2015年のtricotの前哨戦!?新曲も炸裂した「爆祭-BAKUSAI-vol.9」レポ
tricot | 2014.12.24
どのバンドも、まさに<真剣勝負>といった様相のライヴを展開してくれた。 この日の3バンドは、いつも以上に好戦的。そのベクトルはフロアはもちろん、対バンの他2バンドにも向けられているようにも映った。
tricotが「勝負」したいと思うアーティストに声をかけて行う対バン自主企画イベント「爆祭-BAKUSAI-」。2011年11月の大阪・十三ファンダンゴのVol.1にてスタートした同イベントのVol.8~10が今回は東名阪にて開催された。
名古屋ではthe band apartとDENIMS、東京ではストレイテナーとTheSpringSummer、大阪では後藤まりことbacho...。自身とはあえて違った音楽性且つシンパシーを持っているアーティストたちとの競演の体を見せた同イベント。名古屋では初、東京も2012年以来、ちょうど2年ぶりの開催となった。
私が行ったのは東京編。会場の渋谷クラブクアトロのステージ後方には、tricotのボーカル&ギターの中嶋イッキュウが描いたという、力強い浮世絵チックなバックドロップが会場ににらみを効かせていた。
一番手はTheSpringSummer。この日のトリを飾ったtricotのライヴ中、中嶋イッキュウ(ボーカル&ギター)が「何を聴いても音楽が面白く感じられない時期があって。その時、スプサマ(TheSpringSummer)を聴き、個人的に救われて、また音楽の面白さを取り戻せた。ずっと一緒に演りたかったけど、やっとそれが実現した」と語っていた、関西在住の4ピースバンドだ。エモさを擁した高いキーのボーカルと、青さの残った歌詞。それを感情を込めて歌う姿が極めて印象的だった彼ら。2本のギターから繰り出されるポストロック的なアプローチのユニゾンやアンサンブルも会場を魅了していく。
「いいライヴをして、次へとつなぐのが僕らの役目」とライヴ中に語っていた彼ら。それが文字通り<いいライヴ>であったことは、曲が進むごとに多数の初見者をステージへと前のめりさせていた光景からも伺えた。
続いての登場はストレイテナー。この日の彼らはちょっと攻め&ダンサブルなセットリストに思えた。前述の中嶋が「こんな小娘に手を貸してくれたストレイテナー。だけどライヴを観ていて、テナーの後にやるのはムチャクチャ嫌だった(笑)」と、これまた自身のライヴ中に語っていた通り、ダンサブルさやドライヴ感を用い、踊らせたり乗らせたりと、変幻自在にフロアをコントロールしていく。 「関西から2バンドが来たから、東京は俺らがお出迎えしなくちゃな」とは、ボーカル&ギター/キーボードのホリエ。この日の彼らはまさしく<迎撃>の趣きのセットリスト。とは言え、神々しいミディアムソング「冬の太陽」等も交え、初期からの代表曲「Melodic Storm」や会場中の”待ってました!”の歓声と大合唱がハイライトを彩った「From Noon Till Dawn」等、短い時間ながら盤石のセットリストで、tricotへとバトンを繋ぐ。
さぁ、いよいよtricotの出番だ。和太鼓を基調にした血沸き肉躍るSEが会場に鳴り渡る中、メンバーが登場。スタンバイと同時にガツンと会場中を奮わせるぐらいのデモンストレーション音を鳴り響かせる。
この日は主催ライヴだし、やはり1曲目は「おもてなし」だろうと予測していたのだが、意外にも「夢見がちな少女、舞い上がる、空へ」。いきなりの好戦スタイルに驚く。同曲のラテンポップな部分が会場を激しくバウンスさせる。中嶋のアジテートが会場を煽り、緊張感とその後、開放的感へと繋げていく。煽る中嶋にフロアも黙っちゃいない。その倍の激しい呼応がステージへと返されていく。間髪置かず入った「飛べ」では中嶋、ギターのキダ モティフォ、ベースのヒロミ・ヒロヒロのフロント3人によるハーモニーと、サビでの疾走感にライヴが更に加速していく。そして、ヒロミの3拍子 のベースをイントロに「おもてなし」に突入すると、キダのポリリズム交じりのギターが会場をパラレルな世界へと誘う。同曲ではブリッジの部分のライヴならではのアレンジにも注目。その分、作品とは違った新鮮さが呼び込まれる。
この日は珍しい曲も聴けた。「しちならべ」は彼女たちの女性の部分が現れるメローなナンバー。ライブではあまり聴いたことがなかった同曲が、激しさやロック然としたところだけではなく、しっかりと艶やかな部分も楽しませてくれた。また、曲のつなぎやイントロでも斬新さが伺えた。「pool side」の抒情的な出だしから一転。ラテンポップな「POOL」への突入や、山口美代子の長いドラムパートの後現れた「おやすみ」では、キメの多い展開と、その後にやってくる大らかさなど、会場は振り回されつつも、しっかりとした渾然さを味わえた。
「新曲を一発お見舞いします」との中嶋の言葉のあと飛び出した新曲「食卓」は、ボサノヴァをちょっと変形させたような、歌が前面に出たナンバー。歌に気を取られていると、グイッと身体ごと演奏に惹き込まれていく、その両極の同居がたまらない。ラストに向かうにつれ、流れていた川が激流へと変貌していき、そこに飲み込まれていくかのような楽曲だ。そして、ラストスパートゾーン、「爆裂パニエさん」「99.974℃」の2連発が、この日、最大の盛り上がりを見せる。「爆裂パニエさん」では相変わらずの大合唱を見せたし、サビのストレートさが気持ちよい「99.974℃」では、ダイバーが続出。沸点はとうに100度を超えているかのようであった。山口加入当初は、なかなか再現出来ない部分もあった「99.974℃」だが、今や彼女のドラミングは完全に楽曲とシンクロ。血肉化されている。スティックを短く持ち、手さばき多く、しかもダイナミックなアクションを以て叩く姿と、完全に間合いを把握したそのドラミングは、頭ではなく既に感覚や身体で楽曲を覚えているから出せるのだろう。
ラストは、2014年8月にリリースされた最新ナンバー「Break」。自らを破壊し、新生tricotに向かうべく密かな意思表示と新境地をはらんだ同曲が会場の隅々にまで染み渡っていく。合わせて客席頭上の巨大なミラーボールもまばゆい光をまき散らし、会場中をひと時の至福へと運んでいった。
アンコール。プレイの前に重大発表が幾つかあった。それらはどれも彼女たちのネクストレベルを宣言するかのようなトピックばかり。一つひとつ発表される度に期待値タップリの歓声が上がる。中でも結成した当初は2年でZEPPでワンマンをやることとしていた目標が4年目でようやく叶った、Zepp DiverCityでのライヴ敢行の報告の際には、一際嬉しそうな顔をのぞかせた。
アンコールの1曲目は新曲であった。「庭」と題された同曲は、とにかく色々な要素が詰め込まれたダンスナンバー。とは言え、一方的に踊らすというよりかは、共有感を誘い、ステージ/会場を交え一緒に踊りたくさせるもの。特に長いバースのサンバのリズムが現れると、分かりやすく乗りやすいビートも手伝い、初見ながら多くの人が一緒に踊る。ステージ上のメンバーも然り。山口の打ち出すビートに合わせ、メンバー各位、自身の楽器を置き、中嶋はマラカスを、ヒロミはカウベルを、キダに至ってはサンバダンス&ホイッスルを披露。会場と楽しさを共有していく。楽しさの共有…。そういえば、彼女たちのこのようなタイプの曲は初めて聴いたかもしれない…。そしてラストは「MATSURI」。例の如く、中嶋はモニターに上ったりフロアに突っ込んだり、キダも、ヒロミも、鬼気迫るようにアグレッシヴに暴れ、弾き倒す。対するフロアも阿鼻叫喚。4人が去った後のステージには、この日も、”凄い…”という空気感が長く残されていった。
2015年は、2月にニューシングル、3月にアルバム、4月には全国ツアーが控えている。
来年もtricotの爆進が色々な形で楽しめそうだ。
【取材・文:池田“スカオ”和宏】
【撮影:Ohagi】
リリース情報
セットリスト
爆祭-BAKUSAI-vol.10
2014.12.12@SHIBUYA CLUB QUATTRO
- 夢見がちな少女、舞い上がる、空へ
- 飛べ
- おもてなし
- アナメイン
- しちならべ
- おやすみ
- pool isde
- POOL
- 食卓
- 爆弾パニエさん
- 99.974°C
- Break
- 庭
- MATSURI
お知らせ
COUNTDOWN JAPAN 14/15
2014/12/29(月)幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール
マキシマム ザ ホルモン “MAGROSTIC FRONT~kin to gin no tsutsumi ni haitta shikakui tuna no yatsu saikin tabeteru?~”ツアー
2015/01/13(火)なんばHatch
Radio to Live Vol.2
2015/02/10(火)心斎橋Music Club JANUS
ジラフポット Head Held High Tour
2015/02/27(金)千葉LOOK
2015/02/28(土)郡山CLUB #9
Output 3rd ANNIVERSARY SPECIAL
2015/03/14(土)沖縄ミュージックタウン音市場
tricot ワンマン・ツアー
2015/04/03(金)名古屋・クラブクアトロ
2015/04/09(木)大阪・なんばHatch
2015/04/12(日)札幌・ベッシーホール
2015/04/18(土)東京・Zepp DiverCity
2015/04/25(土)広島・ナミキジャンクション
2015/04/26(日)福岡・LIVEHOUSE CB
※上記以外の詳細は後日発表となります
VIVA LA ROCK 2015
2015/05/03(日),04(月祝),05(火祝)さいたまスーパーアリーナ
※出演日未定
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。