GRAPEVINEとハルカトミユキの対バンイベントをレポート!
GRAPEVINE×ハルカトミユキ | 2014.09.03
GRAPEVINEとハルカトミユキによるツーマンライブがLIQUIDROOM ebisuにて開催された。LIQUIDROOM ebisuの開店10周年を記念して行われている対バンイベント。ハルカとミユキのヴォーカル&ギターのハルカは、FM802でオンエアされた「GRAPEVINE特集」にコメント出演するほどGRAPEVAIN好きを公言しているため、その噂を聞きつけたLIQUIDROOMが企画したのかと思いきや、ハルカがMCで「GRAPEVINEさん、今日はお呼びいただいて本当に光栄です。ありがとうございます」と語っていた。デビュー2年目の新星オルタナティヴフォークデュオが、デビュー17年目の先輩ロックバンドに迎え入れられる形で実現した対バンのようだが、“歌のことば”という点においては、正反対ともいえるライブパフォーマンスをみせたのが印象に残った。
先行はハルカトミユキ。彼女たちは先月もgeek sleep sheepの自主イベントに呼ばれ、同じステージに立っている。前回は2人だけの編成で、今回はバンドセットという違いはあるが、先月、「ずいぶん攻めてるな」と感じたセットリストは今月も同様で、メジャーファーストアルバム『シアノタイプ』に収録した楽曲は一切やらず、未発表の新曲と大学生だったインディーズ時代に作った曲を中心にした構成となっていた。1曲目は、ハルカの歌とミユキのピアノ演奏(この曲だけ座って弾いてる)のみでスタートし、重く暗く美しいバンドが加わった未発表曲「middle」。ハルカはワンピースの裾をぎゅっと掴み、頭を抱えながら<♪幸せは泣きたいくらい怖くて/今くらいがちょうどいい>と切々と訴えかけた。「いつも後悔ばかりしているような気がする」という語りから入った、ヘヴィーなロックナンバー「バッドエンドの続きを」、同じく「大人になって知ったものと、大人になって忘れてしまったもの……ただ、僕は君を守りたかった」という導入からはじまったフォークロック「未成年」。この日の演奏はキレキレで、歌声は時に涙声にも似た切実さが増しており、その眼差しには聴き手を一瞬で射抜く鋭さが宿っていた。
続く、インディーズ時代の楽曲「アパート」と未発表曲「ひとりごと」はふたりだけで演奏。「アパート」は、孤独と寂しさを持ち寄った“君”と“僕”の小さな世界を描き、「ひとりごと」では「もっとがむしゃらに生きたい。でも、どうしてもできない」という葛藤を歌った。そして、最新ミニアルバム『そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。』からのリード曲「その日がきたら」では、ポエトリーのあとに一瞬の静寂があった。破壊、蘇生、誕生という楽曲のテーマを再現したあと、ライブでは定番のパンクナンバー「ニュートンの林檎」に続き、最後に「あなたの声を聴かせて欲しいという大切な気持ちを込めた」という「青い夜更け」。アウトロにかけて混沌さが増していき、最後はミユキのキーボードが卓からずり落ち、ニブイ不協和音を会場に余韻として残したままハルカトミユキの出番は終わった。
後攻のGRAPEVINEは、サービスともいえるようなシングル曲と、ライブでもあまりやらないレアな楽曲を織りまぜた構成。ビクターへの移籍も発表され、新曲の披露も期待したが、ヴォーカル&ギターの田中は、「目下、新曲を作ろうとしている途中でございます。でも、今日は新曲はやりません。小出しにしないとあれなので、小出しスタートももうちょっと後でございます。今日は既存の曲で……まぁ、既存の曲ってゆうても、君らあんまり知らんやろうけど!」とうそぶき、観客を笑わせた。このMCからも分かるかもしれないが、1曲目のR&R「FLY」から、彼らはとてもリラックスしていて、とても無防備に見えた。ライブやロックを奏でることがすでに日常となっているような自然な佇まいで、そのステージでの立ち振る舞いは、当然ながらハルカトミユキとは対照的。そして、“歌のことば”だが、ハルカトミユキが普段はうまく言えない言葉を歌にのせ、バンド演奏もハルカの歌を前面に出そうと寄り添っていた一方で、GRAPEVAINEは、言葉の意味は完全に破壊。なにを言ってるのか聞き取れないフレーズも多かったが、それはまるで、言葉の意味がつく前、鼻歌で曲が生まれたときの純粋なメロディへと戻しているような作業にも感じた。また、歌声も楽器の1つとしてバンド内に溶け込み、タフなグルーブを奏でるための欠かせない要素の1つにもなっていた。
最大のヒットシングルで、哀愁漂うポップナンバー「光について」もヴォーカルは完全にブロークン。もはや音楽が“うた”の範疇を逸脱し、“感情のヴァイブレーション”と化したかのようだった。昨年リリースされた最新アルバム『愚かな者の語ること』に収録されていた「1977」と「なしくずしの歌」、そこから10年前の2003年にリリースされた『イデアの水槽』に収録されていた「豚の皿」を含む中盤では、架空のラブストーリーや、夏休みを舞台にした青春映画、デヴィッド・リンチの新作を見ているような多彩さで、音だけで物語と風景を引き連れてきた。そして、「リトル・ガール・トリートメント」「 (All the young)Yellow」「ミスフライハイ」というレアナンバーが並んだ後半は、シンプルでストレートながらもしっかりとした演奏力で聴き手の身体を自然と揺さぶった。ラストナンバー「超える」では歌メロの馬力を見せつけ、アンコールではビール缶を手に登場した亀井のドラムソロから心にひっかかるメロディの美しさが光る「羽根」、踊れるロック「アンチ・ハレルヤ」を経て、「光について」とならぶ名曲「スロウ」で幕を閉じたが、渋い色気を増した田中を含め、バンドメンバーが常に楽しそうにプレイしている姿も印象に残った。決して笑顔を見せずに、叫ぶこともないハルカトミユキとグルーヴにのってご機嫌なシャウトも飛び出したGRAPEVAINE。真剣に、敏感に物事を考えているという共通点はあるが、その方法論、出し方は、あらゆる面で対照的な2組の対バンであった。
【取材・文:永堀アツオ】
【撮影:Taku Fujii】
ビデオコメント
リリース情報
リリース情報
セットリスト
GRAPEVINE×ハルカトミユキ
LIQUIDROOM 10th ANNIVERSARY
2014.8.22@恵比寿LIQUIDROOM
<ハルカトミユキ>
- middle(未発表曲)
- バッドエンドの続きを(未発表曲)
- 未成年
- アパート
- ひとりごと(未発表曲)
- その日がきたら
- ニュートンの林檎
- 青い夜更け
<GRAPEVINE>
- FLY
- lamb
- 光について
- 1977
- 風待ち
- 豚の皿
- なしくずしの歌
- リトル・ガール・トリートメント
- (All the young)Yellow
- ミスフライハイ
- 超える
- 羽根
- アンチ・ハレルヤ
- スロウ
お知らせ
<GRAPEVINE>
GRAPEVINE club circuit2014
2014/10/23(木) 渋谷クラブクアトロ
2014/10/25(土) 新潟LOTS
2014/11/01(土) 広島クラブクアトロ
2014/11/03(月・祝) 福岡DRUM LOGOS
2014/11/07(金) 名古屋ダイアモンドホール
2014/11/09(日) なんばHatch
2014/11/14(金) 仙台darwin
2014/11/16(日) 札幌ペニーレーン24
2014/11/22(土) EX THEATER ROPPONGI
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
<ハルカトミユキ>
アコースティックライブ 『この夏の話』
2014/09/20(土)新宿シアターモリエール
2014年ヒトリエ東名阪2マン企画『オフタリサマデ漂流ツアー』
2014/10/03(金)下北沢GARDEN
ハルカトミユキ 『秋の東名阪ワンマンツアー』
2014/11/02(日)大阪 umeda AKASO
2014/11/03(月祝)名古屋 CLUB QUATTRO
2014/11/15(土)恵比寿 LIQUIDROOM
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
ハルカトミユキ公式モバイルサイト
「ハルミユtown」