THE ORAL CIGARETTES、フレデリック、LAMP IN TERRENという、昨今音楽シーンをにぎわせている個性派バンドが所属するMASH A&R。そのMASH A&Rが主催する初のイベント「MASHROOM 2015」が1月16日、恵比寿LIQUIDROOMで行われた。各バンドに共通するのは、それぞれがMASH A&Rが主催するオーディション（MASH FIGHT）を勝ち抜いているということ。それだけに、ファミリー・ムードも満載。会場では、各バンドがプロデュースしたオリジナルドリンクやフードが販売されたり、バンドメンバーの等身大パネルがロビーに設置されていたり、それぞれのメンバーによる新年抱負の書き初めが展示されたりと、開演前からお祭りのようなにぎわいだ。だが、ライブそのものは、ある意味3バンドのしのぎ合いとなる。イベントには慣れているはずの面々だが、この日はどう出てくるのだろうか――。

　一番手はLAMP IN TERREN。MASH FIGHT Vol.2でグランプリを受賞し、1月14日にアルバム『silver lining』でデビューしたばかりの3ピースバンドだ。透明感のあるSEからアルバム1曲目でもある「L-R」へ。Vo&Gの松本大が「遊ぼうぜ、リキッドルーム！」と観客に呼びかける。シンプルな編成ながら、繊細ながら深みのある松本の声と、メロとビートが心地よくからみあうサウンドで、どんどんペースをつかんでいく。「ゴールド・ルーズ」では、オーディエンスも手を挙げてバンドのパフォーマンスに反応。ラスト曲を前に松本は「楽しんでますか？　僕ら、逆に楽しませていただいてます！」と、コメント。トップバッターではあったが、むしろイベントの空気を楽しんでいるようだった。そして、彼らがシメの曲に選んだのは「緑閃光」。まさにバンド名を象徴するように、心に光が灯るような優しい曲で、オーディエンスを包み込んでくれた。

　2番手に登場したのはフレデリック。彼らはMASH FIGHTVol.1で特別賞を受賞した神戸出身の4人組バンド。双子の兄弟、三原健司（Vo&G）と三原康司（B&Cho）を中心に、ファンクや歌謡曲、ロックにポップス……一筋縄では語れないサウンドと、中毒性のある歌詞で人気上昇中だ。「SPAM生活」「ディスコプール」など、ダンサブルな楽曲で冒頭からノセまくり、瞬く間にフレデリックらしい摩訶不思議な空間へと塗りかえていく。さらに、ライブでも人気の「峠の幽霊」や「うわさのケムリの女の子」などが続々飛び出す。一方、三原健司が「2015年、新しい年なんで新しいことをしないとアカンと思って――新曲を持ってきました！」と、新曲をお披露目！　アップテンポのナンバーで、出来たてとは思えないくらいの観客の心を取り込んでいく。ラストは三原兄弟が異口同音に「踊れますか！」「踊りまくろうぜ！」とけしかけ、超ダンスチューン「オドループ」へ。会場をダンスフロア状態にして、にぎやかに締めくくった。

　続いては、いよいよこの日のトリ、THE ORAL CIGARETTESの出番である。メンバー登場と同時に手拍子が起こる。Vo&Gの山中拓也が「MASHROOM、準備出来てますか？　どうぞよろしく！　かかってこい！」と煽って「Mr.ファントム」へ。待ってましたとばかりに激しく反応するオーディエンスに、場内はフェスのような盛り上がりとなった。

　その後もぬかりないセットリストで進んで行く。「嫌い」「N.I.R.A」などは、特にライブでの熱狂度が高い曲達。まだ数曲しか演奏していないのだが、ライブ後半のような熱気だ（イベントゆえ、曲数的には後半になるわけだが……）。まだまだこんなもんじゃないとばかりに「俺らは初代グランプリなんで！　テレンとフレデリックには負けられませんから！」と山中が宣言して後半へ。ラストナンバーはメジャーデビューシングル「起死回生STORY」。やはりこの曲の破壊力はすさまじい。ラストはオーディエンスも一緒になってサビを大合唱。大団円で本編が終了した。

　そしてアンコールでは、メンバー同士の親密さを感じさせる光景が広がる。LAMP IN TERREN、フレデリック、THE ORAL CIGARETTESの順に各バンドが1曲ずつ持ち曲をメドレー形式で披露。THE ORAL CIGARETTESが大ラスでキラーチューン「大魔王参上」を演奏した時には、全バンドのメンバーがステージ上に現れ、観客と一緒に踊りまくってのフィナーレとなった。それぞれお互いをリスペクトしつつ、刺激し合うという関係性も見られて、見ている側も妙に元気をもらったイベントになった。それぞれの今年の活動も期待だが、MASH A&Rには今後もユニークなバンドの発掘を期待したい。そして、またこの「MASHROOM」でイキのいいバンドに出会うのが楽しみだ。

【取材・文：海江敦士】
【撮影：釘野孝宏】