TK from 凛として時雨×amazarashiの対バンイベントをレポート!
TK from 凛として時雨、amazarashi | 2013.10.14
この2マンのインフォメーションを見た瞬間、それが刺激的なものになることは想像できた。たとえば「人間は生まれてくる時も、死ぬ時もひとりだ」と「君はひとりぼっちじゃない」は、相反するようだが、どちらも事実だ。しかしそれを共感の一歩手前で訝しみ、脅威や慄きを通過しながら受け手に新しい実感を発見させる。TKも秋田ひろむも間違いなくそういう資質の表現者だからだ。
先手はamazarashi。半透明のスクリーンにバンド名が映し出されると同時に起こる歓声に分け入るように、CDより少年性を感じさせる秋田の声が放たれる「ポエジー」。高い物語性を持つMVと拮抗・融合するように展開する「ジュブナイル」は、後半をバンドの生々しい演奏に託し、痛みを抱えながらも自分の表現に向かおうとするステージ上の“ジュブナイルたち”自身とファンを鼓舞するようだった。目下の新作『ねえママ あなたの言うとおり』のフレーズが登場する「性善説」では、中央にマリア像が映し出される中、次第に歌から強い口調の語りや演説にも似た熱を帯びてくる秋田のボーカルにおののきにも似た感覚が生まれ、演奏がフィニッシュするまでは、瞬きもできないような緊張感に静まり返る。この日はアルバムツアーと初の夏フェス出演も果たした後のライブハウスでのステージということもあってか、新作からは先の2曲のみの披露で、後半には早くも「新曲です」というこの日初めてのMCとともに11/20リリースのニューアルバム『あんたへ』からエクストリームな変拍子とラウドな音像の「匿名希望」が、映像ではその言葉を様々な文字の大きさや文字列、スピード感で展開。一転、ほのかなピンライトに映しだされた秋田がおもむろに口を開き、「ありがとうございます。ピアノの豊川(真奈美)と路上ライブをやっていた頃から、たぶんわいは自分が言われたいことを探してたんじゃないかと思います。次は『あんたへ』」と紹介されたその新曲は、頑張ってるあなたを笑うことなど誰にもできない(大意)といった、amazarashi史上最も率直な応援ソングで、しかもスクリーンには粗い手書きの文字が愚直なまでに演奏にシンクロし、逆に度肝を抜かれる。ラストの「美しき思い出」まで駆け抜けた10曲はamazarashiが今、新たな変化の季節を迎えていることを刻み込んでいた。
GOTH-TRADが重低音を轟かせるDJタイムを経て、登場とともに大歓声が上がったTK。エレキを肩にかけるが、弾き語りによる新曲であることに胸がざわつく。ディレイが光を拡散させるようなイメージの中、途中からピアノも加わり、2曲目はアコギに持ち替え、冷たいほどに澄んだ音色と鋭さを増したBOBO(Dr)と山口寛雄(B)のプレイが曲の純度を高めていく。前半、早くもトラップだらけのフロント3人のチェイスに息をのみ、アウトロに向けて肉体化したギターを絶叫とともに高い地平で爆発させた「Abnormal trick」で、限界越えを実感させ、フロアが一瞬息をのんだ“音”が聴こえるほどの緊張のあと、歓声と拍手が起こる。山口の低音弦が不穏なムードを醸すイントロダクションから、全楽器が時間差でチェイスする「phase to phrase」には、この編成の熟成と進化を実感し、そのことでTKのボーカルもさらに際立ってきたように思う。7曲終えたところで、「初めまして。TKと言います」と自己紹介したあと、今日2曲目の新曲「Fantastic Magic」が披露されたのだが、怒涛のスネア連打とブレイクというTKナンバーの中でも過去になかったAメロの展開がユニークだ。
TKソロを人力ダンスミュージックとか、非エレクトロなエレクトロフィールとか称するのはナンセンスな気もするが、彼らは決してアヴァンギャルドな音像を目指しているワケではない。無二のサウンドスケープとグルーヴとポップネスを生み出しているのだ。本編ラストは山口が、およそベースが放っているとは思えないトーンで空間を作り、どこか温かみさえある印象を残した「film A moment」で終了。今日もTKのテレキャスはまるで形而上のディレイが鳴っているようだった。おかしな表現だが、それぐらい現実のものかどうか判別できない音への拘りが成功したと言えるだろう。鳴り止まないアンコールに応えて、さらに「新曲をもう1曲作ってきたので」と、エレピの角のない音が新鮮なナンバーを披露。ラストは強迫的かつ鋭角なピアノが先導し、アンサンブルが錯綜しながら疾駆する「Shandy」。フィードバックノイズと真っ赤な照明にすべてがクラッシュしたような衝撃だけを残してメンバーは去っていった。会場を出ると、次回のバンドスタイルではないTKと小谷美紗子の2マンライブのフライヤーが掲出されていた。この日の1曲目はソロの究極のカタチへの前兆だったのかもしれない。
【取材・文:石角友香】
【撮影:河本悠貴】
リリース情報
リリース情報
【TK from 凛として時雨】flowering
2012年06月27日
SMAR
2. Abnormal trick
3. haze
4. phase to phrase
5. white silence (album version)
6. 12th laser
7. film A moment (album version)
8. daylily
9. fourth
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セットリスト
LIQUIDROOM 9th ANNIVERSARY presents“UNDER THE INFLUENCE”
2013.9.30@恵比寿LIQUIDROOM
amazarashi
- ポエジー
- 夏を待っていました
- ジュブナイル
- 性善説
- この街で生きている
- ラブソング
- 空っぽの空に潰される
- 匿名希望
- あんたへ
- 美しき思い出
TK from 凛として時雨
- 新曲
- flower
- Abnormal trick
- 12th laser
- phase to phrase
- haze
- Fantastic Magic
- film A moment
- 新曲
- Shandy
お知らせ
【TK】
December’s Calling
2013/12/22(日)赤坂BLITZ
【amazarashi】
amazarashi LIVE TOUR 2014「あんたへ」
2014/01/11日(土) 東京Zepp Tokyo
2014/01/18日(土) 愛知名古屋ダイアモンドホール
2014/01/19日(日) 福岡福岡イムズホール
2014/01/25日(土) 大阪Zepp Namba
2014/02/08日(土) 北海道札幌PENNY LANE24
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。