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吉澤嘉代子、見事な絶景が広がった「絶景ツアー “夢をみているのよ”」ツアーファイナルをレポート!

吉澤嘉代子 | 2016.05.10

 最新アルバム「東京絶景」を携え、札幌からスタートした吉澤嘉代子の「絶景ツアー“夢をみているのよ”」が、4月30日・東京国際フォーラム ホールCでファイナルを迎えた。開演前の会場に流れているのは、スクーターズの「東京ディスコナイト」やTOKIOの「AMBITIOUS JAPAN!」、THE BOOMの「中央線」など、東京にまつわる楽曲ばかりだ。これまでもたくさんのアーティストが切り取ってきた東京の景色。今夜、吉澤嘉代子はこの場所でどんな景色を作り上げるのだろう――。

「今日から私は、この街で、新しい生活を始めます」

 客電が落ち、ステージに灯る明かりの中から聞こえてきた「仰げば尊し」と彼女の言葉、そして東京駅への到着を告げる電車のアナウンス。今回のライブは、高校を卒業して東京でひとり暮らしを始める女の子が主人公であり、それを見守る愛犬・ウィンディ(※吉澤が子供の頃に行ってきた“魔女修行”のパートナー)とのやりとりで物語が進行していく、という演劇仕立てのものだ。1曲目の「雪」を丁寧に歌い上げると、回転寿司屋でバイトをすることになり、そこの店長に恋してしまった主人公のひとり言「彼を想うと、ん~、ひゅーひゅー!」というセリフから2曲目の「ひゅー」へ。その後も「ユキカ」、「綺麗」と続き、「ガリ」ではねじり鉢巻で寿司桶を抱え客席へ。本物のガリをばらまきながら会場を沸かせたと思ったら、続く「手品」ではお客さんを巻き込んでの手品まで披露。会場はあっという間に彼女のペースに巻き込まれていった。

「店長に奥さんがいたなんて!ひどい話よ!」

 泣きじゃくる主人公の言葉にドッと笑いが起こる。絶望のデスボイス、怒りのギターソロから曲はハードなロックチューン「化粧落とし」へ。女子にとっての大問題をユニークな視点で歌った「ケケケ」から「ひょうひょう」、「胃」と主人公の心情に添った楽曲が次々とシーンを彩っていく。ピンスポットの中、吉澤自身の多重コーラスに合わせてひとりで歌った「野暮」は中盤のハイライト。バンドサウンドとの対比も美しく、内側へと向かっていく主人公の気持ちが絵画のように表現された1曲だった。

「あの子ったらすぐにメソメソするんだから。泣いたって何も変わらないのにね。でもね、メソメソしてもいいのよ。私がいくらでも話を聞くから。ずっとはそばにいられないけど、一緒にいられる間はいくらでも聞くわ。あなたが私を必要としなくなる日まで」

 物語の終わりが近づいていることを予感させる、ウィンディの言葉。ワルツのリズムが物悲しく響く「ぶらんこ乗り」からの流れでは、人間の感情とか鼓動とか、目には見えないけど確かに感じるものをそのまま音にしたようなサウンドが印象的だった。吉澤のアコギとバンドのグルーヴ、客席からのクラップなどが一体となり、音が音符を超えて迫ってくるような迫力。その真ん中に吉澤の声があり、仕草のひとつひとつまでもが音楽の一員となって曲を作り上げているように感じた。ウィンディがくれた最初で最後の魔法を思って書いたという「movie」から「ストッキング」へ。東京に出てきた女の子の物語はいつしか吉澤嘉代子自身の物語となり、オーディエンスはただただ目の前の景色と歌を真っ直ぐに受け止めているようだった。

「みなさんありがとうございます。今日がツアーのファイナルです。今日この場所で、この歌を歌うのを本当に楽しみにしてきました。最後の歌です。「東京絶景」」

 小さな窓と、あちこちに山積みされた段ボール。そして裸電球。吉澤嘉代子は、そんなステージセットの真ん中に立ち、アコギ1本で歌い始めた。それまでは彼女の世界に引き込まれ、彼女が導いてくれた景色を共有してきたはずだったが、この曲を聴いていると、甘酸っぱかったり苦かったりしたあの頃の”自分”の景色へと変わっていくのを感じる。誰かの物語ではなく、最後はフッと自分自身に戻してくれるような彼女の声が、とても優しく響いた本編のラストだった。

 アンコールでは、「こんな景色、初めて見ました」と吉澤。満員の客席を見渡しながら、今回のアルバムに込めた思いや幼い頃の魔女修行について語り、「今回は特にグッと力の入ったツアーだったんですが、バンドのメンバーはもちろん、舞台監督さんとかローディーさんとかPAさんとか、デビューの時から一緒にやってくださってる皆さんと一緒にここでワンマンが出来たーーかっこいい言い方をすると、東京国際フォーラムに連れて来れたと思ったらすごく嬉しくて。本当に幸せな時間でした。みなさん来てくれて本当にありがとう」と感謝の言葉を伝えた。何度も何度も終わってしまうことへの淋しさを口にしながらも、「全力で歌います!」と気持ちを奮い立たせながら、「まだ音源化はされてないけど、私の好きな歌」だという「残ってる」(名曲!)と、インディーズ時代の楽曲「未成年の主張」を披露。バンドメンバーも全員送り出してライブは終了かと思われたが、客席からの熱烈なアンコールに応えて「じゃあ、もう1曲行こう!あ、ひとりじゃ出来ないですけど、バンドメンバーの皆さんはもう1曲やったら追加料金になるんですかね(笑)?」と吉澤。ファンからのリクエストに応え、この日2度目となる「ケケケ」を全員で歌って踊って幕を閉じた。

「私、ひとつ言いたいことがあって。でもなんかすごく恥ずかしい言葉だから控えようかどうしようか…。でも、言おうかなあって思います。みなさん、今日は東京の絶景をありがとう!」

 アンコールの途中で恥ずかしそうにそう伝えていたが、この日のライブを表す言葉として、それ以上のものはなかったはず。夏には新しいアルバムがリリースされることも発表され、今後の新曲、そしてこれからの吉澤嘉代子の活動がますます楽しみになった一夜だった。

【取材・文:山田邦子】
【撮影:鳥居 洋介】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル 吉澤嘉代子

リリース情報

東京絶景

東京絶景

2016年02月17日

日本クラウン

1. movie
2. ひゅー
3. 胃
4. ガリ
5. ひょうひょう
6. ジャイアンみたい
7. 手品
8. 化粧落とし
9. 綺麗
10. 野暮
11. ユキカ
12. 東京絶景

お知らせ

■ライブ情報

れもんらいふ TOKYO MUSIC Vol.1
2016/05/16(月) SHIBUYA WWW

短編小説の朗読と ED ソングの演奏による小説と音楽の融合イベント「奇跡と退屈 vol.0 」
2016/06/05(日) 渋谷 O-nest

成人少女 中上夕海企画「胸さわぎSOS!」
2016/06/25(土) 京都ROOTER×2

JOIN ALIVE 2016
2016/07/17(日) いわみざわ公園<野外音楽堂キタオン&北海道グリーンランド遊園地>

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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