kōkuaが結成10年目にして行った初の全国ツアーを完走!
kokua | 2016.07.01
スガ シカオ(Vo)、武部聡志(Key)、小倉博和(G)、根岸孝旨(B)、屋敷豪太(Dr)。日本を代表する凄腕のミュージシャンたちから成るkōkuaが、結成10年目にして初の全国ツアー「Progress」(全4公演)を行った。もともとkōkuaはドキュメンタリー番組「プロフェッショル 仕事の流儀」(NHK)の主題歌のために、プロデューサーでもある武部がそれぞれに声をかけて結成したバンド。その時に生まれた楽曲が、あの前奏を聴いた瞬間、番組名やタイトルバックまでもがすぐさま脳裏に浮かんでしまうほど、多くの人たちに浸透している主題歌「Progress」だ。バンドとしてのライブ活動はこの10年間にイベントなどで2回しかやっていなかった彼らが、1stシングル「Progress」以来、10年ぶりの新作となる1stアルバム『Progress』をこの6月にリリースし、そのアルバムを引っ提げて初のツアーを行ったのだから、メンバーにとってもファンにとっても“待望のツアー”だったと言っていいだろう。
6月24日にNHKホールで開催されたツアーのファイナル公演。ライブの始まりを告げたのは、スガ以外のメンバーで奏でたインスト「BEATOPIA」。この曲が終わるやいなや、スガが登場し、小倉が「Progress」のあの印象的なギターのフレーズを鳴らすと、大歓声が沸き起こった。“生”でこの曲を体感できる喜びをかみ締め、この曲が発表されてからの10年間に自分が歩いてきた月日を、目の前で演奏されるこの曲に重ね合わせていた観客もきっと多かったことだろう。「我々はついこの前、1stアルバムを出したばかりの新人バンド。初めてのツアーです」というスガのMCに場内から笑いが起こる。そりゃそうだ、この面子の中ではスガがいちばん年下とはいえ、それでもデビューから20年近く経っているのだから。
スガのオリジナル曲「愛について」をまさかkōkuaの演奏で聞けるなんて!という贅沢な時間を思う存分味わったあとは、1stアルバム『Progress』に収録した各メンバーが書いた曲「1995」(屋敷)、「黒い靴」(根岸)、道程(小倉)、「kōkua’s talk 2」(武部)が、トークをはさみながら演奏されたが、「このツアーのリハ4日、本番が4日、そういやレコーディングも4日だった」「(1stアルバムや1stツアーまでに)10年を要したので、さて次は何年かかるのか」なんていうメンバー同士の楽しいやりとりや、制作時のエピソードなどが曲と曲の間にはさんだMCで楽しむことができた。アルバムに収録したカバー曲「Stars」(シンプリー・レッド)「私たちの望むものは」(岡林信康)の他にも「Every Time You Go Away」(ホール&オーツ)、「青空、ひとりきり」(井上陽水)がライブ中盤のカバーコーナーに盛り込まれたが、過ぎ去ったそれぞれの時代に生まれた歌は、今の時代に響く歌として放たれた。
ライブは「Music Train ~春の魔術師~」から後半へと突入。「コノユビトマレ」では観客がジャンプし、ミラーボールの光が客席をまわった「午後のパレード」では大合唱が起こった。アルバム『Progress』のインタビュー時に、スガは「kōkuaの時とソロの時とでは、歌詞に限らず、歌い方も息継ぎひとつにしてもまったく変えているし、ロックな感じで歌っている」と言っていたが、ライブでも何曲かでスガはギターを持たずにボーカルに徹した姿があったし、他のメンバーにおいてもkōkuaの時の自分はこうだ!というスタイルを持ち、それぞれの思いが楽器選びひとつにしても、選ぶ音色にしても、自分たちがこのkōkuaを形成しているんだという信念のようなものを、ステージ上の彼らの姿、彼らから放たれる音で感じることができた。
本編の最後に選んだのは「Progress」の10年後のアンサーソング、アルバム『Progress』の顔とも言える「夢のゴール」。「Progress」は自分ひとりで頑張っていく“自分に向けた歌”だった。けれどそこから10年経った時に誰かと生きていく“共生”の歌がここに生まれた。もともとkōkuaは(ハワイ語で)“協力する”“協調する”という意味を持つが、彼らがなぜ結成から10年もの月日を経て、今、この時代に集結し、新曲を生み、こうしてみんなの前に立ったのか、その理由があらためてわかったような気がした。
アンコール。ステージに出てくるなり「あぁ終わっちゃった的な、ね。寂しいよね。なるべく早くやりたいですね」とスガ。その言葉に武部、小倉、屋敷、根岸も大きくうなづき、場内からも拍手が起こった。未来をテーマに書いたという「砂時計」に続き、アンコールの最後は「Progress」。ライブの最初にやったあの曲を、再び彼らは届けたのだった。この日のライブの始めに届けた「Progress」は、聴く者が過ぎた月日や過去に思いを馳せ、今ここにいる自分を思う歌だった。アンコールの最後に届けた「Progress」は、同じ曲であるにも関わらず、歌詞の中にある“あともう一歩だけ前に進もう”が新たな響きと意味を持ち、今ここにいる自分が未来に視線を向けた歌に変わっていたんじゃないだろうか。メンバーがステージを去っても、観客の拍手はいつまでも鳴り止まなかった。その拍手はダブルアンコールを求める拍手でもあり、何年後になろうが、いつかきっとkōkuaは新しい曲を持って、また私たちの前に現れてくれるんだという思いと願いがこめられた拍手に聞こえた。
【取材・文:松浦靖恵】
【撮影:岸田哲平】
リリース情報
Progress
2016年06月01日
ビクターエンタテインメント
02.幼虫と抜け殻
03.砂時計
04.1995
05.BEATOPIA
06.Blue
07.Stars
08.道程
09.kokua’s talk 2
10.黒い靴
11.私たちの望むものは
12.Progress
※表記について…「kokua」の「o」の上にはマクロン(長音記号)がつきます。