THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2016 ライブレポート
THE YELLOW MONKEY | 2016.07.25
「THE YELLOW MONKEYです。さいたまスーパーアリーナ2日目の皆さんにも言わないといけない。帰ってきました、ただいまー!」
日本のロック史に唯一無二の足跡を残してきたTHE YELLOW MONKEYが、15年ぶりに集結しての全国アリーナツアー「THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2016」14本目になる7月10日、彼らを心待ちにしていた満杯のオーディエンスに、吉井和哉(Vo)は呼びかけた。ステージでの彼らの佇まいも演奏も、15年もの長いあいだ止まっていたと思えない、THE YELLOW MONKEYにしか表現できないものを3時間にわたって体験させてくれた。今ここに吉井と共に、菊地英昭(G)、廣瀬洋一(B)、菊地英二(Dr)の4人がいるのは必然であり、吉井が「ドラムス菊地英二ANNIE! ベース廣瀬洋一HEESEY! ギター菊地英昭EMMA!」と紹介し、廣瀬が「ヴォーカル吉井和哉LOVIN!」と呼んだ時、2001年の東京ドームからの時間は瞬時に揮発した。
この4人による確実にハートに届く演奏と骨太のサウンド、ドラマチックな歌、グラマラスなコスチューム、堂々とした身のこなし、それらが一つとなってTHE YELLOW MONKEYのライヴとなる。そこに時間は関係なかった。けれど、彼らはその時間をなかったものにしようとしたわけではなく、むしろ「この15年があったから今がある」と吉井は言った。15年間に4人それぞれが別の道を歩みながら切磋琢磨してきたことが、様々なパワーとなっているのだろう。
「THE YELLOW MONKEYの、その時代その時代の代表曲をたっぷりお届けしようと思います」という吉井の言葉通り、ごく初期の曲から最新曲「ALRIGHT」まで、この日のために選りすぐった曲の数々。まだツアーが続くので具体的な曲名は挙げられないが、そのどれもが今ここで演奏すべき曲となって披露されていった。インディーズ時代の曲も活動休止を目前に発表した曲も、4人にとって皮膚のように体に馴染んだ曲が新たな輝きを得ているようだった。ロックスターや娼婦を主人公にねじれた愛を描く懐かしい曲の記憶が掘り起こされ,ここで聴くことで新たな感動が加えられていく。どれも今の彼らが演奏することで、紛れもなくリアルタイムの曲となるのだ。
中には、かつてとは違った意味合いを歌詞に見い出してハッとするものもある。それもまた彼らの曲の魅力だ。耳障りのいい曲を聴かせるだけでなく、その中に昨日やったことは良かったのかと自問させてくれるような刺があり、だからこそ繰り返し味わいたくなる。ロックとはそういうものだ。彼らはそれを知っている。吉井は結成当時を振り返り、「時代はバンド・ブームが終わろうとしていたけれど、この臍曲がりの4人はバンド・ブームに乗らず、いつまでも歌って演奏できるようなナンバーを作ろうと曲を作った」と言ったのだが、まさにその通りだ。スタンダード曲は、その時代その時代の空気と響き合い時代を超えて歌い継がれていく。彼らの曲も然り。
もうひとつ、曲が進むほどに実感したのは、時には囁き、時には語り、またシャウトやスキャット(?)も交え物語のように歌詞を伝える吉井の歌を、他の3人が誰よりも理解し臨機応変に応えて進めていくことだ。THE YELLOW MONKEYが傑出したバンドである所以の一つは4人が作り出す表現力であり、オーディエンスはそのドラマに惹きつけられていく。ライヴで4人が奏でるサウンドは、レコーディングされたものとは違った熱量やエネルギーを立体的に発散する。体感する以上にヴァージョンアップされているそのサウンドを、今期からサポート・キーボーディストとして参加した鶴谷崇もドラマティックに彩った。ダイナミックなドラムのビート、有無を言わせぬグルーヴを響かせるベース、的確に華を添えるギター、怒りも悲しみもドラマティックに描き出すヴォーカル。それらが一つになって唯一無二の楽曲となって広いホールを満たせば、全身で聴いて受け止め至福に酔うしかない。オーディエンスが熱気を帯びるほどに、吉井がギターソロを弾くEMMAに寄り添い妖艶に絡みついたり、HEESEYがドラム台に飛び乗ってみたり、吉井がマイクスタンドを振り回し、広いステージを走り回れば、EMMAとHEESEYも左右へと走り、声援に応えた。
THE YELLOW MONKEYとして、オーディエンスと触れ合えること、しかもデビュー前から思い出深い街だという埼玉で、活動再開して初のツアーで訪れたことを吉井たちは心から喜び楽しんでいるようだった。何度もステージから「埼玉ーー!」と呼びかけ、たくさんの曲でオーディエンスにコーラスを促し、コール&レスポンスを繰り返した。オーディエンスも手を振り体を揺らしバンドに応える。大型スクリーンは4人の姿を様々な角度から映し続け、照明は広いアリーナも照らして一体感を高めた。バンドとオーディエンスの間に余計なものはなく、お互いの幸福な時間を確かめ合い、時間は瞬く間に過ぎた。そんな思いを吐露するように吉井が言った。「THE YELLOW MONKEYは、もう一生解散しません!自分は、THE YELLOW MONKEYで音楽をやることが、生まれてきた理由だと思っております。このメンバーと一緒に、またバカなロックンロールをやっていくぜ!」
終盤を彩ったのは、”THE YELLOW MONKEYの大切なR&Rアンセム”と吉井が呼んだ曲。20年前に発表された曲だが近年、この曲に歌われているようなことを繰り返しTVで見ている気がする。穏やかに歌い出し大きく広がるこの曲の最後で、吉井が再度メンバーを紹介し、ステージは幕を閉じた。
全ての曲を演奏し終え、音の消えたステージで、4人は互いを労わり合っていたのだろうか。声を掛け合いハイタッチし、オーディエンスに手を振った。最後に残ったANNIEがマイクの前に立ち言った。「俺はみんなに言われてすごく嬉しい言葉があって。”生きててよかった”。俺も生きててよかった。生まれてきてよかった。ありがとう、大好きだよ」
これほど率直に優しい言葉をかけられ、会場がひときわ大きな歓声に包まれたのは言うまでもない。誰一人欠けずにTHE YELLOW MONKEYとして再びステージに立った4人との再会の余韻の中、途中で吉井が「THE YELLOW MONKEYがある世界を私たちが楽しんでいいんだという言葉を見るたびに、自分も同じ気持ちになります」と言ったことを噛み締めていた。夏フェスを挟み9月まで続くツアー・ファイナルまでこの喜びは続く。その後はまた新たな喜びと出会えることだろう。
【撮影:有賀幹夫】
【取材・文:今井智子】
リリース情報
お知らせ
THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2016
2016/07/26(火) 神戸ワールド記念ホール
2016/07/27(水) 神戸ワールド記念ホール
2016/08/02(火) 横浜アリーナ※追加公演
2016/08/03(水) 横浜アリーナ※追加公演
2016/08/27(土) あづま総合体育館 ※追加公演
2016/08/28(日) あづま総合体育館 ※追加公演
2016/09/10(土) 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
2016/09/11(日) 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016
2016/08/13(土) 国営ひたち海浜公園
SUMMER SONIC 2016 (サマーソニック2016)
2016/08/20(土) 大阪・舞洲サマーソニック大阪特設会場
2016/08/21(日) 東京・QVC マリンフィールド&幕張メッセ
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。