全国16カ所を回ったワンマンツアーファイナル、Zepp DiverCityに広がった未踏の赤い公園ワールド!
赤い公園 | 2016.06.24
全国16カ所を回ったワンマンツアー「赤い公園マンマンツアー2016~咲き乱れNight?~」のファイナルを迎えた東京Zepp DiverCityで、待ちかねたオーディエンスを未踏の赤い公園ワールドで楽しませた。
このツアーの核となる3作目『純情ランドセル』は、赤い公園の持つポテンシャルをそれまで以上に開花させた快作だが、6年半前に結成してから今に至るまで彼女たちがどれほど聴きごたえのある曲を作ってきたか、その足跡を示すようなセットリストだった。それは彼女たちにとって最大規模となった今回のツアーが、確かな成果を生んでいることを感じさせていた。息の合った演奏の確かさに加え、曲を続けるほどにその流れに引き込んでいく説得力は、彼女たちの充実ぶりの表れだ。
黄昏のようなSE「タヒチの夕焼け」が流れる中ステージに現れた4人は、いつものように白で揃えたコスチューム。いつもと違ったのは、おもむろに佐藤千明(Vo)がギターを持ちオープニング曲「東京」を弾き語りで始めたことだ。「こんばんは、赤い公園です、東京!」と佐藤が挨拶をすると伸びやかなバンドサウンドに。そして「サイダー」「今更」「14」の複雑なアレンジで高揚させ、フロアを温めていくと、佐藤、藤本ひかり(B)らとのMCで津野米咲(G)が「ここから10曲続けます」と宣言。 ファンキーなグルーヴの「ショートホープ」から更に心地よく揺らす「TOKYO HARBOR」が一つの曲のように続き、バンドの一体感とリズム隊の成長を感じさせた。KREVAとの共演や久保田利伸の曲をカヴァーするなど、これまで試みてきたことが結実した感じだ。オルゴールで始まる「ボール」ではオフコード気味の演奏に引き込み、得意の変調アレンジで聴かせる「ひつじ屋さん」でバンドもフロアも温度を上げ、起伏に富んだ「のぞき穴」は「のぞいちゃいな!」の大合唱でフロアが揺れた。加速した演奏に手拍子に加えサイリウムも振られた「絶対的な関係」の後は、シンバルを鳴らして歌川菜穂(Dr)が「大変だ~!喧嘩だって!」と小芝居を入れ、佐藤が「一戦交えますか?」と呼びかけた「喧騒」。途中に「猫ふんじゃった」を入れたり、サイレンや笛など遊び心たっぷりのアレンジで楽しませた。 「ツアーファイナルで喧嘩はよくないね」と仲直りのMCを挟んで、鬱陶しい気分と季節を重ねた梅雨の歌だという落ち着いたテンポの「ナンバーシックス」、母の手作りハンバーグへの思いを歌ったポップな「ハンバーグ」と続いた後の、複雑な恋心についての「あなたのあのこ、いけないわたし」は、軽やかなメロディを感情込めて歌う佐藤の伸びやかな声が心地よく響いた。新旧の曲をアレンジを変えて流れを作り出し、バンドの歴史を俯瞰したような10曲だった。
このツアーでの出来事などを話しながら「ここからまた10曲続きます」とオーディエンスのことを気遣いながら佐藤が言い、「後半戦もよろしくお願いします」と「Canvas」。ここからは『純情ランドセル』の曲が続いた。これをやるために、このツアーは組まれたのかと思いたくなる流れだった。歌詞もメロディも本当にいい曲と改めて思い、それをライヴでしっかりと伝える4人の表情の明るさが頼もしい。『純情ランドセル』はポップな曲と対照的に内省的な曲も印象に残るのだが、それらの曲をアルバムとは違った表情で伝えたい、そんな思いがあったのではないだろうか。 そんな曲の一つである幻想的な「ナルコレプシー」が終わると、鈴の音が響き津野がギターを置いてピアノに向かい、佐藤がメトロノームを動かす。「おやすみ」は静かな空気の中で始まり、夢に落ちるようにじわりと広がった。メトロノームを佐藤が止めると静寂を破って「デイドリーム」へ。更に大きく広がるこの曲で高めた緊張感を保ったまま突入した「ふやける」は、いつにも増して素晴らしかった。モニターに足をかけ絶唱する佐藤をはじめ、4人それぞれの存在を感じさせる演奏だ。起伏に富んだ構成は大きなスケール感を生み出し、フロアも巻き込む一体感を高めた。今もレコーディングされることなく彼らのアンセムとなっている、この曲が持つ原初的なエネルギーが彼女たちの原動力になっているのかもしれない。こんなことさえ思わせる神々しいまでの曲だ。
一転、軽やかな「KOIKI」が再びフロアを揺らし、佐藤が「行くよ!」と声をかけた「NOW ON AIR」に合わせて手拍子が起き、オーディエンスも歌う。本編ラストはそのまま手拍子が続いた「黄色い花」だ。明るく照らされたフロアでは大きく腕が振られ、花のように手のひらが揺れていた。
ハッピーな空気の余韻の中でアンコールが起こると、グッズのTシャツを着た津野にタオルを頭に巻いた歌川らがステージに再登場。キャップをかぶった佐藤が「もう全部、曲はやったんじゃないかな?あ、もう1曲あった」と「西東京」をやることを匂わせる。オーディエンスにたっぷりコール&レスポンスをしてもらい、拡声器を手に取ると「西東京」に突入。この曲のレコーディング時に、わざと悪趣味なファッションでプロデューサーのアイゴンを驚かせたという彼女たちのお茶目さも、この曲には詰め込まれている。パンキッシュでパワフルな曲が再び熱いカオスを起こしたフロアとステージは、潔い後味で幕を閉じた。
このツアーは公演数もそうだが、内容に関しても彼女たちの新記録を樹立した。数字には換算できない手応えが、このツアーファイナルには確かにあった。アルバム『純情ランドセル』から始まる新しい物語は、まだ第1章を終えたばかり。夏フェス、そしてその後に向けてすでに彼女たちは動き出している。
【取材・文:今井 智子】
【撮影:福本和洋(MAETTICO)】
リリース情報
純情ランドセル(初回限定盤)[CD+DVD]
2016年03月23日
ユニバーサル ミュージック
1. ボール
2. 東京
3. Canvas
4. 西東京
5. ショートホープ
6. デイドリーム
7. あなたのあのこ、いけないわたし
8. 喧嘩
9. 14
10. ハンバーグ!
11. ナルコレプシー
12. KOIKI
13. 黄色い花
14. おやすみ
[DVD]
・「KOIKI」MUSIC VIDEO
・「Canvas」MUSIC VIDEO
・「黄色い花」MUSIC VIDEO
・ 赤い公園ドキュメンタリー映像「情熱公園」
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