熱気と人がギュウギュウに詰まったZepp Tokyo。それもそのはず。the pillowsの1年半ぶりのツアー『TOUR2013 LOSTMAN GO TO CITY』がファイナルを迎えるからだ。いつものように山中さわおが「オウイェ!」と叫ぶと、一曲目は『White Ash』!　99年リリースのアルバム『RUNNERS HIGH』からのナンバーだ。さっそくコブシがガツガツ上がる。続いても『RUNNERS HIGH』から『NO SELF CONTROLL』……リリース時期を見てもらえばわかるように、近年のライヴでは新鮮過ぎる流れ。久々のライヴという以上に、特別な予感がする。山中が「久しぶりじゃねえか、みんな元気?」と問い掛けると、フロアからは「さわおさん元気?」と男の子の声。すると山中は「元気有り余ってるよ!」と即答。その勢いで、『Hello,Welcome to Bubbletown’s Happy Zoo(instant show)』へ雪崩れ込んでいく。一曲一曲から、ヘッドフォンから聴こえる彼らの楽曲にすがっていた頃の気持ちや、ライヴの最前線で飛び跳ねていた頃の気持ちが、まざまざと蘇っていく。こういったセットリストだと、彼らが人生と寄り添うバンドであることを、改めて思い知らされる。

　かと思えば、最新型の彼らの楽しい試みも……。9月にリリースされたシングル『ハッピー・バースデー』のカップリング『都会のアリス』を演奏した際に、ミュージックビデオに参加していた、アリスとトランプマンに扮した二人のキッズダンサーが、キュートなダンスを披露したのだ。ほんわかと盛り上がったところで、山中が「(今回のツアーは)最近のツアーでは全くやっていない、隠れた名曲を織り交ぜている」と、コンセプトを説明。じゃあ、次は何が出てくるの!?というワクワクに応えるようにはじまったのは、2002年リリースのアルバム『Thank you,my twilight』に収録されていた珠玉のラヴソング『ウィノナ』!　さらには、「たくさん作ったんだけど、一番軽いのを」と山中は言っていたけれど、いやいや結構じーんと響いてくるよ?と思えた新曲『About A Rock’n’Roll Band』も飛び出す。その後も『FUN FUN FUN O.K』、『Crazy Sunshine』など、これまでのライヴに火を点けてきたナンバーが畳み掛けられ、驚きと発見と感動が入り混じった空気に満ちていった。

　そして、来年結成25周年を迎えるにあたり、トリヴュートアルバムがリリースされることが、改めて山中の口から語られた。そこからの『ハッピー・バースデー』の歌詞が、より染み入ってきたことは言わずもがなである。ラストはバスターズの歌『Ready Steady Go!』で、一体となって締め括られた。

　アンコールを求めるオーディエンスに「じゃあ、もうちょっとだけ遊んでやるよ!」という山中の一声と共に届けられたのは、後ろ向きな気持ちをぶっ放す『Blues Drive Monster』!　さらに『WAITING AT THE BUSSTOP』でフロアを揺らし、「来年はアニヴァーサリーイヤ―だから、普段やらない企画とかが続々と発表になる。金貯めて待ってろよ!」と山中が置き土産のような言葉を残して、ステージを降りた。

　客電が点いても、ダブルアンコールを求める声は全く収まらない。暫くして、再び4人が登場!　そしてはじまったのは『ハイブリッド レインボウ』。山中の「Can you feel?」の声は、いつも以上にエモーショナルに響いてきた。バンドの、そしてバスターズの、紆余曲折の日々に流れ続けてきた、大切な大切な曲。彼は最後にこんなことを言った。「24年もやっていれば、楽しいだけじゃないこともあった。でも、音楽とロックを信じることで乗り越えてこれた。誰にお礼を言っていいかわからないから、君たちに言うよ。ありがとう」――終演を告げるアナウンスが流れても、拍手はなかなか止まなかった。出来事を重ね、年齢を重ねた今も、力むほどに思いを込めて歌い鳴らす。これ以上に信頼できるロックバンドがいるだろうか?　ピロウズに出会えた幸せを、つくづく噛み締めた夜だった。

【取材･文：高橋美穂】