きまりなんてお構いなし!200分にも及んだハナレグミとSo many tearsの混合ユニットライヴ!!
ハナレグミ, So many tears | 2013.07.24
ライブを観る前は、ハナレグミとSo many tearsがそれぞれ60分のライブをし、アンコールでセッションをする、いわゆる対バン形式のライブを想像していた。だが、そんなありきたりの発想はライブ開始から2曲目で早々に吹き飛ばされてしまった。
「ハナレグミ・So many tears のどこまでいくの180分」と題されたツアーは、東京スカパラダイスオーケストラ(以下 : スカパラ)&フィッシュマンズの茂木欣一(Ds)、スカパラ&LOSALIOS加藤隆志(Gt)、フィッシュマンズ&Polaris柏原譲(b)のによる3ピースの新バンドSo many tearsとハナレグミの共演に加え、スカパラの沖祐市(Key)がサポートとして参加した、新企画のプロジェクト。全国9カ所に渡ったツアーの最終日となる渋谷AXの舞台上には、サバンナの奥地を思わせる木々のセットの中、アンプの上には、広島カープのキャップやくまもん、くいだおれ人形になぜかジェームス・ブラウンやアルパカなど、全国各地で観衆の熱狂とともに獲得したであろう、おみやげものが並んでいた。
開演時間と同時に、独自の民族衣装のようなカラフルな衣装を身に纏った茂木、加藤、柏原、沖がステージに現れ、<この胸のリズムを信じて/歌うように歩きたい>という祈りにも似た願いが込められたフィッシュマンズの名曲「Walking in the rhythm」でいきなり濃密なグルーヴを練り上げた。続いて、加藤がスタンドに乗り上げて、SUPER BUTTER DOG「FUNKY ウーロン茶」のイントロを弾くと、観客は歓声をあげ、茂木のヴォーカルに合わせてコール&レスポンスを展開。ここで、茂木が「最高にソウルフルでファンキーなあの男を紹介するぜ!」と呼び込むと、ハナレグミのアルバム『あいのわ』のジャケット衣装を着た“謎の女”が、同じくジャケと同じポーズで現れ、マイケル・ジャクソン?ChoChoTRAIN?ボックスステップまで激しいダンスを見せた。客席の頭に?が浮かぶなか、「お前は誰だ!」と本物のハナレグミが登場。「今日は身体動かしてくんでよろしく!!」と絶叫。ようやく歌い出したと思ったのもつかの間、今度は前述の”謎の女性”と同じ衣装を着たレキシ(=池田貴史 SUPER BUTTER DOG、100s)が「お前、誰だよ! オレが本物だぜー」と言いながら入場。メンバーにも知らされてなかったサプライズの演出らしく、永積(ハナレグミ)は「リハにもいなかったじゃないかよー」と膝を落とし、戸惑いの顔を見せながらも池田と抱き合って喜んでいた。永積が「まだ2曲目が終わったとは思えないくらい、いろんなことが起きた」とつぶやいたように、まるでアンコールの大ラスのような展開のオープニングとなっていた。
このあとはもう、誰がどのバンドに所属し、どの曲がオリジナルで、どの曲がカバーなのかという杓子定規な枠組みを取り払った自由な演奏が続いた。加藤のギターによって扉が開き、外の景色が広がった「音タイム」には、この5人でしか鳴らせないアウトロがつき、「踊る人たち」では、スティーヴィー・ワンダー「Superstition」とのマッシュアップもみせた。さらに、ハナレグミの永積崇と加藤隆志の“Wタカシ”でマイケル・ジャクソン「Human Nature」を静かな愛情をこめて歌い、茂木がボーカルを務めるSo many tears楽曲「TIME」では、歌詞の世界観と同じ「時が流れても欠かせぬ仲間の大切さ」をステージ上で体現するかのようなプレイを披露してくれた。
ライブの中盤は、ハナレグミのメドレーコーナー。沖がジャジーな旋律を奏でると、いつの間にか客席の後方に移動していたハナレグミがバーの店長に扮し、「いらっしゃいませ」と声をかける。茂木が「マスター、ハイボール1つ」とリクエストすると、ハナレグミはシェイカーを降りながらステージに移動。柏原によるどファンクビートの「家族の風景?Funky Kitchen ver.?」に、「ちょっと待てー! そんな家あるか!! どんだけ黒いんだよ」とツッコミを入れつつ、「Jamaica Song」「愛にメロディ」から「オリビアを聴きながら」まで、ハッピーとしか言いようのないレゲエ/スカナンバーを観客全員で合唱。最高の演奏に合わせて身体を動かしながら、一緒に大声で歌う。この場面では、これ以上の幸せはないのではないかと感じた人も多かったはずだ。
クラシカルながらも日本の夏の風景を引き連れくる沖のソロピアノ曲「女神大橋」を経て、ハナレグミを迎えた「青いライオン」へ。ここでのハナレグミは、いままでに聴いたことのないほど真っすぐな歌声で、喜びと悲しみが入り交じった孤独感を浮き上がらせた。不思議なことだけれども、この日、最も、故・佐藤伸治(フィッシュマンズのボーカル)の面影を懐かしく感じた曲であった。ハナレグミの未音源の新曲「360°」、朗らかなカントリーロック「明日天気になれ」、暗闇に近い小さな灯りのなかで歌った「光と影」に続いて、茂木の夢の中に出てきた佐藤が歌ったという新曲「Amazing Melodies」で、本編の幕は閉じた。
アンコールではフィッシュマンズ「ナイトクルージング」を茂木&永積の2声で響かせ、レゲエというよりダブとなった「オハナレゲエ」ではバンドの音をとめて、全員で「ラララ」の大合唱。さらに、永積の「踊って帰ろうぜー!」という雄叫びを合図にはじまった、カーティス・メイフィールドの「MOVE ON UP」では、演奏の途中で突然、「以上をもちまして、本日の公演は終了となります」という終演アナウンスが流れるが、永積は「そんなの関係ないぜー!」と叫び、加藤とともに会場のセットとして置いてあったダルマをピック代わりにエレギを弾く。さらに、バンドの演奏と、再度終演を促すアナウンスが交差するなか、永積は、突如現れた、『ライオンキング』に登場しそうな崖にあがり、シンバよろしく、巨大なダルマを掲げ、観衆の声に合わせて、右目を入れた。そこに序盤に登場した”謎の女”とレキシの池田もステージに再乱入、カオティックなお祭り騒ぎのまま、ライブは終了。この時点で22時を14分過ぎており、渋谷区の条例で音が出せない状況の中、拡声器でお礼を述べ、ラジカセで退場BGMとなるオアシス「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」を流すと、またもや客席の完璧な大合唱となった。
終演後、筆者は、「この日のように、聴き慣れた音楽でも、やり方次第で、刺激的で新鮮なものに変えていく企画や別ユニットは、もっとあっていいのではないか」と感じた。バンドやメーカーの枠は関係ない。ただ、音楽が好きなもの同士が集まって、いろんなことを、いろんなタイミングでやろうぜ! というメッセージを受け取った思いがした。
【取材・文 永堀アツオ】
【撮影 橋本 塁】
リリース情報
ハナレグミ『だれそかれそ』
2013年05月22日
ビクターエンタテインメント
2.接吻 Kiss/ORIGINAL LOVE
3.中央線/THE BOOM
4.いっそ セレナーデ/井上陽水
5.空に星があるように/荒木一郎
6.オリビアを聴きながら/杏里
7.プカプカ/西岡恭蔵
8.いいじゃないの幸せならば/佐良直美
9.ウイスキーが、お好きでしょ/SAYURI
10.ラブリー/小沢健二
11.エイリアンズ/キリンジ
12.多摩蘭坂/RCサクセション
*カバー曲名/オリジナルアーティスト
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リリース情報
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セットリスト
ハナレグミ・So many tears のどこまでいくの180分
2013.7.3@SHIBUYA-AX
- Walking in the rhythm / FISHMANS
- FUNKYウーロン茶 / SUPER BUTTER DOG
- SAME OLD THING / The Meters
- 音タイム / ハナレグミ
- いかれたBaby / FISHMANS
- SUNSET / So many tears
- 踊る人たち / SUPER BUTTER DOG
- コミュニケーション・ブレイクダンス / SUPER BUTTER DOG
- HUMAN NATURE / Michael Jackson
- TIME / So many tears
- ハナレグミメドレー
0)ウイスキーが、お好きでしょ / ハナレグミ〜
1)家族の風景〜Funky Kitchen ver.〜 / ハナレグミ
2)Jamaica Song / ハナレグミ
3)愛にメロディ / ハナレグミ
4)Crazy Love / ハナレグミ
5)追憶のライラック / 東京スカパラダイスオーケストラ
6)オリビアを聴きながら / ハナレグミ - 女神大橋〜Venus Wing Bridge / 沖祐市
- 青いライオン〜Blue Lion / 沖祐市
- 360° / ハナレグミ(ASA)
- 明日天気になれ / ハナレグミ
- 光と影 / ハナレグミ
- Amazing Melodies / So many tears
- ナイトクルージング / FISHMANS
- オハナレゲエ / ohana
- MOVE ON UP / Curtis Mayfield
お知らせ
So many tears"LOVE&WANDER"発売記念ライブ
2013/09/11(水)東京・青山CAY
2013/09/18(水)大阪・心斎橋JANUS
ハナレグミツアー だれそかれそ
2013/09/07(土)BLUE LIVE 広島
2013/09/09(月)Zepp Nagoya
2013/09/10(火)Zepp Namba
2013/09/12(木)Zepp Fukuoka
2013/09/22(日)仙台市民会館 大ホール
2013/09/25(水)Zepp Tokyo
2013/09/26(木)Zepp Tokyo
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。