽曲のオンパレードとなった、このゾーンでは、お客さんも激しく呼応。おびただしい数のクラウドサーフが生じた。会場の大合唱で歌を成立させた「爆裂パニエさん」、一際激しく、会場を一気に沸点へと引き上げた「99.974℃」、本編ラストの「MATSURI」では、komaki♂のマスロック的ドラミングが高揚感を煽り、ひたすらアグレッシヴに楽器を弾き倒すフロント3人のメンバーの艶姿に会場中が阿鼻叫喚した。
アンコールを含め全20曲。いつもにない趣向を取り入れずとも、飽きさせず、中だるみさせず、あくまでも終始自分達らしさを炸裂させ続け、正味2時間近くのライヴを沸騰させ続けたtricot。
<やっぱりtricotのライヴは凄い!!>。それを更に吹聴したくなる、そんな一夜であった。
【取材・文 池田スカオ和宏】
【撮影 Ohagi】
ライヴ終了直後の達成感たっぷりの4人を熱写。
いやー、みんな"いいライヴした!!"って満足そうな顔をしています。
リリース情報
セットリスト
お友達と行く!沸騰ツアー2013〜梅雨〜 東京ワンマン
2013.6.9@渋谷CLUB QUATTRO
- おもてなし
- 消える
- 夢見がちな少女、舞い上がる、空へ
- 飛べ
- G.N.S
- ひと飲みで
- アナメイン
- POOL
- 初耳
- テレキネシス
- のぞき穴
- 3.14
- bitter
- おちゃんせんすぅす
- 爆裂パニエさん
- 高速爆裂パニエさん
- 99.974℃
- MATSURI
- おやすみ
- slow line
お知らせ
お友達と行く!沸騰ツアー2013〜梅雨〜
2013/06/29(土)高松DIME
2013/07/01(月)大阪JANUS
見放題2013
2013/07/06(土)心斎橋アメリカ村及び周辺14会場
“EViLS TOUR 2013″ 2 MAN SHOW
2013/07/12(金)札幌PENNY LANE24
GFB’13(つくばロックフェス)
2013/07/14(日)茨城県つくば市豊里ゆかりの森野外ステージ
FREEDOM NAGOYA’2013
2013/07/20(土)愛知県名古屋大高緑地公園特設ステージ
tricot×the coopeez presents 「夢見がちな少女vs肉食恐竜」
2013/07/31(水)京都MOJO
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013
2013/08/04(日)国営ひたち海浜公園
RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO
2013/08/16(金)石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ
Re:mix 2013
2013/08/24(土)名古屋CLUB DIAMOND HALL & APOLLO THEATER
未来へのスパイラルツアー2013
2013/09/22(日)熊本Django
2013/09/23(月・祝)大分CLUB SPOT
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。