tricot、初の赤坂ブリッツワンマンで現メンバー4人による爆裂のラストライブ!
tricot | 2014.04.03
今日で、この4人のライブも見納めか…。
一抹の寂しさと今後の更なる飛躍への期待がないまぜになった心持ちで、終始ライヴを観ていた。
この「帰ってきたトリコさん」は、tricotのアジアツアー凱旋ライヴとして、東京と大阪で行われたもの。これはその東京会場のレポだ。
この日は新旧織り交ぜたセットリストだった。前日に幻の1stミニアルバム『爆裂トリコさん』が再発されたこともあり、同盤収録の曲や昔からの人気ナンバー、はたまた最新アルバム『T H E』からの曲やコンピ盤収録の曲、加えて新曲までもが飛び出した。言わば“オールタイムtricot”のセットリスト。この辺りからも、どこか一つの節目を感じた。
ライヴはアジアツアーの大盛況を伝えるドキュメント映像から始まった。アジア各所で熱烈な歓迎を受けた彼女たち。オフショットを交えて次々と現れるライブ映像。日本語楽曲なのにどの会場でもオーディエンスは好反応で、幾何学的ながらも、みんなが予めそれに馴染み、全身で応える光景に頼もしさを覚える。
そんな映像が終わると、楽屋口の4人の姿がステージ後方のスクリーンに映し出される。そこからステージへ向かう実況生中継の趣きだ。登場SEもなく4人がステージに現れる。各々フォーメーションに着くと、タイミングを計るように4人が向かい合い、緊張感の漂う会場と共に最初の一音を待つ。1曲目は「おやすみ」。意外だった。ここ最近のライヴでは必ずラストを飾ってきたこの曲が、この日は頭で飛び出してきたからだ。そこに、“ここから新しいtricotが始まる”、そんな脱皮への強い気持ちを感じる。続いて入った「POOL」では、一気にフロア前方の密度が上昇。ラテンポップのサビに合わせて会場がバウンスする。次の「飛べ」で会場は更にスパーク。ストロボによる残像で4人の勇姿が映える。続く「おもてなし」では、スリリングなポリリズムを堪能できた。ベースのヒロミ・ヒロヒロの5拍子のベースラインが場内を惹き込み、キダ モティフォのギターがフロアの焦燥感を煽っていく。
「久しぶりに緊張した」とはボーカル&ギターの中嶋イッキュウ。間髪置かずライヴに入る。キダのギターとヒロミのベースによる幾何学フレーズがユニゾンを見せた「bitter」に続いて、「赤坂ブリッツ、好きに踊れますか!?」という中嶋のひと煽りの後の「夢見がちな少女、舞い上がる、空へ」では、ヒロミもステージ前方に出て激しい2ステップにてベースをプレイ。キダはアクティブなアクションでオーディエンスを魅了しがら演奏も達者。そんなtricotの真骨頂が次々にアピールされる。
序盤の見どころは、「art sick」「タラッタラッタ」の女子共感必至ゾーンだった。切ない歌や想いが、深いエコーのなか会場中に響き渡ったそれらの曲の内、「art sick」では、微睡を誘う不思議な浮遊感が会場の隅々にまで広がり、「タラッタラッタ」では、分かって欲しい、知って欲しい、気づいて欲しいという乙女心が、中嶋の情感たっぷりの歌声と共に人々の胸を締めつけた。これが大きなステージならではのライティングともバッチリとシンクロ。天井の高さも手伝い、リバーブやエコーも歌に更なる深みを加えていた。
「帰ってきました!」と中嶋。アジアツアーの成果報告の後、「最大規模のワンマンライヴ、みなさんついてこれますか?」と続けて、キダが「日本は、そんなもんか!!」と煽りを加える。しかし次曲は「おちゃんせんすぅす」。女の子らしいスイートな3声のハーモニーが魅力の曲だ。楽曲はポリリズムで変拍子、妙なズレやストップ&ゴーで進行するのに、この甘さ。そのギャップを自然に感じさせてしまうのがtricotの凄いところだ。
中盤の見どころは、komaki♂のドラミングに尽きる。「ひと飲みで」では、難解な変拍子を叩き出すも、あえて幾何学的に映らないドラムワークを、「G.N.S」ではダイナミズムと激しさをスムーズ且つ物語性豊かに叩き分け、「C&C」では、それらとは対照的に歌を引き立たせることに徹していた。
新曲「CBG」は、ある種、komaki♂からの最後の置き土産だった。ハネる歌がありながらも、サビはストレートで伸びやか。ちょっとした上昇感には“この4人ならでは”を感じた。
後半最大の盛り上がりは、「スーパーサマー」「爆裂パニエさん」で見られた。中嶋による歌唱レクチャー後の会場の大合唱と、この日最大数のクラウドサーフを記録した「スーパーサマー」からは、一足早く夏フェスの大舞台に立っている彼女たちを想起させてくれたし、前述の『爆裂トリコさん』収録の超人気曲にして、今や多くの人のアンセムとなっている「爆裂パニエさん」が放たれると、一斉にハイボルテージに突入。ミラーボールも回る至福の時、この日最大の一体感が会場を包んでいった。
アンコールでは今度はキダが頭にライヴカメラを設置。そこから映るものがバックのスクリーンに映し出される実況生中継が(笑)。「99.974℃」では、同じ赤坂BLITZで1年前に撮られた同曲のMVの光景とオーバーラップ。「日本の祭りを見せたろか!!」の一声の後飛び込んだ「MATSURI」では、中嶋がメッセージを叫びながらハンドマイクで客席に飛び込む。負けじとキダも激しくヘッドバンキング。キダよ、首は大丈夫か(笑)?
ここでkomaki♂にマイクが渡る。卒業の言葉のように一言一言を噛みしめながら語るkomaki♂。「俺は泣かへんゾ! tricotも僕の音楽も止まらず進んでいくんで共に応援よろしく!」と締め、中嶋も、「いつかkomaki♂の組んだバンドと2マンしたいね」と、まだ見ぬ2バンドの共演に想いを馳せる。
ラストは「Laststep」。『爆裂トリコさん』でのアコースティック・バージョンもいいけど、やはりダイナミズムを感じさせる、このバンドサウンドの方が私は好みだ。曲を終えると4人は手を振り、ステージを去った。
この日から1週間後の3月27日、『帰ってきたトリコさん』の大阪編が行われ、この日を最後にkomaki♂は脱退した。
komaki♂、お疲れさま。そして、次に現れるであろう新生tricotよ、この礎を超えて更にワールドワイドに飛躍してくれ!
【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:Ohagi】
リリース情報
セットリスト
帰ってきたトリコさん
2014.3.20@赤坂BLITZ
- おやすみ
- POOL
- 飛べ
- おもてなし
- bitter
- 夢見がちな少女、舞い上がる、空へ
- アナメイン
- art sick
- タラッタラッタ
- おちゃんせんすぅす
- ひと飲みで
- G.N.S
- C&C
- Swimmer
- テレキネシス
- CBG(新曲)
- スーパーサマー
- 爆裂パニエさん
- slow line
- 99.974℃
- MATSURI
- Laststep
お知らせ
どっこいしょ!男気ワンマンツアー(&二瓶どん)
2014/05/25(日)高松DIME
2014/06/01(日)福岡DRUM SON
2014/06/03(火)広島ナミキジャンクション
2014/06/06(金)長野CLUB JUNK BOX
2014/06/07(土)新潟CLUB RIVERST
2014/06/13(金)札幌SPIRITUAL LOUNGE
2014/06/15(日)仙台PARKSQUARE
2014/06/20(金)京都MUSE
2014/06/24(火)名古屋CLUB UPSET
2014/06/27(金)沖縄Output
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。