Ken Yokoyama、武道館で一致団結。8年前にはやらなかったあの曲も
Ken Yokoyama | 2016.03.24
「よく来てくれた、武道館。8年ぶりに戻って来たわ!」とKen Yokoyama(Vo/G)がライヴ開始前に挨拶した。
そのMCを聞き、前回の初めての日本武道館公演からそんなに歳月が経ったのかと驚いた。2008年1月13日に行われた公演はライヴDVD『DEAD AT BUDOKAN』にもなっているし、個人的にも人間・Ken Yokoyamaの魅力が全開になったステージで忘れようにも忘れられない。当時は3rdアルバム『Third Time’s A Charm』発表後のタイミングで、Kenの脇を固めるのはコリン、サージ、ガンちゃんというメンバーだった。Ken Bandを含めて、あの頃と今では周りの状況や音楽シーンもまた変化した。だからこそ、8年を経て再び武道館公演を満杯にしたKenの喜びは格別なものだったに違いない。変わらないもの、変わりゆくものの中で、Ken Yokoyamaという男の魅力はやはり別格だった。
前回はシークレットでBRAHMANがこの舞台に立ったが、今回は事前に告知する形でSLANGがゲストで登場。開始早々、モーターヘッド張りの爆音が武道館に響き渡り、KO(Vo)の咆哮は観客一人ひとりの胸を刺す熱さで迫る。場内は最初こそ静観の構えだったが、ラスト曲「何もしないお前に何がわかる 何もしないお前の何が変わる」が終わると、温かい歓声と拍手が沸き上がっていた。Ken Yokoyamaは日本のど真ん中、日の丸の下で演奏するに相応しいバンドはSLANGだという思いが強かったのだろう。震災後、八面六臂の動きを見せたBRAHMANとSLANGの姿がここで重なった。
そして、Matchan(Dr)、Jun Gray(B)、Hidenori Minami(G)、最後にKen Yokoyamaがステージに現れる。「Maybe Maybe」で始まると、オールスタンディングと化した1階アリーナはクラウドサーファー続出の凄まじい盛り上がり。この1曲だけで、Ken Bandの愛されぶりが尋常ではないことを悟る。それからKen Yokoyamaは日の丸の旗を背中にかけ、「Save Us」をプレイ。アリーナには日の丸の旗を振る観客もちらほら見えた。
序盤に「下ネタはしないつもり」とKen Yokoyamaが呟くと、観客からブーイングの嵐だ。家族や奥さんも来ていると補足説明した後、その舌の根も渇かぬうちに次はチ●コマ●コの曲と明るく言い放った。ポップなメロが炸裂した「Dream Of You」で観客との距離をグッと縮め、アリーナにはたくさんの笑顔が咲き乱れる。
Ken Yokoyamaが日の丸の旗を両手で広げて見せると、「This Is Your Land」をここで演奏。自分たちが住む街や土地を愛してくれ、と壮大になりがちなメッセージ性を胸三寸のリアルさを持って聴かせられるのは彼しかいない。武道館にウォーウォーの大合唱が響く場面に鳥肌が立ち、思わず天井に吊るされた巨大な日の丸を仰ぎ見た。それからふと会場を見回すと、日の丸の旗を振る人たちが急増しているではないか。この曲は東北のフェスにKen Bandが出演した際に、日の丸の旗を振る観客の姿を見て、Ken自身が心を突き動かされて作ったものだった。東北と関東、距離的には隔たりはあるかもしれないが、気持ちは繋がっている。何で繋がっているのか。日本という1つの島に住む、同じ仲間=日本人ではないか。ある物事に対して拒否したり、心を閉ざすことは簡単だ。パンク・ロックはそもそも社会に対して斜めに構え、アンチを唱えることがクールという側面がある。
震災以降、Ken Yokoyamaは変わった。パンクどうこうを議論するより、1人の人間として何をするべきなのか。そこに焦点がどんどん定まっていく。だからこそ、「AIR JAM 2011」で11年ぶりにHi-STANDARDがまさかの復活を遂げ、さらに東北でも2デイズに渡って「AIR JAM 2012」を決行するなど、それ以降も二足のワラジ状態で日本中を元気づけている。
今日はセットリストをビッチリ固めていると言いながら、その場でリクエストを聞くKen Yokoyama。誰かがあの曲を叫んだ。その声を掬い取る形で、8年前にはやらなかったハイスタの「Stay Gold」が初めて武道館に響いた。心の底から熱いものが込み上げてきたのは言うまでもない。その後に聴いた「We Are Fuckin’ One」、リッキーという名のいちパンクスが"団結"ってかっこ悪いの?と自らに問いかけて心変わりする様が描いた「Ricky PunksⅢ」という楽曲群が深く沁み込んできた。もちろん、新たなアンセム・ソングと言える「I Won’t Turn Off My Radio」が巻き起こした大合唱、加えて、終盤にプレイされた「Punk Rock Dream」、「Believer」、アンコールでやった「Let The Beat Carry On」は震災後、時を重ねるにつれ、ますます強烈な輝きを帯びている。
Wアンコールでは客電を付けた明るい武道館にぴったりハマったカヴァー曲「Pressure Drop」で締め括った。オリジナルはトゥーツ・アンド・ザ・メイタルズで、クラッシュやスペシャルズ、元ガンズ&ローゼズのイジー・ストラドリンもソロ作でカヴァーした超ゴキゲンなスカ・ナンバー。そう言えばKenは、今のKen Bandをこの武道館に連れて来たかったとライヴ中に語っていた。メンバーのMinamiが古巣KEMURIを彷彿とさせるスカ・リズムを武道館で軽快に?き鳴らしている。カヴァーとはいえ、これも名シーンの1つに挙げておきたい。
この日、Ken Yokoyamaは恒例のマイク投げを封印して挑んだが、大勢の観客が満面の笑顔で曲を歌い上げていた。まるで自分の曲のように。それはKen自身が欲していた景色だったことは想像に難くない。Ken Bandで作った曲たちが、ずっとあなたの心に残り続けてほしい。その熱量は武道館をすっぽり包み込む高さだった。
【取材・文:荒金良介】
【撮影:Jon...】
リリース情報
Sentimental Trash
2015年09月02日
PIZZA OF DEATH RECORDS
2. Boys Don’t Cry
3. I Don’t Care
4. Maybe Maybe
5. Da Da Da
6. Roll The Dice
7. One Last Time
8. Mama,Let Me Come Home
9. Yellow Trash Blues
10. I Won’t Turn Off My Radio
11. A Beautiful Song
12. Pressure Drop
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セットリスト
DEAD AT BUDOKAN Returns
2016.3.10@日本武道館
- Maybe Maybe
- Save Us
- Mama, Let Me Come Home
- Last Train Home
- Dream Of You
- I Don’t Care
- Your Safe Rock
- This Is Your Land
- Yellow Trash Blues
- Running On The Winding Road
- Stay Gold
- I Won’t Turn Off My Radio
- Ten Years From Now
- Cherry Blossoms
- We Are Fuckin’ One
- I Go Alone Again
- A Beautiful Song
- Walk
- Punk Rock Dream
- Ricky PunksⅢ
- Believer
- How Many More Times
- Let The Beat Carry On
- Pressure Drop
お知らせ
ARABAKI ROCK FEST.16
2016/04/29(金)宮城 みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。