SHE’S&HOWL BE QUIET&LAMP IN TERREN、同世代バンドによるスリーマンツアー「One-Two-Three, For!! TOUR」ファイナルをレポート!
SHE’S / HOWL BE QUIET / LAMP IN TERREN | 2016.05.02
日本のどこかで災害が起きたときに、遠い地域に住む人も他人事ではないのだという意識が数年前よりも強くなった。それゆえに、この日会場に集まった人の中には、「こんなときにライヴを観に来てもいいのか」という想いを抱きながら会場に足を運んだ人もいたかもしれない。だからこそ、一番手で登場したSHE’Sの井上竜馬(Vo)は、「今日は俺らに任せてください!」と言っていた。HOWL BE QUIETは、言葉ではなく、いつも以上に笑顔を絶やさずにステージをやり切った。LAMP IN TERRENの松本大(Vo・G)は、「誠心誠意、大好きなものを感じてほしい」と言った。やり方に正解はない。それでも“いまこの状況”に何らかのアティテュードを示して、目の前のお客さんと向き合おうとする3組がとても頼もしかった。それが、今年の「One-Two-Three, For!! TOUR」だった。
「One-Two-Three, For!! TOUR」とは、SHE’S、HOWL BE QUIET、LAMP IN TERRENという同世代バンドによるスリーマンツアー。昨年に続き、2回目の開催となる。大雑把に括ると3バンドの共通点は、メロディと言葉を大切にする“歌ものバンド”と言われる。が、その音楽的ルーツや考え方はバラバラだ。いずれも注目度が急上昇のメンツだけに、今年は東名阪に加えて、仙台・福岡・広島を追加した6都市での開催にスケールアップした。実際、すでにメジャーデビューをしていたテレンを追うように、ハウルは今春メジャーデビューを果たし、SHE’Sも6月にはメジャー進出が決まっているという状況。まさに今後の音楽シーンの担っていくであろうバンドが一堂に会する見逃せないライヴとなった。
「One-Two-Three, For!! TOURファイナル!みんな準備OK?」という、井上の問いかけでスタートしたSHE’Sのステージは、1曲目「Un-science」からスタートした。ボーカルの井上がステージの中央で歌いながらピアノを弾き、そこに服部栞汰(G)、広瀬臣吾(B)、木村雅人(Dr)が奏でる躍動感のあるバンドサウンドが重なって、フロアの空気を温めていく。一気に3曲目「ワンシーン」まで歌ったところで、「嫌や、終わりたくないっ!」と、ツアーの終わりを駄々っ子みたいに名残惜しんだ井上。そんな言葉が出るのも、ここまで3バンドがかけがえのない時間を過ごした証拠だろう。そして、フロアからのシンガロングを誘った「Voice」、カントリー風の「Evergreen」へと、洋楽をルーツに持つSHE’Sの美しくも熱を帯びたサウンドスケープが、凛とした生命力を湛えてフロアを満たしていった。そして、ラストは「遠くまで」。遠くの街まで届けと、まるで祈るように放たれたエモーショナルな井上の歌唱には、音楽に全幅の信頼と希望を寄せるバンドの強い意志が宿っていた。
全員が真っ白の衣装でステージに登場したHOWL BE QUIETはポップでキャッチーな「From Birdcage」から、フロアをハッピーな色に染め上げていった。彼らもSHE’Sと同じく、ボーカルの竹縄航太(Vo・G・Piano)がピアノを弾きながら歌うスタイル。だが、この日の初っ端は竹縄がハンドマイクで歌い、フロアの一人ひとりの表情を確かめるように歌い出したのが印象的だった。そして、ブラスセッションを同期したゴージャスなサウンドで踊らせた「Daily Darling」や、キラキラとしたポップナンバー「MONSTER WORLD」へ。竹縄航太というソングライターに引き寄せられて集ったメンバーが、楽しげに鳴らすハウルのバンドサウンドは、聴き手を自然と笑顔にしてくれる幸福感がある。そんなライヴを締めくくったのは、「どんなことも終わっちゃうけど、覚えててほしい。そんな歌を」と、竹縄が言った極上のバラード曲「A.I.」。とりわけアップテンポな楽曲を中心にしたステージの最後をエモーショナルな歌で収束させる、ハウルらしい終わり方だった。
トリを飾ったのは、LAMP IN TERRENだ。今回のツアーではステージの出演順が日によってバラバラだったという。一番手には一番手の、中継ぎには中継ぎの、トリにはトリの立ち居振る舞いがある。そういう意味で、この日のテレンは“トリの役割”を全力で果たそうという貫禄のステージだった。1曲目の「portrait」を皮切りに、4人が奏でる剥き出しのロックサウンドが、ビリビリと代官山ユニットの空気を震わせていく。松本が眼光鋭く叫ぶように衝動をぶつけた新曲「innocence」から、川口大喜(Dr)が鳴らす強いリズムに導かれて高らかに歌い上げた「緑閃光」へ。その音楽には、歌の上手さや演奏力の高さだけでは測れない、心に強く訴えかける切実な想いがある。「俺は音楽を自分の大切なものにして良かった」。そんな松本の言葉で届けたラストナンバーは「キャラバン」。大屋真太郎(G)と中原健仁(B)のツートップが一歩前に出てフロアを煽り、“音楽の魔法”を心から讃美する希望の歌は、このイベントの締めくくりにとても相応しかった。
ツアー中の恒例企画として、アンコールではトリのバンドによる、他のバンドのカヴァーが披露された。テレンが選んだのは、「言いたいけど、自分では言えないことを歌ってくれた曲」と紹介したSHE’Sの「Un-science」。一部歌詞を間違えた松本は悔しそうに苦笑いを見せたが、そんな粋な演出からも3バンドの特別なつながりがひしひしと伝わってきた。続けて披露された「multiverse」では、松本が「今日ここにいる全員の声を聴きたくないですか?」と言って、3バンドをステージに呼び込み大合唱。そんなステージ上の総勢12人で最後に会場の喝采をさらったのは、桑田圭祐のカヴァー「波乗りジョニー」だった。メインヴォーカルだけでなく、それぞれの楽器も交代しながら弾くという目まぐるしいステージ。それは、集まったお客さんを夢心地にしてしまう幸せで最高のフィナーレだった。
この先、SHE’S、HOWL BE QUIET、LAMP IN TERRENの3組は、それぞれ大きなステージに向けて、歩みを止めずに進んでいくはずだ。だが願わくば、この素敵なイベントはこれからも続いてほしい。そんなふうに思ったのは、きっと私だけではないだろう。
【取材・文:秦 理絵】
【撮影:山川哲矢】
リリース情報
[SHE’S]Morning Glow(初回生産限定盤)
2016年06月08日
ユニバーサル ミュージック
1. Morning Glow
2. 日曜日の観覧車
3. Time To Dive
[DVD]
Live Footage “She’ll be fine -chapter. 0- at Shibuya Club Quattro, 3.14.2016”
メジ
リリース情報
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[LAMP IN TERREN]innocence / キャラバン(初回限定盤)
2016年05月02日
A-Sketch
02. キャラバン
03. とある木洩れ陽より
お知らせ
NIIGATA RAINBOW ROCK 2016
2016/05/04(水・祝) NEXS NIIGATA
ヤングライオン祭り’16
2016/05/21(土) 大阪城音楽堂
Mujack Dream Land 2016
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Mujack Dream Land 2016
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2016/05/07(土) 神戸ワールド記念ホール
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802RADIO MASTERS SPECIAL LIVE DARS SWEET EMOTION
2016/05/24(火) 心斎橋Music Club JANUS
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。