YEN TOWN BAND、amazarashiらが出演、「LIVE FOR THE NEXT」東京公演をレポート!
YEN TOWN BAND | 2015.11.04
「FMラジオを次の世代にもつなげたい」という想いのもと、全国のFM5局(東京J-WAVE、名古屋ZIP FM、大阪FM802、福岡cross fm、北海道FM NORTH WAVE)が結成するJFLによる共同企画「FOR THE NEXT」。今年で3回目となるこのイベントの東京公演がZepp DiveCityで行われた。まずはオーディションで選出された次世代を担うニューカマー、flower in the vasementがオープニングアクトを飾ると、1組目のamazarashiが登場した。
何の予兆もなく、イントロもなく、いきなり秋田ひろむ(Vo・G)が早口でまくしたてる「後期衝動」でステージは始まった。豊川真奈美(Key)が奏でる流麗なピアノの前奏が興奮を駆り立てる「季節は次々死んでいく」では、紗幕に中国語で綴った歌詞が映り、鮮烈なインパクトを与える。ステージ前面に紗幕を設置して、映像やタイポグラフィーを映し出し、その後ろでバンドが生々しい演奏を繰り広げるamazarashiのステージ。それを初めて目撃するお客さんも多いであろうフロアからは、その独特の世界観にザワザワとどよめきが起こった。自身の半生を剥き出しの言葉で綴った「名前」から、ステージに灯した5つの炎が怪しい光を放ったラストナンバー「カルマ」へ。少し意外な選曲だったが、この曲の歌詞には、《ラジオのパーソナリティ》が印象的に登場する。あくまで憶測だが、ラジオ局が想いを込めて主催するイベントのなかで、この曲を選んだこと。そこにMCでほとんど喋ることのないバンドが伝えたかった、何か特別なメッセージがあるような気がした。
2組目はこの日のライブが5年ぶりのステージとなるLily Chou-Chouだ。2001年に公開された岩井俊二監督の映画『リリイ・シュシュのすべて』に登場する架空のシンガーソングライターから生まれた音楽ユニット。小林武史(Key・G)と名越由貴夫(G)がステージに姿を現し、最後に登場したSalyu(Vo)がステージ中央に置かれたイスに腰を下ろして、そっと足を組んだ。1曲目は「アラベスク」。小林がギターを、名越はギターを弓で弾くという変則的なフォーメーションのなか、静謐でいて激しくもある、Salyuの唯一無二の歌声が混沌の世界を生み出していく。5年前に配信でリリースされた「エーテル」から、歌詞はなくSalyuの声が、言葉よりも雄弁に感情を掻き立てる「回復する傷」へ。それは、わかりやすさ、親しみやすさという意味でのポップミュージックとは絶対的に異なるが、誰もが心に抱く闇と光をありありと映し出すがゆえに、必然としてそこにある音楽だった。ラストは全編英語詞で紡ぐ「グライド」。最後まで、Lily Chou-Chouのボーカルとして、独特の佇まいを見せていたSalyuは「ありがとう」と、一言だけ残してステージをあとにした。
残された小林と名越はそのまま演奏を続けた。そこに村田シゲ(B)、吉木諒祐(Dr / THE NOVEMBERS)、平岡恵子(Cho)が加ると、曲調が変わった。いよいよYEN TOWN BANDの出番だ。「Sunday Park」のイントロがはじまると、Charaが大きな歓声を受けてステージに現れた。絞り出すようなウィスパーボイスが淡いメロディをなぞっていく。「Mama’s alright」では、「みんなの声を聴かせてくれる?」と、オーディエンスに問いかけて、一緒にひとつの音楽を作っていくChara。「グリコちゃんって言われれば、「はい」って感じなの」。そう、映画『スワロウテイル』の劇中に登場するバンドYEN TOWN BANDのボーカリストはCharaではなく、グリコなのだ。すかさず客席からは「グリコ―!」と声が飛んだ。「現実の世界に私たち出てきたわ」と、さらりと言ったが、実に19年ぶりステージ。アコースティックギターと共に歌った「小さな手のひら」や、フランク・シナトラのカバー「My Way」など、1996年にリリースされた唯一にして名盤『MONTAGE』の収録8曲を余すところなく全て披露していく。さらに素晴しかったのは、今回バンドの新たな楽曲をいくつか制作した小林が、なかでも「Charaが良いって言ってくれた曲」と紹介した「EL」というナンバー。寂しげでシリアスなサウンドに、ほのかに優しさを滲ませたそれは、まさに稀代の音楽プロデューサー小林武史ここにありという1曲だった。そしてラストは焦らすように一息ついてから、「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」へ。キーボードの伴奏と共にしっとりとCharaが歌い出すと、穏やかなバンドサウンドがその歌声にそっと寄り添う。Charaとして、この楽曲が披露される場面は何度か見てきたが、これがYEN TOWN BANDの「Swallowtail Butterfly」か。歌と演奏がひとつに溶け合う、名演だった。
「アンコールあるんですね?」と、鳴りやまない歓声を受けて改めてステージに現れたChara。もちろん残されているのは、今回のJFLによる企画のためにYEN TOWN BANDが19年ぶりの書き下ろした新曲「アイノネ」だ。ズンズンとフロアに響く力強いビートにのせて、《アイノネ アイノネ》と繰り返すメロディ。鮮やかに転調するサウンド。集まった全ての人たちをここではないどこかへと導いてくれるその祝祭の音楽は、YEN TOWN BANDが2015年に復活した意味をまざまざと感じさせてくれるものだった。
【取材・文:秦理絵】
【撮影:上飯坂一】
リリース情報
アイノネ(初回限定盤)[2CD]
2015年12月02日
ユニバーサルミュージック
2.ainone 2XXX
3.アイノネ (instrumental)
4.ainone 2XXX (instrumental DUB MIX)
セットリスト
JFL presents LIVE FOR THE NEXT
supported by ELECOM
2015.10.22@Zepp Tokyo
■amazarashi
- 後期衝動
- 季節は次々死んでいく
- 空っぽの空に潰される
- 名前
- カルマ
- アラベスク
- My Memory
- エーテル
- 回復する傷
- グライド
- Sunday Park
- Mama’s alright
- 上海 ベイベ
- 小さな手のひら
- May Way
- EL(新曲)
- She don’t care
- してよ してよ
- Swallowtail Butterfly~あいのうた~
- アイノネ
■Lily Chou-Chou
■YEN TOWN BAND
お知らせ
「JFL presents LIVE FOR THE NEXT supported by ELECOM」での各アーティストのパフォーマンスは、JFL各局で放送の特別番組にてON AIR!
「JFL SPECIAL ELECOM FOR THE NEXT 2015 ~NEXT GENERATION~」
放送日:11月23日(月・祝)
※各局のオンエア時間など詳しくは、
http://www.forthenext.jp/ へ。