THE NOVEMBERSの2作品レコ発ツアーファイナルのワンマンライヴをレポ
THE NOVEMBERS | 2013.07.12
『GIFT』と『Fourth wall』という2枚のEPを掲げたツアーのファイナルだ。恵比寿ガーデンホールは、都内有数のショッピングエリア内にあり、会場の天井は高く、ステージの間口が広く取られていて、非常にスタイリッシュな空間だ。なので通常、ロックバンドはあまり使わない。が、独自の美意識を持つTHE NOVEMBERSには、逆にピッタリ合っている。実際、この日のライブはそんな会場の雰囲気を活かして、実にTHE NOVEMBERSらしいオープニングを決めてくれたのだった。
開演前、会場にはミラーボールから幻想的な色彩がまき散らされている。最新EP『Fourth wall』の「dogma」からライブがスタートすると、ステージ前面に張られた紗幕に極彩色のカレイドスコープの模様が映し出される。その模様は色がにじんでいたりして、まるでロールシャッハ・テストのように人の横顔に見えたり、仏像に見えたりする。さらには紗幕を透かして演奏するメンバーがうっすら見える。あまりに刺激的なビジュアルに、自分がどこにいるのか分からなくなってしまい、かなりヤバい雰囲気だ。続く「primal」では、メンバーの背後から真っ赤な光が当てられ、紗幕には赤い光の中でメンバーの黒いシルエットがうごめく。エンディングではストロボが点滅し、ヤバい、ヤバい。3曲目「Figure 0」では、ピンクとパープルのレーザー光が、アンシンメトリーに会場を染める。通常のレーザーとは明らかに異なる使い方は、ある種、演劇的で、ガーデンホールのTHE NOVEMBERSにはよく似合っていた。
そんな演出によって“異界”に運ばれた耳に、突き刺さる音がまたヤバい。狙いをピンポイントに絞って冷静にシャウトする小林祐介、エッジーなトーンの高松浩史のベース、ケンゴマツモトのギターは色彩豊かに、吉木諒祐のドラムは太いビートで異空間をそのまま前に押し出す。
照明も音響も間違いなく現シーンのトップレベルだ。次々に繰り出される演出は、バンドの音楽のイメージを増幅させる。だから、THE NOVEMBERSの世界に目も耳もどっぷり浸かったオーディエンスは、瞳を大きく見開いて、ニコニコ楽しんでいる。ライブはそのまま上昇を続け、4曲目「瓦礫の上で」では、素晴らしく耽美的なツインギターを聴かせてくれた。
視覚的な演出が一段落したところで、耳は演奏に集中していく。凄かったのは「Reunion with Marr」から「Slogan」へのシークエンス。ダークな世界観を美しいメロディに乗せて堂々と打ち出す迫力は、まさに“チアノーゼ・ポップ”。青白い肌から漂い出す美の気配に、鳥肌が立つ。『GIFT』からの曲のクライマックスはここにあった。
一方、『Fourth wall』のピークは最終盤にあった。
「『GIFT』と『Fourth wall』という二つの作品のためのツアーを、5月からやってきました。このファイナルは唯一のワンマンで、特別なことを一緒に味わってもらえて光栄です。今回のテーマは、僕たちなりの”未来”です。それを象徴する曲を最後にやります」。
始まったのは、EP『Fourth wall』のラストに収められた組曲風の「Dream of Venus」と「children」。丁寧に積み上げられていくサウンドの力で、オーディエンスたちは幻想から抜け出し、リアルな幸福感に満たされていく。
THE NOVEMBERSは昨年、大好きなファッションブランド “LAD MUSICIAN”のショーにコラボ出演した際、ファッション、音楽、照明などの要素をトータルで考える姿勢に共鳴したという。このファイナルの前半は、そうした影響が強く表れたコンセプチュアルなショーだった。そして後半は、純粋にバンドのパフォーマンスのみで構成されるライブだった。どちらも今のTHE NOVEMBERSの実力と充実を物語る内容で、シーンで唯一の存在感を強くアピールしていた。同時に、それは閉鎖的なものではなく、音楽好きなリスナーに向けて開かれている点が特筆されるべきだろう。はっきり言って今、THE NOVEMBERSに似たバンドはない。似たようなバンドがひしめくJ-ROCKシーンに少し飽きているファンは、一度、THE NOVEMBERSを見てみるといい。
そうしてライブ後、楽屋に行くと、CHARAが「今度、小林くんとバンドやるのよぅ」と嬉しそうに話しかけてきた。CHARAもJ-POPシーンで唯一の世界観を持つアーティストだ。そんな斬新なジョイントも含めて、THE NOVEMBERSは今確実に、バンドとしてジャンプアップの季節を迎えている。本当にヤバいのは、これからだ。
【取材・文 平山雄一】
リリース情報
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セットリスト
“GIFT” and “Fourth wall” Release Tour “I’ll Be Your Mirror”
2013.6.29@恵比寿ガーデンホール
- dogma
- primal
- Figure 0
- 瓦礫の上で
- Harem
- Reunion with Marr
- Slogan
- ウユニの恋人
- philia
- GIFT
- Stay Away
- 永遠の複製
- ニールの灰に
- Fiedel
- Observer effect
- dysphoria
- 彼岸で散る青
- Dream of Venus
- children
- ウトムヌカラ
- Moire
お知らせ
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013
2013/08/03(土)国営ひたち海浜公園
UKFC on the Road 2013
2013/08/21(水)新木場STUDIO COAST
2013/08/22(木)新木場STUDIO COAST
RUSH BALL 15th
2013/09/01(日)泉大津フェニックス
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