忘れらんねえよ、ツレ伝ツアーファイナルで見せた決意
忘れらんねえよ | 2016.04.11
泣くかもしれない。ベスト・アルバム『忘れらんねえよのこれまでと、これから。』収録の新曲「別れの歌」が、あまりにも胸に刺さる曲だったからだ。そんな予感を抱いてTSUTAYA O-EASTへと向かう。忘れらんねえよ主催『ツレ伝ツアー2016』のファイナル。チケットは即完。対バン相手は夜の本気ダンスである。
とにかくリフだ。選び抜かれたリフを一発。「踊れる準備はできてますか――ッ!!」の言葉で始まる1曲目「By My Side」から、“夜ダン”こと夜の本気ダンスの楽曲は徹底してリフを軸に作られていた。そのアイデアがハンパない。原始のロックンロールを思わせる「B!tch」、ニューウェーヴな「Logical heart」、ブラック・ミュージックな「escape with you」。そのシンプルな楽曲はフックにより磨きに磨かれている。そこに米田貴紀(Vo・G)のリズミカルな歌が妖しく乗る。このスタイルはもう発明じゃないか! ラスト「戦争」では、米田が観客全員を座らせ、「踊れ!!」を合図に一斉にジャンプ。巨大な生き物がフワリと立ち上がったよう。初めて見る景色。この演出もまた発明だ。「ツレ伝ツアーはバンドの登竜門。忘れらんねえよ以外、全部売れていく!」と、忘れらんねえよの柴田隆浩からMCモンスターの称号を授かった鈴鹿秋斗(Dr)が、冗談で爆笑を取る。まさに登竜門。全く新しいスタイルで踊らせる夜ダンは、ダンス・バンドの未来形だ。
興奮冷めやらぬフロアは、背後からの「ありがとう!!」に不意を突かれた。何とそこには柴田隆浩(Vo・G)。その身を観客に預け、ステージに運ばれ、「踊れる準備はできてますか――ッ!!」と夜ダンの合言葉で忘れらんねえよのライヴ開始宣言。これで1曲目「今夜いますぐに」から火がついた。柴田と梅津拓也(B)とサポート・ドラムのマシータからも「いいね! ノリがいいね!!」と笑顔が溢れる。
「1年前、水カン(水曜日のカンパネラ)がまだそんなでもない時、案の定、僕は上から目線でアドバイスしてしまった!!」
柴田がそう頭を抱える。この自虐キャラもまた彼らの魅力だ。あの娘とフェスに行ったあんたらと深夜にエロサイトがつながらない俺。Mステに出てるあいつとそれでテレビがつけられない俺。リア充との対比をこれでもかと描きながら、「CからはじまるABC」で「♪いい。それでいい!!」とすべてを全肯定。これに心が動かない男がいるだろうか。しかも「夜ダンは曲がめちゃめちゃかっこいいんだ。なのに、あのMCですよ(場内爆笑)」と後輩を手放しで讃える。そんな彼らだからこそ、多くの女子もO-EASTに駆けつけたのだ。
後半、モッシュ発生の「ばかばっか」で、柴田は「お前らがあまりにも熱いからビールが買いたくなった!!」とまたもや観客に身を任せた。ワッサワッサと運ばれ、「いやぁ――ッ!!」と人の波の上でビールを一気飲み。ばか魂を見せつけたパフォーマンスは、「寝てらんねえよ」「ばかもののすべて」の大合唱を生んだ。さらに柴田は女性ファンの手紙を紹介。彼女は育児と家事に追われ、忘れられんねえよの曲を聴けるのが夜の10時だという。その女性も、会場に来てる人も、裏切ることはできないと柴田は言った。
「だから、俺らは覚悟を決めて、かっこいいバンドになると言わないとダメでしょ」
この『ツレ伝ツアー』がその第2章の始まり。「♪明日には名曲が”渋谷”に生まれんだ」と歌った「この高鳴りをなんと呼ぶ」。観客がスマホの灯りで会場を照らした「忘れらんねえよ」。柴田はその景色を見て「天国みてえだなぁ」と呟いた。
「生きてくと別れが必ずあるよね。俺らにもあったよ。でもね、大丈夫なんだよ」
去年、忘れらんねえよからドラムの酒田耕慈が脱退した。ラストの曲「別れの歌」は酒田に捧げられた歌だ。これで最後。さよならのとき。こんな言葉を生で聴いたら泣くかもしれない。そう思わせる、真っ直ぐな歌だ。
しかし泣かなかった。柴田が最高の笑顔でこの歌を歌ったから。梅津とマシータが力強いリズムで背中を押したから。会場が大きな手拍子でこの歌を迎えたから。お前との時間は忘れられねえよ。心からそう言えるほど、彼らは強かった。その場所には、涙よりも笑顔がふさわしかった。
最後に嬉しいニュースが。10月9日、Zepp DiverCity TOKYOワンマン・ライヴ決定の報告だ。多くのバンドの登竜門となった『ツレ伝ツアー』。そしてZeppこそ、バンドの登竜門と言えるだろう。忘れらんねえよが、ついにその器にふさわしいでっかいステージに上がるのだ。
【取材・文:柳村睦子】
【撮影:岩佐篤樹】
リリース情報
忘れらんねえよのこれまでと、これから。
2016年02月24日
VAP
02 バレーコードは握れない
03 世界であんたはいちばん綺麗だ
04 犬にしてくれ
05 寝てらんねえよ
06 バンドやろうぜ
07 ばかもののすべて
08 愛の無能
09 絶対ないとは言い切れない
10 ばかばっか
11 体内ラブ~大腸と小腸の恋~(feat.玉屋2060%,MAX from Wienners)
12 この高鳴りをなんと呼ぶ
13 バンドワゴン
14 中年かまってちゃん
15 戦う時はひとりだ
16 僕らパンクロックで生きていくんだ
17 夜間飛行
18 僕らチェンジザワールド
19 この街には君がいない
20 北極星
21 CからはじまるABC
22 忘れらんねえよ
お知らせ
忘れらんねえよZeppワンマン
「僕とあなたとあんたとお前のデカいステージ」
2016/10/09(日)Zepp DiverCity(TOKYO)
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。