ファンキー加藤 2015年最後のワンマン「I LIVE YOU 2015 in 仙台」ライブレポ
ファンキー加藤 | 2015.12.16
会場内に入った観客をまず出迎えたのは、ファンキー加藤セレクトによる「冬に関する曲」。大型スクリーンでは、彼が初主演を務め、2016年初夏に公開される予定の映画『サブイボマスク』の予告編が流れていた。そして開演時間が迫り、学ラン姿のスタッフ2人のリードで行われた恒例の『ファンキー応援団体操』。会場中の人々が身体を動かして身体をほぐしつつ、和やかな一体感を醸し出していた。
ステージの屋根に飾られていた大きな三日月形のオブジェ。伊達政宗の兜を思わせるその物体が光を放ち、一気に音量が高まったSE。ステージを覆う紗幕の向こう側でスタンバイしている3人のシルエットが揺れた。やがて幕が勢いよく落下。ライブメンバーの田中隼人(Key)、THE BEAT GARDENのMASATO(Cho)、そしてセンターにはファンキー加藤が立ち、雄々しく右腕を掲げていた。「いくぞ、仙台!」、客席に向かって呼びかけ、1曲目「輝け」がスタート。ステージ上を勢いよく動き周り、全力で歌声を響かせる加藤の姿を目の当たりにして、観客も負けないくらいのパワフルさで大合唱。掲げられた無数のカトライト(手首に巻いて着用するオリジナルグッズのサイリウム)の光が揺れるのが美しかった。
「FLY」と「ヒーロー」も歌った後に迎えた最初のインターバル。喋りだそうとしながらも、なかなか言葉を発しない……というフェイントプレイで笑わせた後、ついに話し始めた加藤。「各地から東北に集まってくれて本当にありがとう。最高の1日にしたいのですが、ついてこられますか? 行けるか仙台? 2015年ラストスパート。今、この瞬間から始めようぜ!」、そして歌い始めた「リスタート」。「跳べ!」と促され、客席にいる約9千人が一斉にジャンプする様が壮観。続いて突入した「まわせ!」は、会場全体で掲げられたタオルが勢いよく回転。ライブ序盤とは思えないすさまじい盛り上がり方であった。
「終わらない未来」「僕らの詩」「太陽」を経て、再びMCタイム。2013年3月のFUNKY MONKEY BABYSのライブ以来、久しぶりに宮城セキスイハイムアリーナに戻って来られた感慨を滲ませ、スタンドエリアにいる観客に「スタンド!」と元気よく呼びかける一方、アリーナエリアはわざと無視する……という通称「アリーナいじり」を加藤はいつものように繰り広げた。「俺、前にここでライブをした時も、アリーナいじりやってるはず(笑)」、照れくさそうに笑顔を浮かべた彼は、とても楽しそう。映画の撮影のために体重を7、8㎏落としたことにより、動きが軽いと語る表情が明るかった。
サポートメンバーを観客に紹介した後、今年の9月にコボスタ宮城で行った始球式についても加藤は語った。5月に仙台サンプラザホールでライブをした際のMCで「始球式をやりたいって東北楽天ゴールデンイーグルスの偉い人に伝えといて」と言ったところ、本当に実現したのだという。「もともと野球少年だから、始球式は夢だったの。みんなが叶えてくれました、ありがとう! 当日はミニライブをやったんだけど、「まわせ!」でテンションが上がって、間奏の時、ダイヤモンドを1周しちゃった(笑)」。全速力で走ったため息が上がってしまい、間奏明けで歌えなくなってしまった……というエピソードが微笑ましかった。そして、ここで話は予想外の展開へ。「また来シーズン、始球式をやりたいと思ってるんだけど、今日、答えをもらっちゃおうかと」と言い、客席で観ていた東北楽天ゴールデンイーグルスの立花球団社長と松井稼頭央選手に「またやらせてもらっていいですか?」と突然問いかけた加藤。両腕を使って大きな「○」のサインを作った2人を、人々の歓喜の喝采が包んだ。ファンモン時代に、当時、東北楽天ゴールデンイーグルスに所属していた田中将大選手が『あとひとつ』のジャケット写真に登場するなど、同球団と加藤の縁は深い。東北エリアと加藤の間にある心温まる繋がりを感じさせる一場面であった。
「新曲を持ってきました。まだリリースは、決まってないけど」、後半戦は「急性ラブコール中毒 part.3」からスタート。振り付けが盛り込まれていたのだが、初披露ながらもみるみる内に観客も一緒に踊り始めていた。続いて「恋の片道切符」と「CHANGE」も歌った後、酸素吸入をしながら身体を休めた加藤。そんな彼に向かって「加藤さん! 頑張れ~!」という声援が届けられる。やがて、体力を取り戻すと、加藤は皆に向かって語りかけた。「2004年にFUNKY MONKEY BABYSを結成してすぐにツアーをやらせてもらったのが東北です。当時は自分で精いっぱい。自分のために歌ってて。でも、自分たちの音楽を必要としてくれる人が少しずつ増えて、“誰かのために歌う”ということに気づくようになりました。震災が起こって音楽の無力さを突き付けられたけど、また音楽の力を信じられるようになりました。そして、誰かのために歌って、支えてきたつもりだったけど、俺自身が支えられてると、ソロになって気づきました。みんなのために歌いたいという気持ちがあると同時に、自分のために歌うということも思い出してやっていこうかと」。
じっくりと言葉を選びながら想いを伝えた彼は、さらに話を続けた。「この会場はお互いを励まし、応援し合い、愛し合えるところ。どうか支えてください。その分、歌います。どうか肯定してください、僕の音楽を。その分、みんなの人生を肯定します」。そして歌い始めた「つながるから」。目を潤ませながら耳を傾ける観客の表情が、時折スクリーンに映し出される。大きな感動の輪が広がっていくのを感じた。
9千人の両掌が天へ向かって伸ばされた「あとひとつ」。華麗なEDMサウンドが会場全体をダンスフロアと化した「MUSIC MAGIC」。「大切なあなたに歌います!」という言葉を添えて届けられた「希望の唄」……立て続けに歌った後、暫くの間、息を整えた加藤。そして、「2015年も2016年も最高の1年だよ。歌え!」と呼びかけてスタートさせた「ちっぽけな勇気」。巻き起こった大合唱が、とにかくものすごい。全速力でステージ上を走り回って歌う加藤の姿は、並々ならないエネルギーを放っていた。
本編のラストを飾ったのは「My VOICE」。曲の途中で観客の大合唱を噛みしめていた時、加藤は実に嬉しそうだった。そして、お辞儀をして去っていった彼とサポートメンバーを追うように激しい手拍子が起こり、アンコールへ。3人はアリーナ席の後方から登場。まず放たれたのは「アワービート~Say Joy~Good Show」、お色気系ナンバーの3連発。ショルダーキーボードをプレイする田中、背負った牛乳瓶型タンクから白いスモークを発射するMASATO、ハイテンションに歌う加藤は、観客を煽ってパレードしながらサブステージへと向かった。そんな華々しい盛り上りを経て「大切」。サブステージをぐるりと囲む全方位の観客に向かって、歌うのは久しぶりだと言うこの曲が心をこめて届けられた。
一旦、観客の前から姿を消した加藤。するとメインステージのスクリーンに昭和のカラオケ風の映像が流れた。肩パッドの入った紫色のダブルスーツを着た加藤と、色っぽい女性が繰り広げるラブストーリーの最新作……始まったのはもちろん「紫陽花」。歌謡曲風のサウンドが鳴り響く中、悩まし気に身体を揺らして歌い上げられる。「ひどいよ、このPV(笑)。いつまでやるの?」、歌い終えた後、呆れ気味にボヤいていたが、本人もノリノリでこの曲を楽しんでいるのが伝わってきた。
ライブの感想をサポートメンバーと語り合った加藤。次の『I LIVE YOU』が2016年4月16日、愛知・日本ガイシホールで行われることも発表され、観客は大いに沸いていた。そして、「みんなをワクワクさせるように突っ走ってくので。人生単位のエンタテインメントを楽しんで頂ければと思ってます。2016年もよろしく!」と言い、ラストに披露された「悲しみなんて笑い飛ばせ」。手にしたタオルを激しく振り上げながら共に歌う人々の表情がまぶしい。その姿を眺めながら、加藤も爽やかに笑顔を輝かせていた。
サポートメンバーの2人とハグを交わして送り出した後、加藤はマイクを通さない生声でメッセージを届けた。「集まってくれた1人1人にたくさんの幸せが訪れることを願ってます。2015年最後のワンマンライブがここで、ほんとに良かった。この日のことは一生忘れません。次、また会えるまで、死なない程度に頑張ろう(笑)。以上、ファンキー加藤でした!」、最後の力を振り絞って叫んだ彼に向かって送られた大きな歓声。2016年のファンキー加藤とファンたちが、ますます楽しい空間を作り上げることを確信させられるエンディングであった。
【取材・文:田中 大】
【撮影:堂園博之】
リリース情報
セットリスト
I LIVE YOU 2015 in 仙台
2015.11.28@宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
- 輝け
- FLY
- ヒーロー
- リスタート
- まわせ!
- 終わらない未来
- 僕らの詩
- 太陽
- 急性ラブコール中毒 part.3
- 恋の片道切符
- CHANGE
- つながるから
- あとひとつ
- MUSIC MAGIC
- 希望の唄
- ちっぽけな勇気
- My VOICE
- アワービート~Say Joy~Good Show
- 大切
- 紫陽花
- 悲しみなんて笑い飛ばせ
お知らせ
Fm yokohama Thanks! 30th. Anniversary More Music More Live 2015~ Fヨコフレンズ~
2015/12/19(土)横浜アリーナ
I LIVE YOU 2016 in 名古屋
2016/04/16(土)日本ガイシホール
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。