今をときめく筆頭注目株Mrs. GREEN APPLE、初の全国ワンマンツアーファイナルをレポート!
Mrs. GREEN APPLE | 2016.04.26
どれだけ目をみはっても、みはり足りない。瞬きするのも惜しいとは、こういうことだったのかと改めて知らされた気さえする。倍々のスピードで成長の階段を駆け上がるMrs. GREEN APPLE。今をときめく筆頭注目株である彼らにとって初となった全国ワンマンツアー“TWELVE TOUR ~春宵一刻とモノテトラ~”、ファイナルを飾った4月10日の赤坂BLITZ公演はそれまでMrs. GREEN APPLEというバンドの内に秘められていたポテンシャルが見事なまでに顕在化した実にまばゆいステージだった。
この1月にリリースされた1stフルアルバム『TWELVE』を携えて全国14ヵ所を回った今ツアーだ。ツアータイトルの副題に冠された“春宵一刻”とは“春の夜はとても短くて尊いものだ”と詠われた漢詩の一節であり、これを提案した若井滉斗(G)によれば春に回るこのツアーで観客のみんなと一緒に尊い夜を共有したいとの想いが込められているという。一方の“モノテトラ”は藤澤涼架(Kb)による造語。ギリシャ語で“1”を意味する“モノ”と“4”を意味する“テトラ”を組み合わせ、公演数の“14”とツアー期間の“41”日間を表わす、つまりツアーを象徴するワードとしたそうだ。タイトルひとつにも二重、三重に想いや意味を乗せてくるところがなんともMrs. GREEN APPLEらしい。もちろんそれらを知らずともライヴは楽しめるだろうが、知ればいっそう愛おしく、いつまでも振り返っては噛み締められるものとして胸に残るのではないだろうか。
1本1本のステージを大切にしながら5人がたどり着いた集大成のこの夜。満場の拍手と歓声に迎えられて登場するなり、メンバー全員が横並びになって“りんごポーズ”をキメてみせ、のっけからオーディエンスの度肝を抜いた。1曲目の「愛情と矛先」でも色違いのパンツで揃えたフロント4人がタイミングもぴったりに左足を蹴り上げるなど、楽曲のみならず、よりポップに突き抜けたパフォーマンスが場内を沸きに沸かせる。続く「SimPle」ではギターを外し、手にマイクを握った大森元貴(Vo&Gt)がステージを闊歩、客席と向き合いながら朗々と歌を、そして歌に宿ったメッセージを飛ばし、それを掴もうとするかのようにフロア一面に詰めかけた1500人分の手のひらが揺れた。
「赤坂のみなさん、元気ですか! 改めまして僕たちが!」
まず藤澤が口火を切り、間髪入れずに「Mrs. GREEN APPLEです!」と5人が声を重ねる。これまたファン心をくすぐるファンシーな演出ではないか。そうした可愛らしさが無理なく似合うところもこのバンドの稀有な佇まいを物語っているように思える。登場のキメポーズもしかり、下手をすれば誤解されそうなギリギリをあえて攻め込み、武器に転じてしまえる絶妙なバランス感覚も彼らならではの強みだ。卓抜した演奏力と音楽的センス、自身の魂と真摯に向き合って紡がれる言葉がそこにあるからこそ。キャッチーとはまるで対極に位置するような、やるせなさをはらんだ「ミスカサズ」の切実な叫びが、重くも鋭い音の奔流が、黒く渦巻くグルーヴがむしろ聴く者の心を鷲掴みにして離さないのも、だからそういうことなのだろう。光も闇も同じように抱きしめるものが“キャッチー”と呼ばれるのかもしれない。それまでの楽曲がポップに振り切れていたぶん、この日の「ミスカサズ」は際立ってエモーショナルに響いた。
スクリーンを使って時計のアニメーションを映し出し、視覚と聴覚の両方から曲の世界観を立体的に訴えかけた「キコリ時計」。「すごいね、声が有り余ってる。じゃあ、そういう曲やろうか」と大森が呼びかけ、山中綾華(Dr)の刻む小気味よいビートをバックに割れんばかりのコール&レスポンスを炸裂させた「HeLLo」。なんと4張の和太鼓が用意された「No.7」では山中のドラムに追随して男性メンバー4人が威勢よくバチを振っては迫力のリズムアンサンブルで後半戦のクライマックスを盛り立てるなど、『TWELVE』の楽曲を軸にしつつ、音源の再現以上に厚みのあるサウンドが熱狂をどこまでも押し上げる。彼らのライブ筋肉も今ツアーで格段に鍛えあげられたに違いない。例えばMCでも名コンビ感を漂わせる若井と髙野清宗(B)がお互い視線を交わしては一緒にジャンプ、かと思えば競うようにステージ前方の台に駆け上がったりなど、メンバー同士仲睦まじげにじゃれ合いながらも、観せるところは観せ、聴かせるところはしっかり聴かせるという盤石かつメリハリのある演奏で容赦なくオーディエンスを巻き込んでいく様は頼もしいの一語に尽きる。
「もう、ありがとうっていう想いのみです。僕が高校生のときにMrs. GREEN APPLEを結成したんですけども、その頃からこうして全国ツアーをしたいとか、CDをリリースしたいとか、夢物語じゃないけどフワッと話していて。そうやって話してたことがちょっとずつ現実になっていくっていうのは、生きていてもあんまりあることじゃないと思ってます。この光景が見られて本当にうれしいし、音楽を始めてよかった。報われる瞬間です」
本編ラスト1曲を残して大森は言った。歌にすべてを乗せられたからだろうか。感慨を噛み締めながらも、しかし口にする言葉はいつになく少ない。
「最後に結成当時に作った曲を演奏して終わりたいなと思います。知ってたら歌ってください。好きなように聴いてください」
そうして掻き鳴らされるギター。次の瞬間、「せーの!」とメンバー全員が声を張り、「パブリック」が溢れ出した。勢いよく空間を駆けてゆくこの曲に重なるのは5人の姿だ。光も闇も、やさしさも醜さも全部抱きしめる覚悟で走り始め、今もなおまっすぐに未来を見据えて大地を蹴る果敢な姿。「せーの!」と声を掛け合いながら、Mrs. GREEN APPLEは立ち止まることなく次の一歩を踏みだし続けていくのだ、きっと。
アコースティックバージョンで演奏された「我逢人」、藤澤がフルートの腕前を披露した「庶幾の唄」とアンコールも楽しい試みが盛りだくさん。しかして、この日いちばんにオーディエンスを歓喜させたのは7月にリリースされる2ndシングルの本邦初演奏だろう。「サママ・フェスティバル!」とタイトルされた、大森いわく“だいぶアッパーな曲”。その言葉に偽りはなく、曲が始まるとすぐに客席が激しく揺れだしたのだからすごい。燦々と降り注ぐ陽光の下、ガッツリと盛り上がる夏フェスの様子が目に浮かぶようだ。夏の到来に先駆け、6月には東名阪CLUB QUATTRO対バンツアー“Mrs. TWOMAN TOUR ~初夏とリンゴとロックバンド~”も控えている。次は何を見せてくれるのか、やはりこの先も目をみはらずにはいられないのだろう。
【取材・文:本間 夕子】
【撮影:後藤壮太郎】
リリース情報
サママ・フェスティバル!(初回限定盤)[CD+DVD]
2016年06月15日
ユニバーサル ミュージック
1. サママ・フェスティバル!
2. umbrella
3. ノニサクウタ
[DVD]
・ワンマンツアー「TWELVE TOUR ~春宵一刻とモノテトラ~」より最終日の赤坂ブリッツのライブから厳選した数曲を収録。
・「サママ・フェスティバル!」ミュージックビデオ&メイキングも収録。
セットリスト
Mrs. GREEN APPLE presents TWELVE TOUR
『~春宵一刻とモノテトラ~』
2016/04/10@赤坂BLITZ
- 愛情と矛先
- SimPle
- アンゼンパイ
- キコリ時計
- ミスカサズ
- 私
- HeLLo
- 春愁
- Speaking
- うブ
- No.7
- リスキーゲーム
- StaRt
- パブリック
- 我逢人
- 庶幾の唄
- サママ・フェスティバル!【2st Sg 初公開】
お知らせ
ARABAKI ROCK FEST.16
2016/04/30(土)みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
J-WAVE & Roppongi Hills present
TOKYO M.A.P.S SEIJI KAMEDA EDITION
2016/05/04(水)六本木ヒルズアリーナ
rockin’on presents 『JAPAN JAM BEACH 2016』
2016/05/05(木)幕張海浜公園 JAPAN JAM BEACH特設会場
VIVA LA ROCK 2016
2016/05/29(日)さいたまスーパーアリーナ
百万石音楽祭2016~ミリオンロックフェスティバル~
2016/06/04(土)石川県産業展示館(1~4号館)
『Mrs. TWOMAN TOUR ~初夏とリンゴとロックバンド~』
2016/06/14(火)UMEDA CLUB QUATTRO
2016/06/16(木)SHIBUYA CLUB QUATTRO
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。