6人組アカペラグループJARNZΩが描く、アカペラの未来

JARNZΩ | 2015.10.14

 かつて一大ブームを巻き起こした『ハモネプ』の2008年優勝グループである6人組アカペラバンドJARNZΩ(じゃーんず)が、ひそかに熱い注目を集めている。10月14日にリリースされた、彼らの両A面シングル『徨星 / LEAP』は、アカペラにロックの要素を取り入れた、これまでのアカペラのイメージを覆す作品だ。4人の豊かなハーモニーに合わせて、スネアのリズムが軽やかに鳴り、バスドラのビートが躍動する。それは楽器を使わない音楽とは思えないほど立体感のあるものだ。かつては『ハモネプ』復活の盛り上がりのなか、多くのファンを獲得した彼らが、シーンの盛衰に翻弄されながら、7年が過ぎた。いま年間100本以上のライブを行うJARNZΩは、“雑草魂バンド”として、独自のアカペラ道を突き進んでいる。そんな6人が描くアカペラの未来について、語ってもらった。

EMTG:メンバーのプロフィールをざっと見させていただいたなかで、異質だなと思ったのがC.ChanΩですね。もともとハードロックが好きで、バンドを組んでた人が、アカペラをやる面白さに目覚めた経緯はすごく興味深いんですけど?
C.ChanΩ:やっぱりライブを重ねていくなかで、お客さんに「よかった」って言ってもらえたことが大きかったんです。最初は、『ハモネプ』とかを見てても、「声だけでやるなんて……」っていう感じもあったんですけど、だんだん「声だけでこんなに感動できるんだ」って。それが自分のなかで強くなって、だんだんアカペラって良いなって思うようになりました。それに、最近は自分の好きなロックも少しずつJARNZΩに取り入れていくようになって。楽器を使わないでロックを再現したら、ロックバンドより全然すごいものができるんじゃないかっていう可能性が見えたんです。
TOSHIΩ:もともとJARNZΩは、もっとふつうのアカペラグループだったんですよ。でも、C.ChanΩが入ったときに、彼の持っているロックの要素がすごく強かったので、レパートリーにロックのカバー曲を増やしてみたんです。そしたら、「あれ、これは面白いぞ」と。「新しいものができるな」と思ったんですよね。それが俺らのロックのベースでしたね。
EMTG:なるほど。自分たちを、「ボーカルグループ」ではなく、「ボーカルバンド」と呼んでるあたりにも、ロックにこだわるJARNZΩのスタンスが見えますね。
TOSHIΩ:これは去年(2014年)ぐらいから言い出したんです。僕の親友で、高校時代にELLEGARDENがめっちゃ好きだったやつがいて。そいつは、アカペラって聞くだけで、かっこ悪い、ダサいよねって考えちゃうような、ザ・バンド人間なんですよ。で、僕らがいまやってる音楽を聴かせたときに、「“アカペラグループ”っぽくないじゃん」って言われたんです。「たしかにな」と思って。アカペラグループってだけで、ちょっとバカにする人たちがいるんだったら、その名前を捨てよう。僕らがやりことはバンドみたいなことでもあるから、グループじゃなくて、バンドにしようと思って変えました。
EMTG:まさに、10月14日にリリースとなる両A面シングル『徨星 / LEAP』は、JARNZΩのそのスタンスを示すような、意志表示となるシングルですね。
SEIYAΩ:このシングルは、ATSUSHIΩが4月に入って、このメンバーで初めての1枚になるんです。だから、いまの俺たちの、やっと固まってきた意志とか雑草魂とか、俺たちの等身大が入ってると思います。
TOSHIΩ:楽曲は事務所の制作チームに作ってもらったんです。それこそ本当にロックバンドに楽曲を提供するような人たちが、俺らに書いたもので。だから、アカペラの人たちが作った感じではないですよね。いままで自分たちが作ってた曲はもっとポップな感じだったんですけど、前作シングルの「光源」で、ナッシングス(Nothing’s Carved In Stone)の生形(真一)さんが曲を書いてくれたんです。そこで急にロックなものがあがってきて、戸惑いもあったんですけど。自分たちの意志を固められたというか。今回はそのロック感を楽しみながら、レコーディングをできたと思います。
C.ChanΩ:この曲は、夢とか目標を追いかける人の背中を押せるような歌詞なんです。それと同時に、俺たちは12月12日に渋谷TSUTAYA O-EASTで1,000人に向かってライブをするっていう目標があって。それは周りの人からは、厳しいって思われてるかもしれないけど、絶対に実現するんだって思ってる。そういう想いもこの曲には込められてるんです。
EMTG:2曲目の「LEAP」はよりポップな曲調ではあるんですけど、やっぱり夢だったり、目標に進んでいく背中を後押しするものですね。
HIDEΩ:テーマは一緒なんですけど、でも、スポットがちょっと違うんですよね。「徨星」のほうが力強い感じで、飾るような歌詞というか。「LEAP」のほうが、より身近に感じてもらえると思います。最初に聴いたとき、「これ、俺のことだな」と思いましたもん(笑)。そういう意味では、JARNZΩはメンバーそれぞれの個性が違うので、C.ChanΩは「徨星」みたいな人間なんですけどね。
TOSHIΩ:歌詞とかメロディによって、誰がメインで歌うかをチョイスできるのは、僕らの強みだと思うんです。その歌のメッセージと人間性とが一致したほうが、曲が伝わっていくだろうなってことを、俺らは特に気にしてて。
SEIYAΩ:それで、今回は基本2曲ともC.ChanΩとATSUSHIΩが歌ってるんです。
EMTG:誰が歌うのかは、毎回どうやって決めるんですか?
HIDEΩ:まず全員が歌ったのを録って、多数決ですね。
KEIΩ:入念なオーディションの結果なんです。
HIDEΩ:だから、そこはバチバチですよ。まず自分なりに仕上げて。みんなで聴いて。今回は「徨星」を聴いたときは、正直、「俺じゃねぇな」と思ったんですけど、「LEAP」に関しては……本当は歌いたかった!
TOSHIΩ:粘ってたもんね(笑)。
HIDEΩ:まあ、それがまたひとつ楽しいところではあるんですけどね。ふつうのバンドだったら、ボーカルは決まってるけど。逆にボーカル争いがあるという。
KEIΩ:すごく近くにライバルがいるからね。
ATSUSHIΩ:楽しいよね。
EMTG:では最後に、JARNZΩって、『ハモネプ』の優勝をきっかけに、プロとして活動をしてるわけですけど、あの頃はアカペラブームで……?
SEIYAΩ:いや、ちょっと時期はズレてるんですよ。
TOSHIΩ:ゴスペラーズさんとかRAG FAIRさんがバンと出てきた時代の、5年後ぐらいなんです。だから、アカペラ自体はそんなに、ね。
SEIYAΩ:僕たちはハモネプ復活の特番だったからね。それの2回目だったんです。そこで、「ハモネプ復活したんだ?」って、世間の人がふんわり騒いでるようなときに出てきたので。良い感じに話題になったんですよね。
EMTG:ブームが過ぎていたとはいえ、全盛期のアカペラブームも知っているメンバーから見て、いまのアカペラシーンはどのように感じてますか?
TOSHIΩ:はっきり言って衰退してますよね。ゴスペラーズさん、RAG FAIRさんでピークを迎えて、それを超えられないんです。その、下の世代のプロはいっぱいいるんですけど、1,000人集められるアーティストがいるかって言ったらいないんですよ。それが、ふつうになっちゃってる、このシーンが僕らとしてももどかしくて。僕らはプロになったのは7年前で、そのとき、いちばん下の世代だったんです。それが、いまも変わらないんですよ。
EMTG:それだけ新しい世代が生まれてきてないってこと。
TOSHIΩ:ほとんどの人がシーンに対して魅力を感じてないんだと思います。だからいま、こうして活動をしていくようになって、「あ、このシーンを変えなきゃダメだ」と思ってるんです。やっぱり好きだからこそ広めたいんですよね。
SEIYAΩ:学生はすごく熱いんですよ。関東だと、ひとつの大学に2~300人いるサークルもあるんです。いま、東北とか北海道でも、アカペラのイベントを街のど真ん中で打ち出すと、1,000人近く集まるんですよね。フリーイベントなんですけど。そうやって一部で盛り上がってるのを世間ではいまいち知られてないし。アカペラグループっていえば、ゴスペラーズっていう時代が、もう20年ぐらい続いてて。
TOSHIΩ:先輩が偉大すぎるんだよ(笑)。
EMTG:つまり、アマチュアは多いのに、プロになる人は圧倒的に少ないというシーン。
SEIYAΩ:それもたぶん見本がないからだと思うんです。たとえばロックだったら、GLAY、B’zに憧れてギターを始めたとか、もっと前だと、レッド・ツェッペリンを見て、ギターを始めたっていう人がいて、ずーっといままで続いてるのに、アカペラだと、ゴスペラーズから俺らまで間がないんです。だから、この30手前、20代中盤ぐらいの僕たちみたいなのがポッて出てくると、学生たちも夢を見やすいのかなと思うんですよね。
TOSHIΩ:アカペラって最高なんですけどね。アカペラのスゴさ、声だけのスゴさっていうものに、僕らは魅せられてるから。こんなにも人の心を動かせる音楽だからこそ、発展しないのは悔しいんです。その新しい例じゃないですけど、こういうアカペラもあるんだっていうのを、俺らが作るっていうのが、いまのモチベーションなんです。

【取材・文:秦理絵】

tag一覧 シングル 男性ボーカル JARNZΩ

ビデオコメント

リリース情報

徨星/LEAP

徨星/LEAP

2015年10月14日

AGASTAR RECORDS

1. 徨星
2. LEAP

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お知らせ

■ライブ情報

JARNZΩParty!! ~Road to 1,000 三番勝負 3rd ~ファイナル
2015/10/18(日)TSUTAYA O-nest

第22回名桜大学祭
2015/10/25(日)沖縄・名桜大学

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2015/10/31(土) 明海大学 中庭 円形ステージ

JARNZΩ 学祭ライブ【第54回東邦祭】
2015/11/07(土)東邦大学習志野キャンパス 理学部III号館脇芝生

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2015/11/08(日)群馬県立女子大学

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2015/11/14(土)植草学園大学 メインステージ

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2015/11/22(日)電気通信大学C棟前ステージ<第65回 調布祭>

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2015/12/12(土)TSUTAYA O-EAST

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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