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tricotの企画イベント、2days。その2日目を独占レポート!!

tricot | 2014.08.29

 今夏、幾つかのヨーロッパの大型フェスに出演。ほぼ初見のオーディエンスながら、 “Amazing!(信じられない!)”で“Awesome!(こんなの見たことがない!)”なインパクトを与えたtricot。帰国後の国内フェスでも、各会場前年を軽く上回る動員と熱狂を持って迎えられ、盛り上がりを見せた。そんな彼女たちが現体制になって初のワンマンライヴを行った。「帰ってきたトリコさん どっこいしょJAPAN day1 女MATSURI編」「帰ってきたトリコさん どっこいしょJAPAN day2男MATSURI編」と題された、女性限定、男性限定の2Daysとなった今回。場所は彼女たちが東京で初めて自主企画ライヴを行った下北沢SHELTERであった。
 昨秋に引き続き開催された前日の「女MATSURI編」では2時間半にも及ぶライヴを敢行。しかも、そのうち1時間は、MC、いや、ガールズトークだったという。かなりざっくばらんで、男子禁制をいいことに、普段のライヴ時には見られないぐらいのえげつないシーンやトークが炸裂したとか。

 今回初となる「男MATSURI」の響きに、博多山笠や岸和田だんじり的な、男性オンリーならではのエネルギーやぶつかり合い、汗や体臭にむせび返すライヴハウスの光景を想像し、会場に赴いた。
 会場はやはり通例とは違った雰囲気を擁していた。いつもとは違う熱気。加え、ギャルバンを観に来た男子の目線とも違うところも特徴的であった。それは決して見守るスタンスではなく、いわば、”うぉーっ、やったるで!!””かかってこいよ~!!”といった、好戦的なムードであった。

 会場が暗転し、勇ましいSEが流れる。ウォーっという地響きのような低い歓声。そんな中、メンバーが登場する。メンバー各人、髭と腕毛という、分かりやすい男性のメタファーをつけて現れたのだが、この2Daysはサッカーにかこつけたところもあり、ボーカル&ギターの中嶋イッキュウは助っ人外国人風のアフロのズラ、ギターのキダ モティフォはヘアバンドをつけている。
 「腕毛生やしてきたか~!!」「髭生やしてきたか~!!」とは、楽曲に入る前の中嶋の煽り。そこから4人によるバンドデモンストレーションが塊のようにフロアを強襲し、その中からベースのヒロミ・ヒロヒロによる歪んだベースラインが現れる。1曲目はWelcomeとばかりに「おもてなし」だ。とは言え、彼女たちのおもてなしは実にハード。いきなり無礼講と言わんばかりに、フロアが阿鼻叫喚の様相を見せる。続いて、サポートドラマーの山口美代子のハネ気味のラテンポップが会場のバウンスを生んだ「夢見がちな少女、舞い上がる、空へ」、そして、以前よりもスピード感溢れるアレンジとなり、ラストへの走り抜ける感じが、更にたまらなかった「飛べ」へと続いていく。
 「思ったほど、臭くないなぁ(笑)」とは中嶋。「昨日の女MATSURIよりもいい匂いさせていきましょう」と続けた。

 実は、前ドラマーのkomaki♂の脱退以降、新体制の彼女たちを観るのは、この日が初。当然、山口のドラミングも初めて見たのだが、やはりドラムが変わればアレンジも変わる。tricot内での彼女のドラムは、じつにタイトでシャープ。それでいて、これまではそんなに感じられなかったエモさや暴発力が、時に全開に、時に秘めた感じに上手く叩き分けられており、それがフロントの3人の魅力を更に引き出していたのも印象的であった。加え、以前に比べ、変拍子具合は減った感があるが、その分、一拍ズラしたり、増やしたり、ストップ&ゴーや幾何学的なキメの部分は、より増え、強力になった印象を受けた。ゆえにこの日は、今のtricotならではの楽曲のアレンジが各曲に見られた。「おやすみ」での1番と2番のブリッジはより複雑になり、「POOL」で魅せるtricotの次から次へと現れる真骨頂も難なくこなしていく。中でもエモさをより強く感じたのは、「art sick」であった。波にのまれるような寛容さを擁しながらも、押し殺した思いが堰を切ったように溢れ出るシーンを、ダイナミズムと激しさを上手く使い分け、混じり合わせながら、山口は演出していく。

 この日はサービスもあった。「アナメイン」では、「特別に男子バージョン」を、と、曲間に、L’Arck~en~Cielの「Honey」をプレイ。会場全員が同曲を大合唱し、不思議な一体感や連帯感を味わうことが出来た。ちなみに女MATSURIでは、ZONE「secret base ~君がくれたもの~」が織り交ぜられたそうだ。

 8月6日に新生tricotとして第1弾シングルを出したばかりの彼女たち。当然、このライヴでの披露も楽しみのひとつであった。「Break」では、ヒロミのスラップも混じり、ここから新しいtricotへの秘めた決意がリアルタイムで伺えたし、この日2回目の披露だという「after school」では、ジワジワとした演奏に、切ない女心が会場中に響き渡っていった。同曲では会場中が聴き入り、男子なのに女子以上のロマンティックな面が会場から窺えたのも面白かった。

 メンバー曰く「昨日は歓声も(声音が)高く、その高音に時々耳がキーンとなった」。それに対しこの日は、男性ホルモンたっぷりな、低く重い歓声や声援が都度ステージに塊となってブワッと襲い掛かっていく。そんな男子の大合唱を誘ったライヴ終盤。ラストスパート。「スーパーサマー」では、サビの部分はメンバーのレクチャーと共に大きなレスポンスが起こり、野郎の野太い、♪誤る 謝る 誤る 謝る 過ちだらけのスーパーサマー!♪ が炸裂。「爆裂パニエさん」での既にアンセム化しているAメロの大合唱も今まで以上に生命力や雄々しさを与えてくれた。そして最後は、「結局、男に生まれようが、女に生まれようが関係ない! せっかく人間に生まれたんだから、人生楽しんで行こう!!」との中嶋のアジテートから「99.974℃」にイン。同曲のサビでは、この日最大数のクラウドサーフを記録した。

 アンコールは2曲。「slow line」と「MATSURI」といった対照的な2曲が贈られた。ゆったりジワジワ波のように押しては返した「slow line」、そして、久々になし崩しがスパークした、ラストの「MATSURI」では、キダもギターを持ったまま客席中央でオーディエンスに支えられ、運ばれながらギターをプレイ。この夏の強烈な想い出の一つを、心にも身体にも焼きつけてくれた。

 ステージもフロアも、終始いつもにも増して実に男前なライヴが展開されたこの日。入り際に感じた、”うわっ、こんな男だらけの中で観るのかよ”といった鬱陶しさも、終演後には不思議と、何かを一緒に成し遂げ、闘い終えた朋友たちのような、妙な連帯感や友情めいたものを感じた。是非、またこのような企画をやってもらいたいものだ。もっともっと大きな会場で。

【取材・文 池田スカオ和宏】
【撮影 Ohagi(8/20)/佐藤祐介(8/21)】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル tricot

リリース情報

Break (期間限定生産盤)

Break (期間限定生産盤)

2014年08月06日

BAKURETSU RECORDS

1. Break 
2. after school

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セットリスト

帰ってきたトリコさん どっこいしょJAPAN day1 女MATSURI編
2014.8.20@下北沢SHELTER

  1. 夢見がちな少女、舞い上がる、空へ
  2. 飛べ
  3. おもてなし
  4. ひと飲みで
  5. おやすみ
  6. pool side
  7. POOL
  8. art sick
  9. G.N.S
  10. 10. おちゃんせんすうす
  11. アナメイン
    *曲間に、ZONE「secret base ?君がくれたもの?」をはさむメドレー。
  12. bitter
  13. CBG
  14. Break
  15. after school
  16. スーパーサマー
  17. 爆裂パニエさん
  18. 99.974℃
Encore
  1. slow line
  2. MATSURI

帰ってきたトリコさん どっこいしょJAPAN day2男MATSURI編
2014.8.21@下北沢SHELTER

  1. おもてなし
  2. 夢見がちな少女、舞い上がる、空へ
  3. 飛べ
  4. ひと飲みで
  5. おやすみ
  6. pool side
  7. POOL
  8. art sick
  9. G.N.S
  10. おちゃんせんすうす
  11. アナメイン
    *曲間に、L’Arc~en~Ciel「Honey」をはさむメドレー。
  12. bitter
  13. CBG
  14. Break
  15. after school
  16. スーパーサマー
  17. 爆裂パニエさん
  18. 18. 99.974℃
Encore
  1. slow line
  2. MATSURI

お知らせ

■ライブ情報

RUSH BALL 2014
2014/08/31(日)泉大津フェニックス

東京藝術大学 藝祭 2014
2014/09/06(土)東京藝術大学

KANSAI LOVERS
2014/09/13(土)大阪城音楽堂

One on One produced by Guitar Magazine
2014/09/17(水)代官山 UNIT

B-FLAT presents.”琵琶湖大沸騰2014″~B-FLAT 15th Anniversary Special Live~
2014/o9/25(木)滋賀B-FLAT

エレキ大浴場23 ~KYOTO MOJO 15th Anniversary~
2014/9/30(火)京都MOJO

Skream!×HMV Presents ”ROCKのススメ”
2014/10/09(木)渋谷WWW

MINAMI WHEEL 2014
2014/10/11(土)、12(日)、13(月祝)
出演日、出演会場等の詳細は後日発表致します。

ボロフェスタ 2014 大前夜祭
2014/10/24(金)京都KBSホール

第62回小金井祭『パスピエ×tricot LIVE』
2014/11/03(月・祝)法政大学小金井キャンパス 東館2階体育館

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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