SHE’S、堂々のメジャーデビュー発表!心震えた初のワンマンツアーファイナル公演をレポート。
SHE’S | 2016.03.22
「本当の心でほんまの話をしたい。嫌われるのは怖いけど、ちゃんと自分の目で見て、自分の耳で聞いた、本当のことを話してきた。心が震える感情をずっと信じてきた。そしたら、みんなと出会えました。これからもちゃんと本当の心でいられたら、(僕たちの音楽を)聴いてくれるのかなと思ってます」。この日、アンコールで井上竜馬(Vo)が静かに語りかけた言葉だ。SHE’S、全国5ヵ所の全国ツアーのファイナルとなった渋谷CLUB QUATTRO。この場所でメジャーデビューを発表した彼らが、惜しみない祝福を浴びながら、この先バンドとして忘れてはいけない大事なことを、真摯に告げる姿はとても印象的だった。
ストリングスのリズムを刻むシーケンス、そこに井上が奏でる流麗なピアノのフレーズが重なり、最新ミニアルバム『She’ll be fine』のリード曲「Un-science」からライブはスタートした。軽妙なリズムにのせて井上の伸びやかなボーカルが響き渡った、とびきり開放感溢れるナンバーは、この特別な一夜の幕開けに相応しかった。間髪入れずに、過去のディスコグラフィーを縦断して畳みかける「Change」や「Just Find What You’d Carry Out」といったアップナンバー。むらさき色の照明を浴びて届けたマイナー調の「彼方」から、へヴィなベースソロに湧いた攻撃的なロックチューン「L&F」、さらに井上が叩くように鍵盤を弾いて繰り出したパンキッシュなナンバー「Save Me」へ。音源のみで触れる以上に躍動的でエネルギッシュなSHE’Sのステージに、フロアからは驚きも入り交じった大きな喝采が送られた。
オープニングの数曲でも、洋楽をルーツに持つSHE’Sの豊かな音楽性を感じることはできたが、やはり中盤ぐっと客席を惹き込んだのは、井上が切々と歌い上げるバラード曲だった。「離れ離れになったふたりの歌を歌います」。そう言って「2人」から歌い始めた3曲は、昨年リリースした2枚目のミニアルバム『WHERE IS SHE?』からのナンバー。SHE’Sのこれまでの作品には、彼女を失った悲しみに始まり(1st)、彼女の影を追い(2nd)、やがて彼女から旅立つ(3rd)、そんなストーリーが描かれていた。その繊細な心の変化をなぞるように、ライブのムードも次第に混沌から解放へと向かう。壮大なサウンドにのせて《繋いだ手を離さないように》と井上が両の手を組み合わせ、「生きようぜ!」と叫び声をあげた「ワンシーン」のドラマティックな展開は、間違いなくこの日のハイライトだった。
ここで、かつて19歳の頃に書いた「ワンシーン」や「信じた光」といった楽曲を、この渋谷CLUB QUATTROという場所で演奏できてうれしい、と喜びを口にした井上。ポロポロと鍵盤を弾きながら、高校卒業後に結成したSHE’Sの歩みを振り返った。「ようここまで来たなあ……。SHE’Sという船はゆっくり時間をかけて、船員が降りたり入ったりしながら、また時には竜巻に見舞われながら、ひとつの目標に向かって歩いてきました。5年経って、たくさんの人に見守られてほんまに幸せです」と。そこまで言って、6月8日にVirgin Musicからメジャーデビューすることを発表。その瞬間、涙腺が決壊してしまった井上は、「こんなんなるはずじゃなかった(笑)」と照れながら、フロアからの祝福を最高の笑顔で受け止めていた。
そこから新たな決意を込めるように「もっと遠くまで、みんなでいこう!」と叫んで、力強く鳴らされたストレートなロックナンバー「遠くまで」は素晴らしかった。木村雅人(Dr)と広瀬臣吾(B)の強靭な重低音、服部栞汰(G)の流麗なギターリフ、それらがひとつの大きなバンドの意志となって、フロアを駆け抜けていく。そして、ゆったりと歩くように刻むテンポの中、メンバー全員がウォーウォーと歌い、オーディエンスとのシンガロングを巻き起こした「Curtain Call」へ。ここから始まるバンドの《ストーリー》を想い、無限の可能性に胸がときめく、あまりにも感動的なフィナーレだった。
アンコールではメジャーデビューシングルとして6月8日にリリースされる新曲「Morning Glow」がいち早く披露された。朝焼けを意味するタイトルのままに、ステージいっぱいに照らされた真っ赤な照明。SHE’Sの新たなスタートを告げるナンバーは、今日この場所にいる全ての人たちの手を決して離さないと約束する、誓いの歌のように聴こえた。
ライブ中に井上は、こんなことを言った。「俺は、みんなと行きたい。寂しいんじゃなくて、みんなで行きたい。わがままかな?」と。目指す場所は決してひとりでは辿り着けない。SHE’Sの音楽に魅了され、集った仲間たちと一緒に辿り着くべき場所だ。この日のオープニングを飾った「Un-science」の歌詞を借りるなら、“心が共鳴する”“心で繋がる”仲間たちの絆を信じて、いまSHE’Sは新たな船出に臨もうとしている。バンドが最も大切にする“心の在り処”さえ見失わなければ、きっと彼らはどんな嵐でも乗り越えてゆけるだろう。
【取材・文:秦 理絵】
【撮影:西槇太一】
リリース情報
セットリスト
SHE’S ONEMAN TOUR「She’ll be fine -chapter.0-」
2016.3.14@渋谷CLUB QUATTRO
- Un-scienece
- Change
- Just Find What You’d Carry Out
- 彼方
- L&F
- Save Me
- 2人
- All My Faults
- Evergreen
- Back To Kid
- Night Owl
- 信じた光
- ワンシーン
- 遠くまで
- Curtain Call
- Morning Glow(新曲)
- Voice
お知らせ
One-Two-Three, For!! TOUR 2016』
LAMP IN TERREN/SHE’S/ HOWL BE QUIET
2016/04/06(水)【福岡】天神Queblick
2016/04/07(木)【広島】CAVE-BE
2016/04/09(土)【大阪】大阪梅田Shangri-La
2016/04/10(日)【愛知】名古屋ell.FITS ALL
2016/04/15(金)【宮城】仙台enn 2nd
2016/04/17(日)【東京】代官山UNIT
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。