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従来のアカペラグループのイメージを覆すJARNZΩ史上最大規模のワンマンライブ

JARNZΩ | 2015.12.28

 日本のアカペラグループと聞いてまず多くの人の頭に浮かぶのはゴスペラーズだろう。いまやブームを超えて普遍的な人気を誇る彼らの存在をのぞけば、現在のアカペラシーンはそれほど活発とは言えない。一方で、大学のサークルや趣味のレベルでアカペラを楽しむ人たちは多く、その人気はいまだ根強い部分もある。そんなアカペラシーンに、いま風穴を開けてやろうと息巻く連中がいる。北海道発の6人組グループ。JARNZΩ(じゃーんず)だ。

 メンバーにとって過去最大となる会場=O-EASTでのワンマンライブをJARNZΩが発表したのは今年3月のことだった。それからこの日まで6人は100本以上のライブを行ない、その集大成のライブに向けて試練の日々を過ごしてきたのだ。

 ライブは幕が降りたまま6人の声だけが会場に響きわたる「Fly again」からスタートした。音を出すのは人間の声のみ。多くの楽曲でメインボーカルを務めるC.ChanΩをはじめ、HIDEΩ 、SEIYAΩ、ATSUSHIΩの3人もコーラスやメインを次々に交代して、楽器で言うところのギターにあたるフレーズを歌ったりと、フレキシブルにパートが入れ替わっていく。「ready?」「サミダレナミダ」といったロックなナンバーで重要な役割を果たしたのはボイスパーカッションのTOSHIΩとボイスベースのKEIΩ。ふたりが発する躍動感のあるビートは、JARNZΩが従来のアカペラグループのイメージを覆す大きな特徴だ。

 そんなロックでエネルギッシュなナンバーを立て続けに披露した序盤。ポジティヴなメッセージを詰め込んだ最新シングル「徨星」では、サビの《Shine!》のフレーズでフロアのお客さんが一斉にひとさし指をつきあげて飛び跳ねた。早くも会場が一体感に包まれると、「この日を迎えるまで本当は不安だった。でもこの景色を見たら、正直どうでもよくなった!」と、熱い口調で語りかけたC.ChanΩ。続いては、「バラードのメドレーをお届けします。いわゆる泣き曲です」と、SEIYAΩがしっとりとしたムードを作ったところで、歌い出したのは、バラードどころか、ヨーデルヨーデル♪でお馴染みの「ようかい体操第一」だった。まんまと引っかかったフロアは大爆笑。そこからメンバーが目まぐるしく立ち位置を変えながら、大黒摩季の「あなただけ見つめてる」や西城秀樹の「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」など誰もが知るJ-POPナンバーを披露するメドレーに会場は大きな盛り上がりを見せた。

 ふたつ目のメドレーは洋楽編。60~80年代のソウル/ファンク/ロックナンバーを中心とした名曲の数々はメンバーのルーツミュージックを知る手がかりにもなる。Bill Haleyの「Rock Around the Clock」は根っからのロックヴォーカリストであるC.ChanΩの雰囲気にぴったりだったし、Wild Cherryの「Play That Funky Music」はHIDEΩ、The Zombies の「Time Of The Season 」はATSUSHIΩと、それぞれの楽曲に合う声質のメンバーがメインヴォーカルをとる構成は、それぞれの歌い手の個性を鮮明に浮き彫りにする。全20曲をノンストップで繋ぐ10分以上にもおよぶメドレー。それは6人がまるでアスリートのような研ぎ澄まされた集中力で繰り広げたスリリングなショーだった。

 MCでは、C.ChanΩがメンバーへの感謝の気持ちを伝えると、「辛いことがあってもこの6人なら大丈夫だと思います。これからも歌い続けたいという願いを込めて」と言って、丁寧に歌い出した「Singer」が素晴らしかった。《ひとりでもいい 聴いてくれるなら 君のために》。そのフレーズは自分たちの存在をひとりでも多くの人に知ってもらうために、全国のストリートでひたすら歌い続けるJARNZΩ にもぴったり。歌い終えて客席から長い拍手が贈られると、6人は深く頭をさげてそれを受け止めていた。

 ラストナンバーは思い切りポジティヴなメッセージが詰まったポップソング「笑ってしまえ!」。ふだんは楽曲を支えるポジションのリズム隊TOSHIΩやKEIΩも含めて全員が交互にメインヴォーカルをとり、ひたすら繰り返すのは《笑ってしまえ!泣くのはいやだ!》という底抜けに明るいメッセージだった。アンコールではマイクを通さずに直接自分たちの声だけで歌いたいと、ATSUSHIΩがメインヴォーカルをとったバラード曲「いつもいつまでも」が披露された。しんと静まり返って耳をこらす会場。そこで届けられた歌は音量こそ小さいものの、熱く真摯な想いが込められた渾身の歌だった。

 人間の声だけでビートを刻み、美しいハーモニーを描きながら、ジャンルを縦断して様々な音楽を奏でる。そんなアカペラの面白さを教えてくれるのがJARNZΩだ。「みんなの想像を超えるようなJARNZΩになりたい」、ライブ中にSEIYAΩは言った。JARNZΩがこの先のステージに進むには、アカペラに興味のない人たちをも巻き込みながら広がっていく必要があるだろう。決して簡単なことではない。だが、アカペラの無限の可能性を強く信じる6人は、ここから道なき道を切り拓いてゆく。

【取材・文:秦理絵】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル JARNZΩ

リリース情報

徨星/LEAP

徨星/LEAP

2015年10月14日

AGASTAR RECORDS

1. 徨星
2. LEAP

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お知らせ

■ライブ情報

常総上等肉祭(冬の陣)
2016/01/17(日)茨城県常総市 市民の広場(観覧無料)
出演:健太康太 / SEITA / SOONERS / JARNZΩ

Yokohama O-SITE 1st Anniversary
2016/01/30(土)Yokohama O-SITE
出演:JARNZΩ/篠原美也子/GOOD LOVIN’/森広隆/アルケミスト/岡田茜/中里学/Sinon/サンドクロック/成本真衣子/中山哲太

Snowdrop
2016/02/02(火)TSUTAYA O-WEST
出演:JARNZΩ/ビアンコネロ /西郷葉介 /and more!!

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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