BUMP OF CHICKEN結成20周年、一夜限りのスペシャルライヴ
BUMP OF CHICKEN | 2016.02.24
20年間、佇まいを変えることなく進化を続けていること、それ自体がもう途方もない。メンバー同士の関係性も、対峙するファンへの真摯さも、音楽に傾ける情熱も、稀釈されるどころか、いっそう濃く高く保たれたまま、よりよき作品を生み届けるため日々果敢な一歩を踏み出し続けて今、BUMP OF CHICKENはここに立っている。当たり前のようでいて決して当たり前ではない、奇跡みたいな彼らの軌跡。そのまばゆさと掛け替えのなさをつくづくと噛み締めた。
バンド結成20周年を記念して開催された一夜限りのスペシャルライヴ、そのタイトルも「20」。会場はもはやホームの感もある、彼らの地元千葉県は幕張メッセだ。しかしながら、なぜ2月11日なのか。ファンの間ではすでに知られていることらしいが、ライヴ中のMCにて直井由文(B)が明かしたところによれば、現メンバー4人で初めてステージに立ったのがこの日だという。自身のライヴではなく音楽コンテストだったそうで、当時獲得した優秀賞の賞状もお披露目してくれたのだが、綴られたバンド名に痛恨のスペルミスというオチも含めて微笑ましい。
さておきチケットは当然ながら完売御礼、オールスタンディングの幕張メッセは開演前からすさまじい熱気に溢れ、真冬の外気とのギャップに驚いてしまうほど。場内の明るいさざめきに時折、パッと色を挿すように各楽器のチューニング音がステージから飛んでくるのだが、そのたびにワァッと歓声や拍手が起こるのもなんだかいい。この場にいる全員で今日という佳き日を祝したいという無垢な晴れやかさが空間いっぱいに満ちている。
今日のSE、なんだろうね? 「ボレロ」かな、それとも……そんなワクワクとした会話を小耳に挟みながら期待を膨らませていると、不意にスーッと客電が落ちた。間髪入れず響き渡る土臭い男声コーラス、ザ・フーの「A Quick One, While He’s Away」だ! 「ボレロ」の緩やかに迫り上がる昂揚感も捨てがたいが、結成20周年記念となればやはり、古くからBUMP OF CHICKENの登場を彩ってきたこの曲がうれしい。
突沸する歓喜の中、ステージ袖から姿を現した4人。藤原基央(Vo&G)はギターを高々と掲げると、客席からステージに向かって伸びる2万5000人分の手、その一つひとつにもれなく手渡すべく決然と歌声を飛ばす。スペシャルライヴの記念すべき1曲目はサビ始まりの「天体観測」だった。たちまち起こった大合唱、リズムを取るように増川弘明(G)と直井が拳を振る。升秀夫(Dr)のスティックも天を突き、のっけから大きなひとつのかたまりと化す幕張メッセ。そうして4人は互いに向き合い、一斉に演奏をほとばしらせた。BUMP OF CHICKENだからこそのオンリーワンなアンサンブル。これが聴きたかった! とばかりに輝きを増すオーディエンスの瞳、そのなんと透明なことか。
バンドの歴史を時系列で辿るのではなく、比較的ランダムに各時代、各作品からの楽曲を満遍なくピックアップしたセットリスト。「ひとりごと」や「ナイフ」、「ロストマン」など何年ぶりかという単位で久々に演奏された曲もあれば、この日の前日にめでたく発売を迎えた8作目となるアルバム『Butterflies』からも2曲ほどがラインナップに加わるなど新旧入り交じった構成は、通常リリースに基づいて組まれるツアーでのそれとはまた違った新鮮さで耳を楽しませてくれる。そうしたライヴができるのも、彼らの作る1曲1曲、そこに込める魂の熱量が昔も今もまるで変わりないからに違いない。最新曲と過去曲の区別なく全身全霊のシンガロングで応えるファンの深い愛情にも揺さぶられる。
「しばらくやれてなかった曲をまたこうしてできて、とても幸せを感じてます。今日はそういう久しぶりにやるよって曲もあれば、最近の曲もやるぜ、とかいろいろあるんですけど、実は20年間で1回もライヴで歌ったことのなかった曲があったんですよ」
後半に差し掛かろうというタイミングにそう告白し、アコースティックギターを手に「こういうふうに弾くの、最初は」とフレーズを爪弾いてみせる藤原。どよめきが波紋のごとく広がる。ライヴ初披露のその曲こそは「ベル」、2002年の3rdアルバム『jupiter』に収録された温かなミディアムチューンだ。続く「66号線」もなかなかに久しぶり。しっくりと胸に沁み入るやさしい覚悟は「K」に引き継がれ、一転、アッパーな前進の意志へと昇華された。緩急のメリハリが効いたダイナミックな展開に奮い立つ幕張メッセ。2万5000人と4人が一体となったエネルギーが加速して渦巻く。そうして本編ラストを締めくくったのは、やはり「ガラスのブルース」だった。20年間の思いを宿して響き渡る、バンドの原点と言うべき渾身の1曲。4人からファンへ、ファンから4人へ。通底してこの日の一部始終に鳴り続けていた感謝が一気に噴き出した瞬間でもあった。共鳴する心と心、これが音楽だと、ただ、ただ、思う。
アンコールを求める手拍子と声が次第に「supernova」のコーラスに取って代わった。再びステージに登場、早速とばかり演奏態勢に入る4人。「Hello,world!」にみなぎる疾走感がオーディエンスを再び興奮の坩堝へと誘う。
「終わるのイヤやね。でも、こればっかりはしゃあない。じゃあ藤原さん、やりますか」
「やりますか」
「過去にも何回かやってるけど、みんながノった試しがないよね」
「俺は悪くないと思うんだけど」
「俺も。でも音源になってないしね」
直井と藤原のゆるゆるトークの中に何かを察したのだろうか、客席の一部からいち早く歓声が上がる。
「これから俺ら、すっごく気持ちを込めてやるけど、たぶんみんなは“……?”だよ。でも全然それでいい。俺らはそれで締めて帰る。そう決めたの」
「そうね。アンコールもらったら絶対この曲やろうって」
固い決意のもと、升のカウントで始まった「BUMP OF CHICKENのテーマ」に爆発的に盛り上がるオーディエンス。藤原いわく、“「ガラスのブルース」を書いたすぐあとに、自分たちのテーマソングがあったらいいなって、4人で頭を突き合わせて作った曲”。いかにもバンド初期らしい、プリミティブな喜びが伝わってくる、へなちょこバンド=BUMP OF CHICKENの歌だ。20年の時を経て、へなちょこだった4人組がこうして相も変わらず音楽を奏でているなんて、しかも幕張メッセという大舞台で当時の曲を演奏しては2万5000人もの人々を笑顔にしているなんて、これほど夢のある話もないのではないか。
「以上、BUMP OF CHICKENでした!」と颯爽とステージを降りたものの、どうにも去りがたい気持ちが残ったのだろう。アンコールを求めて手拍子が始まったのも束の間、すぐにまた戻ってきた。「終われなかったですね。全っ然、終われなかったです」という藤原の開口一番に客席も大笑いだ。「せっかくなので1996年2月11日にステージでやった曲をやって帰りましょうか」と直井が提案、そうして「DANNY」がオーラスを飾る。どこまでも等身大。思えばステージの両サイドにスクリーンが設置されていた以外にはセットも演出も、この日はとことんシンプルだった。
「僕らが今まで作ってきた音楽、これから作っていく音楽は全部、君に会うために生まれてきました。忘れないでね」そう言い残し、ステージ袖へと消える藤原。清々しい余韻に包まれながら今日を振り返り、そしてまた会えますようにと未来に願う。これから生まれる彼らの曲に、彼らが奏でるその音に。
【取材・文:本間夕子】
【撮影:古渓一道】
リリース情報
Butterflies(初回限定盤A)[CD+DVD]
2016年02月10日
トイズファクトリー
1. GO
2. Hello,world!
3. Butterfly
4. 流星群
5. 宝石になった日
6. コロニー
7. パレード
8. 大我慢大会
9. 孤独の合唱
10. You were here
11. ファイター
[DVD]
【Music Video】
1. You were here
2. ファイター
3. パレード
4. Hello,world!
5 . コロニー
【Special Live 2015 at Yokohama Arena】※全編収録
1. パレード
2. Hello,world!
3. ハンマーソングと痛みの塔
4. 才悩人応援歌 5. morning glow
6. ファイター
7. 太陽
8. ギルド
9. ハルジオン
10. embrace
11. 虹を待つ人
12. 乗車権
13. supernova
14. ガラスのブルース
15. ray
EN1. コロニー
EN2. メーデー
セットリスト
BUMP OF CHICKEN 結成20周年記念Special Live「20」
2016.2.11@千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
- 天体観測
- R.I.P.
- バトルクライ
- ランプ
- 車輪の唄
- ひとりごと
- ナイフ
- Butterfly
- ロストマン
- ベル
- 66号線
- K
- ダイヤモンド
- ray
- ガラスのブルース
- Hello,world!
- BUMP OF CHICKENのテーマ
- DANNY
お知らせ
BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 ‘’BFLY’’
2016/04/09(土)大阪府 京セラドーム大阪
2016/04/10(日)大阪府 京セラドーム大阪
2016/05/08(日)愛知県 ナゴヤドーム
2016/05/22(日)福岡県 ヤフオク!ドーム
2016/07/16(土)神奈川県 日産スタジアム
2016/07/17(日)神奈川県 日産スタジアム
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。