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「後藤まりこを殺すのは誰?」――衝撃の赤坂ブリッツファイナル!

後藤まりこ | 2015.02.04

 アルバム『こわれた箱にりなっくす』は後藤まりこのこれまでのディスコグラフィーの中でも実験的な要素の大きい作品だった。アイドルシーンに果敢に飛び込んみライブを行なってきた経験も活かしながら、強烈な1対1感が持つ後藤まりこ独特の、ある種の“聴きにくさ”を払拭すべくアプローチした作品だったからだ。それがライブでは一体どんなふうに表現されるのか。「私のRe:booooot ワンマンツアー」、つまりは再起動と名付けられたそのツアーのファイナルへは、そんな想いを胸に会場へと足を運んだ。

 真ん中に立つ後藤まりこを、ぐるりと取り囲むように立つサポートメンバー。広いステージの中央だけを使ったタイトなフォーメーションでバンドが立つ。「後藤まりこです。よろしくお願いします」。ふわふわスカートを身に着けた後藤が凛とした口調で言うと、「触媒」からライブはスタートした。愛用の赤いギターを掻き鳴らした愛くるしい歌い出しから、それは次第にマイクに噛み付くような激しいパフォーマンスに変貌。「関東ローム層」ではハンドマイクで絶叫したかと思えば、アイドルポップ風の楽曲「れっつきるみ」ではポンポンを振りながら、うさぎと虎の被り物を着けたダンサーと一緒に踊った。出だしから『こわれた箱にりなっくす』からの楽曲が連発された。

 続いて、不規則な轟音が鳴り響いたのは『299792458』に収録の「ドローン」だった。しかし、「Hello! Everybody!!!」と声高に叫んでから、歌い出したのは『こわれた~』の曲「シンデレラタイム」。歪に共鳴するバンドサウンドとメロディ。履いていた白い靴を指先で色っぽくつまみながら、歌はいつの間にか「ドローン」になっていた。足元のボーカル・エフェクターをイジりながら自らの歌声を奇妙に歪ませ、会場を不穏な空気へと導く。苦痛と官能、解放、そして逃避……様々な感情を逆撫でする、あまりにも本能的なボーカルだった。さらに、ウィスパーボイスと絶叫とをごちゃまぜにした「Re:なくす」、まるで指揮者みたいに腕をふりなら歌う「すばらしい世界。」など、身体全部を使いながら、1曲ごとにくるくると雰囲気を変えていく。

 「“私のRe:booooot ツアー”という名前です。名古屋でも言ったことを言います」と、MCでは今回のツアーのタイトルを説明しようとした後藤。ところが、「そう。Tシャツに……心臓を入れてて……」まで説明したところで、「言いたいことがわからんくなったんで、考えてください」と、途中終了。それでも、「好き、殺したい、愛してる」で、《「あんたなんか死ねばいい」》と、愛憎入り乱れるラブソングを鮮烈な口調で《おしまいっ》まで歌い切ると、続きを語り出した。「これでブシューみたいにやる(サイリウムを薙ぎ払うように)。ブシュってやって、ザシュってやって、ドーンってやって、死ぬの。だから……で、リブートなの。切ったところからキラキラがいっぱい出てくるの。すっごい良いの。みんなに僕も切ってほしくて。死ぬの。で、生きるの。いいの、それで。脱皮みたいな感じ」と。もっと上手に喋る表現者なら別の言い方もあるだろうが、この拙い説明に「わかった!」と客席から声があがると、「わかってくれてありがとう」と後藤は嬉しそうに頷いた。

 しかし、ここで「これはボクの投身自殺です」と、かつてのミドリ解散を思わせる意味深は発言を口にすると、その言葉の意味をはかりかねるように会場はしんと静まり返る。茫然とするお客さんを置き去りにして、「正しい夜の過ごし方」では、《へい りすんとぅーざ》というフレーズにのせて、「あたしなんて」「愛したものとか…全部」と、断片的に言葉を投げかけていく。ラストは両手でマイクを包み込んで「あたしなんて!!」の絶唱。そのまま、ラストナンバー「スナメリ」では、ミラーボールがまわり、色とりどりの風船が舞うなか、「愛してます!愛してるー!!!」と叫びながら、悶えるように声を振り絞った。

 アンコール。「まりこコール」を受けて、再びステージに現れた後藤は、白いワンピースに裸足という身軽な衣装に変わっていた。ガーリーなポップソング「ゆうびんやさん」では、スカートの裾をもって舞うように歌う。さらに、続けて披露した「うーちゃん」ではステージに降りて、最前列のお客さん一人ひとりとハイタッチ。そして客席へダイブ。スカートが捲れ上がるのもお構いなしでお客さんの頭上を暴れるように泳いでいた。「寂しくなったらいつでも呼んで。手を伸ばしたらボクはすぐそばにおるから。生きているなかでボクを見つけて」「後藤まりこを殺すのは誰?」と何度も繰り返しながら、「あたしの衝動」。そして「I / O」へ。Input / outputを意味し、パソコンなどの“入/ 切スイッチ”の記号でもある“アイオー”を、《愛を》とかけて歌うこの曲をラストナンバーに選んだ後藤は、叩くようにギターを掻き鳴らし、時々バンドメンバーのほうを振り返りながら、全力で歌い上げた。

 ライブを終えて、『こわれた箱にりなっくす』のアルバムインタビューで、後藤まりこがこんなことを言っていたのを思い出した。「“愛してる”って誰でも言えるやないですか。でも“愛してる”って本来の意味をもって言う人と、意味を持って言わない人って、物理的には一緒やけど……その本質(の違い)に気づけてよかったなと思います。それが、偶像であり、虚像かもしれないとボクは思っているので」と。それでも、後藤まりこの「愛してる」はいつも意味をもっているはずだと言った私に、「わからないですよ? ボクはクソ嘘をついてるかもしれないんです」と笑っていた。だが少なくとも、この、赤坂ブリッツで何度も口にした「愛してる」は本物だった、と思うのだ。

【取材・文:秦 理絵】
【撮影:朝岡英輔】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル 後藤まりこ

リリース情報

こわれた箱にりなっくす(初回限定盤)[CD+DVD]

こわれた箱にりなっくす(初回限定盤)[CD+DVD]

2014年11月12日

キングレコード

[CD]
1. 触媒
2. Re:なくす
3. スナメリ
4. 好き、殺したい、愛してる
5. 関東ローム層
6. れっつきるみ
7. 正しい夜の過ごし方
8. シンデレラタイム
9. I / O

[DVD]
<ビデオクリップ>
・スナメリ
・スナメリ メイキング
<ライブ映像:渋谷duo MUSIC EXCHANGE公演>
・Re:なくす
・正しい夜の過ごし方
<ライブ映像:新宿LOFT公演>
・好き、殺したい、愛してる
・触媒

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お知らせ

■ライブ情報

Output 3rd ANNIVERSARY KICK OFF SPECIAL LIVE 「後藤まりこ × FLiP 2マンライブ」
2015年2月6日(金)沖縄Output

Sakurazaka ASYLUM 2015
2015/02/08(日)ROCK in OKINAWA

N’夙川BOYS「Do you like Rock n Roll !?」発売記念 何時でも何処でもバンドが見たい!5都市2マンミラクルパーティー!
2014/02/25(水)福岡 BEAT STATION

ガガガSP 全国行脚ツアー2015「ガガガを聴いたらコンニチワ!!」
2015/04/04(土)松本 ALEXC
2015/04/05(日)金沢Van Van V4

VIVA LA ROCK 2015
2015/05/03(日)、04(月)、05(火)さいたまスーパーアリーナ
※出演日は後日発表

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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