キュウソネコカミ史上最大規模の幕張メッセで、仕掛け満載のライブを披露!
キュウソネコカミ | 2016.03.29
いつからかキュウソネコカミのライブが、単純に楽しいと思う以上に、明日も前向きに生きるための強さをもらえる場所になっていた。個人的には 、そのエポックメイキングは「ハッピーポンコツ」という曲が生まれた時だったと思っている。《一生懸命やっているのになんかズレてる》――努力が報われず、冴えない人生を思いっきり肯定してくれるキュウソらしいポンコツ応援歌。この曲が本編のラストナンバーとして、幕張メッセの広い空間で鳴らされた時の感動は言い様のないものだった。5,000人のお客さんが一体となってこぶしを突き上げ、足を踏み鳴らして見せる最高の笑顔。その光景を見ればわかる。なぜキュウソがいまこれほどの愛されバンドになったのか。それは彼らが憂鬱な毎日に生きづらさを感じている私たちにかけがえのない居場所を与えてくれるバンドだからだ。
メンバー全員が黒いスーツ姿からライブの正装スタイルへと着替えながら、ステージへと向かうオープニング映像でライブは始まった。続けて、ステージに現われた“本物の”メンバー。いきなり「MEGA SHAKE IT ! 」を1曲目に披露すると、ステージと客席とが初っ端からMAXのテンションでぶつかり合っていく。宙を舞う金テープ。巨大なスクリーンにはメンバーが5分割で映し出された。《スマホはもはや俺の臓器》を全員で叫んだ「ファントムヴァイブレーション」、お風呂に浮かべる黄色いアヒルがお客さんの頭上を弾んだ温泉ソング「OS」、懐かしのファミコン映像にメンバーがキャラクターとして登場した「ゲーマーズハイ」。これでもかと仕掛けを盛り込んだ旺盛なサービス精神が、キュウソライブの魅力のひとつだが、この広い会場にも手抜きなしの周到なネタがたくさん用意されていた。
序盤を終えて、おもむろにステージに宝箱が運び込まれた。中からは血まみれの白いシャツ。かつてキュウソのステージ衣装だったものだ。ヤマサキセイヤ(Vo・G)がそれを着ると、いまでは滅多に披露することない「役立たず」や「チャンピオンズリーグ」といったインディーズ時代初期のナンバーが続々と繰り出された。中でも、「若かりし頃の俺たちがダンスナンバーとして作った曲です」と、ヨコタシンノスケ(Key・Vo)が紹介したメロウな1曲「ウツロウココロ」が印象深かった。その歌の《人気商売の僕らは忘れられると死んじゃうの!》という歌詞には、バンドが簡単に飽きられてしまう怖さと、その中で揺らぐバンドとファンの気持ちが綴られている。この歌をいまキュウソがどんな気持ちで届けたのか、それは定かではない。だが、この節目となる幕張メッセで数多く披露された初期曲には、集まったお客さんをレア曲で喜ばせたいという気持ちと同時に、何かバンドの原点にあるものを忘れてはいけないという戒めの意味合いがあるように思われてならなかった。
もちろんライブは単なる懐古趣味には終わらない。家族の中で疎外されがちなオヤジの悲哀を歌った「泣くな親父」から、離婚がテーマの「要するに飽きた」へは、偶然か、必然か家族をモチーフにした2曲が続いた。この流れにヤマサキは「家族の絆をつなぐバンドです」と、勢いよく宣言するも、「そんなキショいテーマで活動してないっ!」と自分に突っ込む。すかさず「良いテーマじゃん」とヨコタ。それに「良いテーマは俺にとってはキショい!」と返す、ヤマサキのひねくれ感が面白かった。続く、新曲「こみゅカ」は、コミュニケーションが苦手な人へのキュウソらしい応援ソング。さらに、恐怖をテーマに突き詰めた「Scary song」ではのこぎり(もちろんダンボール製)を持った怖い人が会場に現われたかと思えば、「NEKOSAMA」でヤマサキがスタンド席に駆けあがり、ダッシュしながらの熱唱。そんなヤマサキがお客さんの頭上を歩くのが恒例の「DQNなりたい、40代で死にたい」では、「大丈夫か!?」「手を掴むな!」「落ち着け!」としきりに声をかけながら、「ヤンキーこわい!」の盛大なコール&レスポンスを巻き起こした。およそ3時間のライブでステージも客席も汗ダク。ラストの「ハッピーポンコツ」まで全24曲が本当にあっと言う間だった。
MCでヤマサキが言った忘れられない言葉がある。かつて東京で初ライブをしたという新宿MARZでのライブを振り返りながら、「今日こんなに集まってくれた人には、あの頃みたいに、『死ね!こら!』とは言われへん。それは丸くなったのではなく、強くなったからだ」と。それは、とても誠実な言葉だった。噛み付くことでしか爪痕を残すことができなかった弱さを乗り越えて、もっと素直に気持ちを曝け出せる強さを得た。キュウソネコカミがどんどん大きくなる中で何か変わったことがあるとすれば、それだけだ。
アンコールでは、地球をテーマにしたという新曲が披露された。捲し立てるように繰り出す早口の歌唱にのせた歌詞は、何度も書き直したもので、いまだ未完成だという。珍しく譜面台の歌詞を見ながら歌ったヤマサキ。それでもこの場所に、最高にかっこいい、バンドの最新ナンバーを用意してくれたキュウソの気概がうれしかった。続く、「お願いシェンロン」では、スクリーンに過去のライブ映像が映し出され、最後はメジャーデビュー曲「ビビった」。最後まで熱狂のムードは全く衰えないまま万感のフィナーレを飾った。
ライブを終えて出口に向かうと、そこにはメンバーの手書きメッセージを書いたダンボールが貼られていた。かつて“社会のしがらみ”と書いたダンボールを踏み潰すパフォーマンスもそうだったが、いまも使われる筋斗雲。メジャーにいっても、キュウソはダンボールをよく使う。この全く薄れないインディーズ感。きっとキュウソが好きな人たちは、そんな心意気も含めてこのバンドが好きなんだと思う。
【取材・文:秦理絵】
【撮影:Viola Kam (V’z Twinkle Photography)】
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四星球5thフルアルバム「出世作」 レコ発ツアー 『出世街道2016』
2016/05/02(月)愛媛 松山サロンキティ
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2016/05/05(木)海浜幕張公園JAPAN JAM BEACH特設会場
OSAKA METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2016
2016/05/14(土)大阪府METROCK大阪特設会場(大阪府堺市・海とのふれあい広場)
TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2016
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BLUE ENCOUNT TOUR2016 THANKS~チケットとっとってっていっとったのになんでとっとらんかったとっていっとっと~
2016/05/25(木)千葉LOOK
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2016/06/11(土)岡山・YEBISU YA PRO
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2016/06/18(土)福島県 clubSONICiwaki
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