a flood of circle「ゴールではなく、スタートだ」10周年記念ツアーをレポート!
a flood of circle | 2016.06.24
a flood of circleが何度も挫折を繰り返し、泥まみれになりながらも決して止まることなく積み上げてきた10年。その集大成を飾る素晴しいライブだった。
4月2日に千葉LOOKからスタートした2年ぶりのワンマンツアー。そのセミファイナルとして開催された新木場スタジオコーストには『THE BLUE』というベスト盤のタイトルにちなんで、真っ青なギターケースやブーツが展示されていた。ステージには全国のお客さんの手によって青ペンでびっしりと埋め尽くされた寄せ書きフラッグが揺れる。メンバーが着る衣装も、HISAYO(B)のロングヘアも青かった。青、それはフラッドが愛するブルースの色だ。「10年間ブルースとロックンロールしかやってないです」。MCで発した佐々木亮介(Vo・G)の言葉もこの日は何か特別な重みを感じられてならなかった。
「Golden Time」から幕を開けたライブは初っ端からステージとフロアとが互いの想いを容赦なくぶつけ合う凄まじい熱気に包まれていた。「紹介するよ、オンベース、HISAYO!」。佐々木がクールにその名前を呼んだ「Blood Red Shoes」では、紅一点の女性ベーシストがへヴィな低音でフロアを魅了した。渡邊一丘(Dr)が叩き出す性急なビートもフロアを全力で駆け抜ける。「すげぇ、今日はやばいね。やばいことが起きそうな気がするよ」。佐々木の口調もどこか興奮気味だ。「自由にやりなよ」と挑発するように繰り出した「I’M FREE」から、クレイジーな狂騒を巻き起こした「博士の異常な愛情」へ。予告どおりライブバンド=フラッドの10年をびっしり詰め込んだベストなセットリストだが、その攻撃力は予想以上だった。怒涛のトーキングブルース「Black Eye Blues」では柵に身を乗り出した佐々木がハンドマイクのままお客さんの頭上へと立ち上がり、そのまま倒れ込む。ステージ上を生き生きと暴れまわる佐々木の姿はやはり天性のロックンローラーだ。
「新木場コーストは都内でいちばんエロいライブハウスなんですよ(笑)。お酒飲める人は外のバーカウンターで酔っぱらってってよ」(佐々木)。怒涛の10曲を終えて、ここからは“大人の時間”とばかりに、新木場コーストがロマンチックなムードに包まれていった。空気を一変させたのはミディアムバラード「月に吠える」だ。続けて、巨大なミラーボールがフロアをそっと照らし出した「月面のプール」。佐々木のハスキーな歌声が優しくメロディをなぞっていく。いつの時代にもかっこいいロックバンドには心揺さぶる名バラードがあるものだが、ここでフラッドが聴かせたのもまさにそういうものだった。激しさのなかにある繊細さと儚さ。その鮮やかなコントラストはあまりにも美しかった。
MCでは「この会場すべてに愛しかないよ」と切り出した佐々木が、今回のツアーではいままで以上にメンバーの仲が良くなったと明かした。「ナベ(渡邊一丘)が最後まで打ち上げに参加してて頼もしかった」とか、「姐さんがホテルのロビーで呑もうって言い出して」とか、少しハメを外した打ち上げエピソードに会場から笑いが起こる。「札幌の打ち上げのあと、みんなでカラオケに行ったの。そしたら俺がトイレに入ってる間に、俺以外のメンバーが「世界は君のもの」を歌ってて。それを見て感動したよね(笑)」。全国をまわり、日々かっこいいライブを繰り広げるバンドが、夜はメンバー同士バカみたいに笑い合う。まるで私たちが思い描く理想的なロックバンド像を地で行くのがフラッドだと思った。
「今日はここが世界でいちばん熱い場所になることを約束しよう!」と、佐々木の不敵な宣言と共に繰り出された「Buffalo Dance」からはライブはラストスパートへと向かっていった。「KIDS」から「Dancing Zombiez」へ、コール&レスポンスやハンドクラップを巻き起こしながら、もはやフロアは汗と熱気で酸欠状態だ。それでもフラッドは演奏の手を緩めなかった。「最高!隅々まで最高!でも、ロックンロールは最高を知るためじゃない。最高の向こう側に行くものだ!」。この日、何度目かに飛び出した佐々木の名言に「ウォーッ!」と地鳴りのような雄叫びがあがった。いつの間にか渡邊はジャケットを脱いで上半身がタンクトップだ。そして《土砂降りの中を走ってゆけ》と、フラッドらしい泥臭いメッセージを込めたラストソング「ベストライド」へ。圧巻のシンガロングで本編は終了した。
「ロックンロールバンドで良かった。あなたが何をやってる人かは知らないけど、きっと転がり続けてきたんでしょう。だから俺たちと一緒だよ。こっからだよ。ベストアルバムも久々のワンマンもゴールではない。一緒にロックンロールしようぜ!」。そんな佐々木の言葉を挟んで、本編のラストに披露されたのは「花」だった。バンド10年、人生30年。これまで生きてきた歴史のすべてを肯定するために作り上げたロックンロールアンセムが、集まったオーディエンスを最高のクライマックスへと導いていった。
アンコールを受けて再び登場したメンバーが届けてくれたのは、これも“青”という名前を冠した解放的でストレートな新曲「BLUE」だった。10周年という節目の年ということもあり、ここ最近フラッドが生み出す楽曲は、その先へ進むんだという痛烈な意志が漲った歌が多い。歌い終えて開口一番に「良い曲だろ?」と言った佐々木。それに対するお客さんの答えは、もちろんイエスの歓声だった。さらにメンバーの名前を呼ぶ切実な声に応えたダブルアンコールでは「I LOVE YOU」を披露。「人生でいちばん高いジャンプを決めてくれ!」。最後は会場が一体となる大ジャンプで2時間におよぶライブを締めくくった。
この日のライブでa flood of circleが私たちに教えてくれたものは、何があっても自分のなかにある大事なものを信じて闘い続けること、その尊さだった。そんなフラッドはツアーを終えてもまだまだ止まらない。10月からは新たなツアー「A FLOOD OF CIRCUS大巡業 2016」の開催が発表された。“サーカス”と題した企画ライブに「将来的には本当に象を呼ぼうと思ってるから(笑)」と佐々木は意欲を覗かせていた。きっとこれからもa flood of circleは面白いこと、かっこいいことを求めてロックンロールを鳴らし続けるはずだ。
【取材・文:秦理絵】
リリース情報
“THE BLUE”ーAFOC 2006-2015ー(初回限定盤 CD3枚組)
2016年02月24日
Imperial Records
01.花
02.シーガル
03.Buffalo Dance
04.博士の異常な愛情
05.Human License
06.I LOVE YOU
07.Blood Red Shoes
08.The Beautiful Monkeys
09.理由なき反抗(The Rebel Age)
10.Dancing Zombiez
11.I’M FREE
12.月面のプール
13.KIDS
14.GO
15.Golden Time
16.ベストライド
17.ブラックバード
[Disc2]
01.青く塗れ
02.Miss X Day
03.プシケ
04.God Chinese Father
[Disc3]
01.象のブルース
02.SWIMINNG SONG
03.ノック
04.月に吠える
05.コインランドリーブルース
06.Yu-rei SONG
07.オーロラソング
08.The Cat Is Hard-Boiled
09.ホットチョコレート
10.花
11.ファイト!
お知らせ
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2016/10/01(土) 新代田FEVER
2016/10/02(日) 新代田FEVER
2016/10/15(土) 横浜FAD
2016/10/22(土) 松江AZTiC canova
2016/10/23(日) 京都磔磔
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2016/11/16(水) 十三FANDANGO
2016/11/18(金) 名古屋CLUB UPSET
2016/11/19(土) 名古屋CLUB UPSET
2016/11/23(水) 渋谷TSUTAYA O-EAST
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