tricotワンマン@Zepp Divercity。中嶋(Vo,G)は言った。「tricotはみんなを裏切らない!!」
tricot | 2015.05.01
tricotが結成された際に掲げた目標の一つに“Zepp Tokyoのワンマン”があった。 多くのバンドが結成当時は、高い道標を持つ。しかし、多くは憧れや夢に近い。それらに比べ彼女たちの目標は、ある意味、ノルマと称してもいいほどの、バンドがもっと大きくなっていくための通過点だったに違いない。それは、この日のライヴを終えた後のメンバーの表情が物語っていた。
オリコン・インディーズチャート1位を獲得したニューアルバム『A N D』と共に回った今回のワンマンツアー。全国6公演の折り返し地点が、4月11日(土)Zepp DiverCityで行われた。ワンマンとしては自身最大規模の広さとキャパシティとなる。
場内が暗転すると、『A N D』バージョンの「ぱい~ん」のピアノ部分が流れ出す。いつもとは違ったエレガントさ漂う登場SEだ。後方からの白色ライトとスモークがメンバーのシルエットを形取る。緊張感が場内を包み、それを破るようにキダ モティフォのギターが鋭角に「ぱい~ん」のイントロを鳴り響かせる。前半2曲はニューアルバムからの曲だった。変拍子でしっとり始まりながらもサビのストレートさが気持ちいい「ぱい~ん」、クールさとスリリングさを味あわせてくれた「色の無い水槽」が会場をグイッとステージへと惹きつける。続いては「飛べ」「おもてなし」とライヴ定番曲が2連発。「おもてなし」では、ポリリズムなギターフレーズの妙と続いて飛び出す細かいビートに合わせて会場中がバウンスする。
前半のニューアルバムからの曲では「Noradrenaline」が印象的であった。サビのストレートな部分では無数のコブシが上がり、会場前方の密度がググッと上がる。新作全体から感じたストレートさや勢いを、ここではより体現させてくれた。
「アナメイン」からの3曲は会場中を浸らせ、歌や演奏の世界観へと惹き込んでいくものがあった。ゆったりとしたダイナミズムで会場を覆った「アナメイン」、寛容と繊細、そして切なさのブレンドも秀逸だった「ひと飲みで」、その叙情性と哀愁が会場全体を惹き込んでいった「artsick」が、広い会場の隅々にまで各楽曲の持つ世界観を染み渡らせていく。
いつもは歌い出しから入る「消える」もこの日はイントロつきであった。同曲でのサビのストレートさと解放感は、この日も健在で、会場を並走させる。そしてニューアルバム中、最もセクシーで女性的に映った「神戸ナンバー」では、会場のリクエストに応える形で ♪ 練馬ナンバー ♪ と、東京仕様に歌詞を変えて歌うサービスも現われた。
この日は、これまで以上にライティングも凝られていた。「E」では、ステージ後方のロゴの電飾がリズムに合わせて点滅。賑やかで派手な曲を更に華やかにしていく。サポートドラムの山口美代子のドラムが作り出すリズムに会場も跳ね、途中からのエモい暴発ドラミングが会場の熱気に更に油を注いだ。思い返せば、『A N D』は6人の違ったドラマーがそれぞれの曲を叩いていた。そして、その6人のドラミングの特異さが収録各曲の特色の一つを担っていたところもあった。しかし、この日のドラマーは山口ひとり。そこに一抹の不安もあったが、そんな憂心は不要。どれも彼女ならではのドラミングで頼もしささえ覚えた。
ライヴ中盤では、「食卓」を始め秘めたエモさを擁した曲が目立った。また、「CBG」や「おちゃんせんすぅす」では、フロント女性3人のふくよかなハーモニーやコーラスを交え、本来鋭角に響きそうな楽曲をマイルドさを交え伝える。さらに、アンセム「爆裂パニエさん」では、お約束の会場中からの大合唱が発生。この日最大の一体感を見せた。
MCではファンからの「私は普段普通の仕事をしているので、(中嶋が)歌っているのを見ると羨ましく思う」と、いう言葉を取り上げ、「それを聞いた時に、”普通の仕事って何だろう?”と考えた。どんな仕事をしてようが、自分からしたら全て特別な仕事。それは、恋愛でも好きなバンドでも同じこと。どんなことでも自分にとっては特別なんだから、それを心に何事も挑んで欲しい」(BY 中嶋)と、ラストのお祭り曲の3連発に入る。会場が一体となって熱い夏へと思いを馳せた「スーパーサマー」、恒例のサンバタイムも飛び出し、会場もステージも楽しそうに踊り、歓びを共有した「庭」、ラストの「99.974℃」では、無数のクラウドサーフが発生。この日の沸点を記録した。
アンコールは、これからのtricotを2曲で示してくれた。1曲はベースのヒロミ・ヒロヒロが作詞/作曲を手がけ、歌も担当した「ダイバー」。そのキュートで少女らしい歌声が描く歌世界に、みんなが思い思いに曲中へとダイブしていく。そしてラストは「Break」。新生tricotとして、これからも自分たちらしく、自分たちのペースと方法論で、これまでの殻を破り突き進んでいく、そんな秘めた思いが楽曲と共にエモく、会場中に響き渡っていく。彼女たちが、この4年半をかけて得たもの、失ったものを思い返すように、そして、これからそれらを取り戻さなくてはならない決意が、改めて歌と演奏で示された瞬間だった。
「Braek」に入る前のMC。中嶋がこれまでのtricotを振り返る。結成時の目標としていたこのステージに立つのに4年半かかったこと。tricotは凄い速さで遠回りしてきたバンドだと思っている。だけど、その分、誰にも見つけられない近道を見つけられると確信していることを語り、良い時も悪い時も味方でいてくれたみなさんを裏切ることはけっしてしないと力強く締めた。
ステージから見たフロアに広がる素晴らしい景色が、達成感と充実感を伴って、中嶋を饒舌にしたようだった。
結成時の目標であったステージに立ち、ライヴを大成功に収めたtricot。
しかし、次のステージはすぐそこで待っている。
海外からのオファーを受け、2度目の海外フェス出演、ツアーを行うtricot。世界に照準を合わせた次の目標を見入るその瞳に、次は何が映っているのか。とても興味深い。
【取材・文:池田“スカオ”和宏】
【撮影:Ohagi】
リリース情報
セットリスト
tricotのワクワク変拍子旅行 2015
2015.4.18@Zepp DiverCity
- ぱい~ん
- 色の無い水槽
- 飛べ
- おもてなし
- Noradrenaline
- 走れ
- アナメイン
- ひと飲みで
- artsick
- 消える
- 神戸ナンバー
- E
- pool side
- POOL
- CBGv
- 食卓
- おちゃんせんすぅす
- 爆裂パニエさん
- おやすみ
- slow line
- スーパーサマー
- 庭
- 99.974℃
- ダイバー
- Break
お知らせ
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2015/05/04(月祝)さいたまスーパーアリーナ
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2015/05/05(火祝)幕張海浜公園 JAPAN JAM BEACH 特設会場
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2015/05/06(水祝)新潟・見附Arcadia
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2015/05/11(月)下北沢SHELTER
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2015/05/12(火)東京・TSUTAYA O-nest
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BOOM BOOM SATELLITES「FRONT CHAPTER Vol.4」
2015/05/13(水)名古屋CLUB QUATTRO
2015/05/14(木)梅田CLUB QUATTRO
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04 Limited Sazabys 「CAVU TOUR 2015」
2015/06/19(金)HEAVEN’S ROCK Utsunomiya
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2015/06/21(日)大阪城音楽堂
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