全国ツアー中の中田裕二。ツアー中盤、渋谷公会堂をレポート!
中田裕二 | 2013.11.29
25本のツアー“INTO THE GALAXY”の中盤、渋谷公会堂は今回のツアーの中で最注目の1本。バンド時代から“歌謡曲テイストのロック”を標榜してきた中田裕二にとって“ホールでのライブ”は大好物のひとつ。。ステージが広い渋公は、ショーの要素を取り入れたロックを表現したい中田にとって、自信作『アンビヴァレンスの功罪』を掲げたツアーの真価を問う場でもあるのだ。
そんな中田の気持ちを表わすように、渋公のステージには都会をイメージさせるアブストラクトなセットが組まれている。バック・メンバーと共に登場した中田は、アコースティック・ギターを抱えると、いきなり歌い始めた。一発で音程を決める、颯爽とした滑り出し。期待に胸をパンパンに膨らませたオーディエンスは、さっと中田の甘美な世界観に引き込まれる。実はこの日のライブは、曲の始まり方や繋ぎ方にいちいち工夫が凝らされていて、快適にライブを楽しむことができた。その典型がオープニングだった。それは中田が思い描く“歌謡ロックショー”のコンセプトから生まれた基本演出なのだ。
「4年ぶりの渋公です。あの頃に比べたら、似合ってると思います」と、中田は最初のMCで嬉しそうに言った。そう、ソロになってから最初の完成形と言うべき『アンビヴァレンスの功罪』をライブで表現するチャンスを迎えて、彼の心は美しく逸っている。
前半で気付いたのは、ドラムの音が大きいこと。特にハイハットに焦点を当てたサウンドの構成だ。それは中田のロックの中心を成す音楽的アイテムのひとつで、彼の歌を聴きながら体を揺らすオーディエンスの指標になる。アンサンブルもそれを中心に組まれている。さすがにツアー中盤だけあって、バック陣の息はピッタリ。レコーディング・メンバーを連れての旅が、本当にうまくいっていることが手に取るようにわかる。
バックをリードするのはキーボードの奥野真哉。中田の良き相棒だ。キーになるハイハットを叩くのは、ドラムの白根賢一。彼はハーモニー・ボーカルの要にもなっている。同じくハーモニー・サウンドの要のギターのカトウタロウは、ロングヘアでバンドのビジュアルのアクセントだ。ベースの真船勝博は、ハイハットと並んでグルーヴのキーマン。そして渋公のスペシャルゲストのパーカッション朝倉真司は、「言われてないから、オレだけ白い服、着てる」とボヤくことしきり。他のメンバーのコスチュームは黒で統一されている。そのリラックスしたボヤきぶりが、“座長・中田”を中心にしたメンバーの仲の良さを伝えてくれる。もちろんただの仲良しというわけではなく、音のアンサンブルの楽しさはそこから生まれている。そんな仲間を作った中田の喜びも、このツアーの核になっているのだ。その喜びがオーディエンスに伝わって、渋公は次第に中田の思い描く“大人のロックのユートピア”に変貌していく。たとえば「マイ・フェバリット」は、『アンビヴァレンスの功罪』に収録されているものよりビートがずっとパワフルになっていて、渋公全体をぐいぐいと牽引する。それがこの“仲良しライブバンド”の力なのだ。
イギリスの格調高いロックバンド“プロコルハルム”を彷彿とさせる堂々のバラード「プリズム」など、ライブの中盤はじっくり聴かせる曲が並ぶ。そして後半は待ってましたのロック三昧。中田の歌謡ロックの粋とも言える「MIDNIGHT FLYER」が、会場の熱をがっちり受けとめる。オーディエンスは、20代から40代の女性が中心で、ザクッと心をえぐるラブソングが好きなグッドリスナーたちだ。
アンコールには“渋公の中田”ならではのサプライズが用意されていて、オーディエンスは120%満足な表情で帰途についた。ツアー終盤へ向けて、きっと中田はシーンの中で独自のポジションを築いていくだろう。
【取材・文:平山雄一】
リリース情報
お知らせ
TOUR ’13 "INTO THE GALAXY"
2013/11/30(土) 横浜 Bay Hall
2013/12/01(日) 水戸 ライトハウス
2013/12/06(金) 福島 club SONIC iwaki
2013/12/08(日) HEAVEN’S ROCK Utsunomiya VJ-2
2013/12/14(土) 広島 ナミキジャンクション
2013/12/15(日) 浜松 Live House 窓枠
2013/12/17(火) 仙台 Rensa
rockin’on presents COUNTDOWN JAPAN 13/14 supported by Windows
2013/12月29(日)幕張メッセ国際展示場1〜8ホール、イベントホール
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。