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PIZZA OF DEATH主催のSATANIC CARNIVAL’15、幕張メッセで主張したライヴバンドの存在意義。

SATANIC CARNIVAL | 2015.07.07

【SATAN STAGE】
OVER ARM THROW / ROTTENGRAFFTY / KEMURI / coldrain / MONGOL800 /
Fear, and Loathing in Las Vegas / Ken Yokoyama / 10-FEET / FACT

【EVIL STAGE】
SHIMA(オープニングアクト) / CRYSTAL LAKE / BACKLIFT / BUZZ THE BEARS /
WANIMA / HAWAIIAN6 / RADIOTS / G-FREAK FACTORY / locofrank / 怒髪天 / The BONEZ /
04 Limited Sazabys / GOOD4NOTHING / SHANK


 PIZZA OF DEATH RECORDSが主催する大型ライブイベント『SATANIC CARNIVAL』が今年(2015年)も千葉・幕張メッセにて開催された。
 普段の大型イベントやフェスにつきものである、モッシュ、クラウドサーフ、ダイブ禁止の解除や、屋内の大会場にありがちなフロアに設置される数多の柵やブロック分けが排除され、「自由に楽しんで欲しい」と言わんばかりのスタイルが特徴的であった。
 用意された「SATAN STAGE」「EVIL STAGE」の2ステージには、昨年(2014年)を上回る24バンドが出演。歌やサウンドに乗せた、それぞれの主張やアティテュードを各々のスタイルで放ち合った。

 SATAN STAGEでのROTTENGRAFFTYは、ドライヴ感溢れる「STAY REAL」からスタート。1曲目から会場全体に呼応を起こす。ミクスチャーと疾走感を融合させた「THIS WORLD」、コール&レスポンスで会場を温め、ラガや土着性をそのビートに交えた「Bubble Bobble Bowl」と、通称「古都(From 京都)のドブネズミ」が放つ、様々なミクスチャーロックと、チェイス感溢れる次から次へと交互に放たれるツインボーカルが会場の火に油を注いでいく。かと思えば、スカの裏打ちを交えた「世界の終わり」では哀愁性を、「銀色スターリー」では歌謡性に疾走感をミクスチャーさせた彼らの魅力の一つを立て続けに放射。後半に入ると、EDMをブレンドさせた「D.A.N.C.E.」、お馴染みの「金色グラフティー」では、ファストな部分でフロアに巨大なモッシュピットを生み出し、乗らせ、踊らせ、まことに彼ららしい40分間を堪能させてくれた。

 一方、EVIL STAGEでは、広い会場やステージにも関わらず、あえてライヴハウスでのイベントのような趣きが印象深かった。9時間で14のバンドが登場し、各バンドの持ち時間は30分前後、ステージ展開10分程度というライブハウス同様のタイトなリレーションながら、どのバンドもしっかりと自分たちをアピール。中でも独特の"軽さ"で終始満場を盛り上げ、ノラせたWANIMAが記憶に残っている。

 彼らのステージは、日本語で歌われる楽曲もさることながら、楽曲にどこかファニーさやコミカルさを交えており、親しみやすい。爽快さと愉快さを同時に楽しむことが出来るのだ。ファスト2ビートで駆け抜けた「Hey Lady」、ポップな歌声と親しみやすさ全開の「雨あがり」、3声のハーモニーやコーラスも冴えた「つづくもの」が会場を盛り上げていく。また、特徴的だったのがドラムのスネア。通例このような大会場では、スネアに深いリバーヴを効かせ、なるべくヘッドも重目に張るものだが、彼らはそんなことおかまいなし。いつものステージ同様、ピンと張った軽めのスネアが、”あえてこの場所でも変わらずにそのスタイルを貫く”、そんな姿勢を感じた。そして、「エッチな新曲を持ってきました」と、男女のベッドの上での行為を彷彿とさせる8月発売のシングルから「いいから」もいち早く披露。ラテンポップも交えた部分では、会場も新曲に関わらず、バウンスを起こし、ラストの「1106」では、手紙風のメローなナンバーに会場中も合わせて大合唱を起こした。

 このイベントの魅力は、パンクに影響を受け、自らもその精神性やアティテュードを込めて、自己の音を放っているバンドばかりが一堂に介すところ。この日も、メロディック、スカパンク、ラウドロック、スクリーモ、ピコリーモ、ミクスチャー、ポストハードコア、R&E(ロック&演歌)…等々のバンドが出演した。また、会場に集まったキッズの趣向も様々。FACTとKEMURIと、Ken YokoyamaのTシャツを着た3人組がFear, and Loathing in Las Vegasで踊りまくっている瞬間を見た際には、何かこのイベントの達成された形が垣間見れた気がした。

 中でもラウドロックとカテゴライズされるcoldrainとFear, and Loathing in Las Vegasの際には、それを強く感じた。この日の出演バンドの音楽性のバランス的にも、やや劣勢ではないかという見方をしていたこのジャンル。とは言え、そんなことお構いなしに、どのバンドも自分たちの音楽性をいつもと変わらない自らの方法論で伝え切ってくれたのが頼もしかった。特にcoldrainは、いつものステージ同様の様式美や世界観をそのまま放射。そこにプライドと、”絶対に理解してもらえる!!”というステージとフロアとの信頼関係を見て取れた。メタリックで重厚ながらも、そこを突き抜けたサビの部分では格別な開放感を味あわせてくれた「Aware And Awake」、ヨーロッパ的ゴシックにエレクトロを加味した「To Be Alive」、静と動を使い分け、そこに哀愁さをまぶした「Evolve」と、立て続けに自らの世界観をぶつけていく。ツインペダルによる地響きのようなドラムが、なおさら激しさに輪をかけ、巨大なサークルピットを作った「Inside Of Me」、気高さとダイナミズム、永遠性を味あわせてくれた「The War Is On」が会場中の大合唱を生んでいく。

 意外だったのは、Ken Yokoyamaの登場時間だった。PIZZA OF DEATHの主催イベントであるから当然、トリを予想していたのだが、意外にもトリから3番目に登場。それは、”これはPizza主催のイベントだけど、自分たちもいち出演者としてステージを楽しむ”。そんなスタンスや意志表示のように感じた。「(このイベントの)悪役、黒幕のKen Yokoyama、やらせていただきます」と、ジョークたっぷりな一言から入った彼ら。そんな彼らはパンクロックの粋(いき)なところ、そして、この音楽性だからこそ真摯に伝えられるメッセージやアティテュードをストレートに包み隠さず、歌やMCに乗せて放った。疾走感と共にライヴを走り出させた「Punk Rock Dream」では、途中ハンドマイクになるも、そのマイクをフロアに投げ入れ、代わりに会場が大合唱。みんなが誇らしげに両腕を上げ、一緒に歌っている光景を作り上げる。ステージ最前方までせり出し弾き歌った「Ten Years From Now」、メタリックなギターリフと2ビートの疾走感、他のメンバーによるコーラスも力強かった「Your Safe Rock」、そして、新曲「I Won’t Turn Off My Radio」では、ギターを最近の愛器(グレッチ社の通称ホワイトファルコン)に持ち替えプレイ。ノスタルジックで切ない、それでいて強い信念のこもった歌が放たれる。「This Is Your land」の際には、あえて日の丸を掲げ、その日の丸を羽織りプレイした横山。合わせてフロアのあちらこちらから日の丸が掲げられる。そこには憂國といった趣きは一切なく、むしろ日の丸が描かれた私や会場、そして日本国中への応援旗のようにも映った。

 会場の力強い呼応のレスポンスの中歌われた「Save Us」、「一度始めたことをかんたんにヤメれやしねぇよな。ずっと続けて行こうぜ!!」と、このフェスや自己のアクションを鼓舞してくれるかのようなKen Bandのテーマとも言える「Let The Beat Carry On」、マイクをフロアに投げ入れて会場で大合唱。ことさらアンセムのように誇らしく気高く歌われた「Believer」、持ち時間を超えてもお構いなし、”その主張をきっちりと伝え切ることの方が大切だ!!”と言わんばかりに鳴らされ、歌われたラストの「Ricky Punks III」と、まるで会場中が自分たちの歌を歌われているかのように大合唱していた光景が今も印象深い。

 続く10-FEETは、<彼らならでは>をあえて気負わず、親しみやすさで伝えていく。キャッチ―でパーティなナンバーでいきなり会場中に一体感を作り上げた「4REST」、初期からの代表曲「RIVER」では、ラガを交え、歌に込められた想いを広い会場の隅々にまで広がらせていく。ファンキーな要素とグルーヴィーさを用いた「2%」では、そう思うも束の間、途中の激走部分では巨大なモッシュピットが会場の至るところに出現した。
 そして、ここからのMC部が実に彼ららしかった。大会場ならではのタオルを投げウェーブを起こした後、「Pizza Of Deathから特別に特殊効果がプレゼントされたから」と注釈。「それを一番いいところで使うから」とボーカル&ギターのTAKUMAが伝えるも、その直後、トリガー役だったKoichi(Dr)がそのボタンをプッシュ。銀テープが爆音と共に会場中に放たれる。やってくれた(笑)。そこからはまさに彼らの独壇場。ラップやラガマフィンを交えた歌とサビでの解放感が会場全体を並走させた「Freedom」、「その向こうへ」ではサビの部分を会場中が大合唱。ステージライトも手伝い、神々しい光が会場中を包んだ。「幾つになっても少年の心を持ってていいんだ」と会場中のキッズに勇気と確信を与えた「蜃気楼」、優しい気持ちを、その歌と共に会場中に広げていった「goes on」と、数々の力をフロアに与え、彼らはステージを去った。

 トリは今年年末で解散するFACTが務めた。EVIL STAGEも既に終了し、会場の全オーディエンスがSATAN STAGEに集結する。ライティング、VJ、そして選曲共に圧巻のステージを展開した彼ら。ニューアルバム『KTHEAT』からの楽曲を始め、自身のライヴでの人気曲が連発される。また、終始ビジョンに現われる「FACT」のロゴが、まるで、”その目にこの俺たちの勇姿を焼き付け、このバンド名を刻み込め!!”とでも言っているようでもあった。

 多少の気負いや広いステージならではのパフォーマンス、この広さだからこそのライティングやステージングを魅せてくれた各バンド。とは言えどのバンドも、あくまでもライヴバンド的スタンスをあえて体現していたようにも映った。多くのバンドが、<こういった大きなところもいいけど、俺たちはライヴハウス出身のバンド。次は俺たちのホームグラウンドで会おう>。そんなことも楽曲に混じり、放たれているように思えた。さぁ、みんな、次は是非、彼らの待つライヴハウスで楽しんでくれ!この日と負けず劣らずのステージを各バンド、繰り広げてくれるだろうから。

【取材・文:池田スカオ和宏】

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セットリスト

SATANIC CARNIVAL’15 presented by PIZZA OF DEATH RECORDS
2015.6.20@幕張メッセ 国際展示場9-11ホール


■ROTTENGRAFFTY
  1. STAY REAL
  2. THIS WORLD
  3. Bubble Bobble Bowl
  4. 世界の終わり
  5. 銀色スターリー
  6. D.A.N.C.E.
  7. 金色グラフティー

■WANIMA
  1. Hey Lady
  2. 雨あがり
  3. つづくもの
  4. いいから
  5. 昨日の歌
  6. BIG UP
  7. 1106

■coldrain
  1. Aware And Awake
  2. To Be Alive
  3. Evolve
  4. No Escape
  5. Inside Of Me
  6. The War Is On
  7. Six Feet Under
  8. The Revelation

■Ken Yokoyama
  1. Punk Rock Dream
  2. Ten Years From Now
  3. Your Safe Rock
  4. I Won’t Turn Off My Radio
  5. WALK
  6. This is Your land
  7. Save Us
  8. Let The Beat Carry On
  9. Believer
  10. Ricky Punks III

■10-FEET
  1. 4REST
  2. RIVER
  3. 2%
  4. 1sec.
  5. Freedom
  6. STONE COLD BREAK
  7. VIBES BY VIBES
  8. その向こうへ
  9. 蜃気楼
  10. goes on

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