AL全国ツアーファイナル“マッドシティー東京!”圧倒的な興奮が観客を包む
AL | 2016.05.11
4月に1stアルバム『心の中の色紙』をリリースした後、ツアー『AL 1st Tour 2016』をスタートさせて名古屋、福岡、大阪を巡ったAL。ファイナル公演となる東京の会場は赤坂BLITZ。後方までビッシリ埋まっているフロア内は賑やかだが、どこか和やかなムードが漂っている。そんな独特な雰囲気を感じていると、突然落とされた客電。リラックスした様子でステージに現れた小山田壮平(Vo・G)、長澤知之(Vo・G)、藤原寛(B・Cho)、後藤大樹(Dr・Cho)を大きな拍手が出迎えた。
「今晩は」と挨拶をすると、準備を素早く済ませた4人。そして、1曲目「心の中の色紙」がスタートした。小山田はアコースティックギター、長澤はエレキギターを弾きながら歌い、藤原と後藤は心地よいリズムを添える。オレンジ色の照明に染まったステージから届けられるブルースフィーリングに満ちたサウンドが清々しい。続いて「風のない明日」。ファンキーなギターのカッティングを軸にして交わされる長澤と小山田の歌声に刺激され、身体を揺らして盛り上がった観客。4人の黄金のアンサンブルが、堂々と構築されたオープニングであった。
ハーモニーをエネルギッシュに開花させた「シャッター」。小山田のブルージーなエレキギターのプレイから幕開け、軽快なビートと共に疾走した「Mt. ABURA BLUES」も届けられた後に向けたインターバル。「ALです。マッドシティー東京!」、小山田がハイテンション気味に叫んだ。彼曰く「マッドシティー東京」と叫ぶように長澤に楽屋で言われていたそうだが、この言葉はメンバー内で流行っていたのだろうか? 「やっと東京に帰ってこられたね」と小山田に言われた藤原が「帰ってこられたね、マッドシティー東京に(笑)」と答えるなど、その後も彼らのやり取りの中で何度かこの言葉が出てきた。そんな共通言語も交わしつつ、実に仲が良さそうだったメンバーたち。このような関係性も、ALの心温まるサウンドの源になっていることを感じた。
「昨日はこどもの日だったので」、長澤が言ってスタートした「さよならジージョ」。郷愁を誘うメロディが爽やかに迫ってくる。その後、会場内を満たしていた瑞々しい空気をさらに美しいものにしたのが「懐かしい雨の匂い」。小山田のアコースティックギターのコードストロークから始まり、カントリーミュージック風味を感じる雄大なサウンドが奏でられた。そして、4人によるアカペラから始まり、まるでゴスペルのような神々しさも帯びながら鳴り響いた「メアリージェーン」が素晴らしかった。一心に聴き入る観客たちの集中力が半端ではない。演奏が幕切れた瞬間、ステージに向かって贈られた喝采は特大サイズだった。
「会いにいくよ」「ランタナ」「ワレモノ」「おかしなやつのひとりごと」……曲が奏でられる毎に、観客の間に一層広がっていった幸福感。小山田&長澤という魅力的なシンガー同士の最強タッグに、藤原&後藤によるコーラスも加わり、3声や4声によるハーモニーが鮮やかにきらめき続ける。メンバーたちも終始、実に楽しそう。「さっき楽屋で話してたんだけど、方言を歌にするのは難しい。生活感がすごいから」(小山田)。「泥くさくなるよね」(長澤)――と話し合った後、小山田が歌ってみせた博多弁による「心の中の色紙」。2人の言う通り、生活感と泥くささが一気に増したこの曲を聴いて観客は大喜び。共に福岡県出身の小山田と長澤の普段の何気ない会話が窺われる印象的なMCであった。そして突入した終盤。甘酸っぱいメロディが柔らかに迫ってきた「たぶん、きっと」。長澤の歌と小山田の吹き鳴らすブルースハープの融合に興奮した観客の間からものすごい拍手と歓声が起こった「15の夏」。小山田の振る鈴の音も交えながら牧歌的なサウンドを届けた「リンリンリン」。長澤の爪弾くアコギから始まり、4人が一体となって美しいメロディを浮き彫りにした「あのウミネコ」……素敵なサウンドに浸る贅沢な時間は続いた。
小山田がアカペラで歌い始め、長澤のエレキギター、藤原のベース、後藤のピアノが合流して一気に奥行きを増したアンサンブル。しっとりとした質感のサウンドがじわじわと広がり、やがて後藤がドラムを叩き始めると、天高く飛び立つように響き渡った「ハートの破り方」は、終盤のハイライトとも言うべき最高の演奏だった。そして、本編ラストを飾ったのは「北極大陸」。オーガニックな風味を帯びたサウンドが熱量を徐々に高めていく様がスリリング。演奏が幕切れた時、圧倒的な興奮が観客を包んでいた。
アンコールを求める人々の手拍子に応えてステージに戻ってきた4人。浮かべている笑顔が、とても明るい。「マッドシティー東京!」、余程お気に入りらしいあの言葉を小山田がまた叫んでスタートしたアンコールの1曲目は「晩酌」。軽快にステップを踏んだり、身体を揺らしたりしながらギターを弾き、歌声を交わす小山田と長澤が実に活き活きしている。続いて「HAPPY BIRTHDAY」。4人が一丸となって鳴り響かせたパワフルなサウンドに興奮した観客は、一斉に腕を振り上げる。激しく震えるフロアの風景が壮観だった。そして、ラストに披露されたのは「花束」。メンバー各々にピンスポットが当たりながら奏でられたこの曲。4人が響かせる歌声のハーモニーがとても美しかった。《花束をあげるよ みんな愛してるよ》、何度も繰り返されるフレーズが会場内を温かい幸福感で包んでいく。やがてエンディングを迎えると、湧き起った大きな拍手と歓声。素晴らしいミュージシャンたちによる心のこもった演奏を、全篇で堪能させてくれたライヴであった。
【取材・文:田中 大】
【撮影:杉田 真】
リリース情報
セットリスト
AL 1st Tour 2016
2016.5.6@赤坂BLITZ
- 1.心の中の色紙
- 2.風のない明日
- 3.シャッター
- 4.Mt. ABURA BLUES
- 5.さよならジージョ
- 6.懐かしい雨の匂い
- 7.メアリージェーン
- 8.会いにいくよ
- 9.ランタナ
- 10.ワレモノ
- 11.おかしなやつのひとりごと
- 12.たぶん、きっと
- 13.15の夏
- 14.リンリンリン
- 15.あのウミネコ
- 16.ハートの破り方
- 17.北極大陸
- 18.晩酌
- 19.HAPPY BIRTHDAY
- 20.花束