昨年7月14日、THE ORAL CIGARETTESがZepp DiverCityで迎えたワンマンライブ。勢いに乗る彼らのワンマンには、期待に胸を膨らませた多くのファンが詰めかけた。しかし、その日はボーカルの山中拓也が喉の不調を訴えてライブが中断。インターバルののち、予定を変更したセットリストで乗り切るという結果となった。それから約半年。2016年1月4日に、彼らはその時の無念を晴らすべく、“THE ORAL CIGARETTES唇リベンジワンマン ~復活・返上・BKW!! の巻~”というタイトルを掲げて、Zepp DiverCityのステージに戻ってきた。

　当日はソールドアウトの超満員。完全復活を見届けようと駆けつけたファンの熱気で溢れている。そんな中、ライブはまず昨年7月14日のライブ映像で始まった。ステージ上でうずくまる山中の映像に、あの日の記憶がよみがえる。メンバーからすれば直視するのは辛い映像のはずだが、敢えて上映したところにリベンジへの決意が感じられた。SEが流れ、いよいよライブ（第1部）がスタートする。まずは山中が「帰ってきたよ！」と挨拶し、1曲目の「GET BACK」へ。実は、セットリストは前回の7月14日とほぼ同じ。まさに正真正銘のリベンジというわけだ。「モンスターエフェクト」では、山中が「声聞かせて！　全然聞こえない！」と、フロアを挑発。4曲目にはライブのマストチューン「N.I.R.A」を投入し、観客をもれなく躍らせる。ミラーボールがフロアを照らし、前半からの一体感がすさまじい。MCタイムで山中は「先に言わせて！　ホンマに集まってくれてありがとう！」と、感謝の気持ちを口にした。そして「7月14日にここで倒れて、ステージを降りてからの記憶がほとんどありません。唯一覚えていることがあって、マネージャーがうずくまってる僕のところへ来て“今回の件で、ゼロになるかもしれん。でも、ゼロからでもいいやん”って。だからDiverCityが即完した時、すごくうれしかったです。ホンマにありがとうございます！俺らのファン、どうかしてんな（笑）。でも、お前たちが大好きです！」と、彼らしい言いまわしで、素直な思いを伝えた。「今日は特別な思いがあるのは間違いありません」

　中盤には雨音のSEで始まった「透明な雨宿り」など、しっとりしたナンバーを披露。緩急をつけた構成で、ライブに深みを持たせる。改めて、メロディーのよさを持つバンドなんだと実感させられた。
　聴かせる曲で酔わせたあと、急遽レッドライトが場内を照らすと、“キラーチューン祭り”を知らせるアナウンスが。ここからは、ライブで人気の高いナンバーが連続してプレイされるお楽しみタイム。「かかってこい！」という山中の煽りから「STARGET」へ。ギターの鈴木重伸も、髪を振り乱してギターをかき鳴らす。バンドと観客との相乗効果で、熱気はグイグイと上昇。「mist...」「カンタンナコト」など、文字通りのキラーチューン祭りに、フロアはうねりまくった。

　熱い時間が一段落すると、今度はベースのあきらかにあきらがMCでなごませる。4月の公演中、山中がいったんステージを降りたあと、時間をつなぐべく彼自身が行ったモノマネについて言及。
「モノマネもこの場でリベンジしようかな（笑）」と、サッカー選手の本田圭佑のモノマネを披露するひと幕も。

　続いては、アコースティック・バージョンで「机上の空論に意味を為す」と「出会い街」をプレイ。後半のハイパーな時間帯の前に、再び“歌のよさ”を印象づけた。
　このあと、再び“キラーチューン祭り”がスタート。山中の「バケモノを生み落としてしまいました」という曲紹介で、ファンを120パーセント大熱狂させる「大魔王参上」が飛び出す。左足を高く上げるあきらかにあきらのパフォーマンスに煽られるように、観客の興奮度も急激に高まる。「Mr.ファントム」、そしてメジャーデビューシングルの「起死回生STORY」では、ある意味“起死回生”のリベンジ公演への思いが爆発したような盛り上がりとなった。
「やっぱりオーラルのファン、かっけ~なと」
　第1部も残り1曲となって、山中が素直につぶやく。そしてスペシャルな1曲「エイミー」で、リベンジは大団円で締めくくられた。

　さらに、この日はリベンジだけに終わらず、第2部では最新アルバム『FIXION』からの最新曲を中心に、進化したオーラル・サウンドを披露。シングル曲「狂乱Hey Kids!!」に始まり、「MIRROR」「STAY ONE」など、続々と新曲をプレイ。ライブでは初披露だったはずなのだが、すでに何度もライブで聴いてきたかのような観客のノリに圧倒される（何しろアルバムリリースはこのライブの翌日だったのだから）。すでにキラーチューンの仲間入りを果たした感のある「A-E-U-I」ではテープが発射され、お祭りモードに！　そして「7月14日があったから出来た曲です」とラストの「Everything」へつなげて、大きく成長したサウンドをアピールした。

　ダブルアンコールの前には、ドラムの中西雅哉が恒例のグッズ紹介で場内をなごませる。グッズ紹介のあと、メンバー全員がステージに戻ると、山中が「最後はみんなで楽しく「LIPS」でシメたいと思います！」と語り、「LIPS」をラスト曲に選んだ。「狂乱Hey Kids!!」のカップリング曲であり、ポップな魅力満載の曲で、バンド以上に楽曲に身をゆだねるファンに対して、山中は「すごいな、お前ら！　ホントにカッコいいぞ！」と、喜びを爆発させる。終わってみれば、リベンジ以上にステップアップを知らしめた公演だった。2月からは“THE ORAL CIGARETTES 唇ツーマン TOUR 2016 ~復活・激突・BKW!!の巻~”で、実力派ぞろいのバンドと対バンを果たし、4月からは期待のワンマンツアー“THE ORAL CIGARETTES 唇ワンマンツアー~奈良まで続くよ道のりはツアー！~”も決定している彼ら。この次は、どんな成長をとげてくれるだろう。彼らの動きからは、当分目が離せそうにない。

【取材・文：海江敦士】
【撮影：Viola Kam (V’z Twinkle)】