安室奈美恵、全国アリーナツアーで魅せた 圧倒的な存在感と更なる進化
安室奈美恵 | 2016.02.11
2015年9月から2016年2月にかけて行われた安室奈美恵の全国アリーナツアー「namie amuro LIVEGENIC 2015-2016」(全国15ヶ所・44公演)。全曲未発表の新曲による約2年ぶりのニューアルバム『_genic』を軸にしたツアーで彼女は、最新鋭のR&B、エレクトロ、80’sリバイバルなどのテイストを取り入れた楽曲、そして、さらに研ぎ澄まされたボーカル/ダンスを華々しく体現してみせた。
オーディエンスの“奈美恵コール”が響き渡るなか、まずはスクリーンにCG映像が映し出される。“クリスタルのチーターが駆け巡り、いきなり安室奈美恵に変身!”というクールな映像に導かれて安室が登場した瞬間、凄まじい歓声が巻き起こる。オープニングナンバーはDavid Guettaのプロデュースによる「What I Did For Love」。ダンスミュージック・シーンを牽引し続けるプロデューサーと抜群のパフォーマンス能力を誇る安室のコラボレーションは、まさに世界的最高峰。繊細かつアグレッシブなEDMサウンド、抑制の効いたボーカル、キレのいいダンスがひとつになったステージングにより、会場全体がダンスフロアに変貌していく。さらに「Photogenic」「FLY」などアルバム『_genic』の楽曲が次々と披露される。世界のトレンドと強くリンクしたトラックを完璧に血肉化し、独特のグルーヴを感じさせるボーカルとダンスを加えることで、世界のどこにもない彼女だけの音楽へと結びつける安室奈美恵。その音楽性はいまも確実に進化を続けているようだ。
エレクトロ系のインタールードを挟み、キュートなカーリーヘアに早替えした後は、“Say what, say what, say what?”というコールが生まれた「Time Has Come」で客席との距離をさらに縮める。「Space Invader」ではダンサーとともにアリーナ中央に設置されたセンターステージに進み、オーディエンスの間近でパフォーマンス。観客に声を掛けることも煽ることないが(ご存知の通り、彼女はライブ中、ほとんどMCを行わない)、笑顔を向けるだけで「キャー!」という歓声が湧き立つ。1990年代中盤から20年以上に渡って(!)日本のエンターテインメント・シーンのど真ん中で圧倒的な存在感を放ち続ける彼女。そのカリスマ性はここにきて増しているようだ。“さあ どこまでもこのまま行こうよ”というメッセージがまっすぐに伝わってきた「BRIGHTER DAY」、初音ミクをフィーチャーした「B Who I Want 2 B」(UKアンダーグランド・シーンの新星、SOPHIEのトラックメイクも超クール!)など、幅広い音楽性をリアルに体感できることも、彼女のライブの魅力だろう。
ゴールドの衣装に着替えた次のコーナーでは、さらにエンターテインメント性に富んだステージが展開された。まず「SWEET KISSES」ではポップな手触りのサウンドに合わせて多くの観客がポンポン(ツアーグッズの“CHEERボンボン”)を振り、ハッピーなパーティ感が広がる。さらにこれまでリリースされたコラボレーション楽曲を次々と披露。
日本のメジャーシーンにR&Bを浸透させるきっかけとなったDOUBLEとのコラボ曲「BLACK DIAMOND」、平井堅とともに人間の心の闇を抉るようなリリックを放ちまくる「グロテスク」、そして、Crystal Kayのソウルフルなボーカルも印象的な「REVOLUTION」。コラボ相手の映像を映しながらのパフォーマンスも新鮮だった(2015年12月15日の公演では、Crystal Kayがサプライズ登場、生コラボが実現!)。さらに強いインパクトを放っていたのが、最新シングル「Red Carpet」。温かみのあるサウンド、美しく、ドラマティックなメロディ、そして、“大切な君がいてくれたら、それだけで乗り越えていける”というメッセージ。このハートフルなネオソウル・チューンは今回のツアーによって、安室奈美恵の新たなアンセムとして浸透したようだ。
そしてライブはついに最終コーナーへ。白を基調にした愛らしいドレスに身を包んだ彼女はまず、ロマンティックなバラードナンバー「TSUKI」をしっとりと歌い上げる。月と星をイメージしたステージセット、まばゆい光を散りばめた映像も、楽曲の世界観をしっかりと引き立たせている。切なさと愛らしさが混ざり合うムードを一転させたのは、「Red Carpet」のカップリング曲「Black Make Up」。R&Bテイストのダンスビート、「Hey!」というコーラスの大合唱によって、会場のテンションは急カーブを描いて上昇していく。その興奮が頂点に達したのはやはり『_genic』の収録曲「Stranger」だった。刺激的なEDMサウンドが高らかに鳴り渡るなか、ステージの中央に“GENIC”の文字を記した台がせり上がり、安室が「騒げ!代々木!」とシャウト。そこで生まれた圧倒的な高揚感は、現在の安室奈美恵の充実ぶりをはっきりと証明していたと思う。さらに「Scream」「Fashionista」というアッパーチューンを続け、心地よい一体感とともに本編は終了した。
アンコールではフレンドリーな雰囲気の「Birthday」「Anything」を披露。観客に手を振り、ダンサーと顔を見合わせて笑う安室も本当に楽しそうだ。そしてラストは「Fight Together」をひとりでパフォーマンス。「君の代わりはいない/忘れないで/We fight together」というフレーズに象徴されるポジティブな歌詞を、ひとつひとつ手渡すように歌い上げる彼女。そして、安室の歌を全身で受け止めるオーディエンス。その光景からは20年以上のキャリアのなかで築かれてきた絆の強さがまっすぐに伝わってきた。
約2時間半、ほぼノンストップでパフォーマンスを続け、アルバム『_genic』の世界観を表現してみせた安室奈美恵。楽曲、ボーカル、ダンス、演出のすべてをストイックに追求し、さらなる高みに向かって進む彼女は、2010年代後半も日本のエンターテイメントを象徴する存在であり続ける。そのことを強く確信させてくれる、驚愕のステージだった。
【取材・文:森朋之】
リリース情報
セットリスト
namie amuro LIVEGENIC 2015-2016
2015.12.16@国立代々木競技場第一体育館
- What I Did For Love
- Close your eyes, Close to you
- Fly
- Photogenic
- NAKED
- Time Has Come
- Space Invader
- BRIGHTER DAY
- It
- B Who I Want 2 B
- Sit! Stay! Wait! Down!
- Say the word
- SWEET KISSES
- Golden Touch
- Get Myself Back
- BLACK DIAMOND
- グロテスク
- REVOLUTION
- Dr.
- Red Carpet
- TSUKI
- Black Make Up
- Every Woman
- Stranger
- Scream
- Fashionista
- Birthday
- Anything
- Fight Together