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SHE’S、メジャーデビュー後初となるリリースツアー初日、東京公演を完全レポート

SHE’S | 2016.08.01

 今年6月にシングル「Morning Glow」でメジャーデビューを果たしたSHE’Sがリリースツアー【The Everglow ‐chapter.1‐】を開催。初日のshibuya CLUB QUATTRO公演(7月20日)で彼らは、優れたポップ感覚とエモーショナルな歌、そして、ロックバンドとしての濃密なパワーをバランスよく共存させたステージを見せつけた。 

 今回のツアーは東名阪3か所の2マン形式。東京公演の対バン相手は、SHE’Sのメンバーが以前からリスペクトを表明していたcinema staffだ(ちなみに名古屋公演は“雨のパレード”、大阪公演は“GLIM SPANKY”。言うまでもなく、いずれも現在大きな注目を集めているバンドばかりだ)。「以前も声をかけてもらったんだけど、そのときは一緒にできなくて。それでも自分たちのことをずっと好きでいてくれてありがたいです」(飯田瑞規/Vo&G)「年下のバンドに呼んでもらえるようになって嬉しい」(久野洋平/Dr)というフレンドリーなコメントと裏腹に(?)、cinema staffは強烈なステージを展開。オルタナ直系の先鋭的なアンサンブル、抒情性に溢れた歌、まるで火の玉のようなエネルギーを放射するパフォーマンスによって、フロアの熱気を一気に上げてみせた。

 cinema staffのライブの余韻が色濃く残るなか、The Morning Ofの「Let Your Spirit Soar」とともにメンバーが登場。「大阪から来ましたSHE’Sです。よろしくお願いします!」(井上竜馬/Vo&Key)という挨拶から、いきなり「Morning Glow」を放つ。きらびやかなピアノのフレーズ、強靭なグルーヴを備えたバンドサウンド、そして、“いままでの出来事にはすべて意味がある。過去の経験が現在につながっている”というメッセージを込めたリリックが一体となり、すべてのオーディエンスに向かって真っすぐに伝わっていく。最新のSHE’Sが見事に結晶化されたこの曲は、早くもライブアンセムとしての風格を身に付けつつあるようだ。さらに「今までの意味は これから生み出せる」というラインが鳴り響くアッパーチューン「Change」、「どこまでもあなたと 共に行けるから」とオーディエンスに訴えかける「遠くまで」を披露。印象に残るのは、ひとつひとつのフレーズを手渡すような井上のボーカルだ。観客の顔を見まわしながら、激しく鍵盤を叩き、“伝えたい”という思いを濃密に込めながら歌う彼のステージングは、まさにSHE’Sの核となっていた。

 「メジャーデビューして、こうしてツアーも出来て、嬉しく思います。ここから名古屋、大阪と続きますが、振り返ったときに“やっぱり東京、最高だったな”と思える1日にしません?」というMCのあとは、このバンドが持つ音楽性の広さを体感できる場面が続く。
洋楽インディーロックの雰囲気を感じさせるサウンドを体現した「Night Owl」、井上がギターを持ち、カントリーミュージックのテイストを取り入れたアンサンブルが広がった「Evergreen」。ピアノロックというスタイルを打ち出している彼らだが、そのなかに含まれるサウンドはじつに多彩。その音楽的語彙の豊富さは、1曲ごとに様々な表情が楽しめるライブの魅力につながっていたと思う。
 「ちょっと懐かしい曲をやろうと思います」(井上)という声に導かれた「幸せ」も強く心に残った。かつてカンボジアを訪れたときに見た、物乞いをしなくてはいけない子供たちに言われた「僕は不幸じゃないよ」という言葉。別れた恋人から告げられた「私の幸せを勝手に決めないで」という言葉――井上自身の経験に裏付けられたこのバラードは、“幸せとは何か?”という普遍的なテーマに直結している。この奥深い楽曲に生き生きとした感情を与える井上のボーカル、そして、歌をしっかり支えながら、楽曲に内包された思いを増幅させる服部栞汰(Gt)、広瀬臣吾(Ba)、木村雅人(Dr)のサウンドは、この日のライブの大きなポイントだったと思う。

 本編ラストはシングル「Morning Glow」に収録された「Time To Dive」。「全てはここからだって/高らかに歓声を」というメジャーデビューのタイミングにふさわしい歌詞を持つこの曲は“ピアノを中心にしたエモロック”という彼らの基本的なスタイルをさらに更新するナンバー。激しく体を揺らし、声を上げる観客も、この楽曲がもたらすカタルシスを全身で堪能しているようだった。
アンコールで井上は、改めてオーディエンスに向けて話しかける。「しんどいときに聴いて“もうちょっとがんばってみようかな”とか、おうちみたいな、安心できる存在、安心できる音楽でありたいなと、最近強く思います」。そんな言葉に続いて演奏された「Curtain Call」、そのなかにある「独りじゃないって 思えた時/いつだって君の声が 照らしてくれたから」という歌詞は、SHE’Sとリスナーの強い結びつきをしっかりと証明していた。

 アンコール中のMCで井上竜馬は、10月にニューシングル「Tonight」をリリースすることを発表。「今日帰りに、我々のスタッフが封筒を配ってます。そう、金一封が入っています!(観客の歓声を受けて)なんでやねん! 今日いちばんの歓声やん!(笑)封筒の中に僕からのちょっとした手紙とQRコードが書かれたものが入っています。日付が変わるまで、最速で先行試聴できます。Morining Glowとは打って変わって“白黒”という感じの曲です」と話し、終演後には「Tonight」を先行試聴することができるQRコードが入った『SHE’Sからの手紙』が配布された。メジャーデビューのタイミングを経て、知名度と音楽の幅を大きく広げているSHE’S。この日のライブで体現したオーディエンスとの素晴らしい一体感は、ここから始まるSHE’Sの躍進を確信させるに十分だった。

【取材・文:森 朋之】
【撮影:西槙太一】

tag一覧 SHE’S

リリース情報

[SHE’S]Morning Glow(初回生産限定盤)

[SHE’S]Morning Glow(初回生産限定盤)

2016年06月03日

ユニバーサル ミュージック

[CD]
1. Morning Glow
2. 日曜日の観覧車
3. Time To Dive

[DVD]
Live Footage “She’ll be fine -chapter. 0- at Shibuya Club Quattro, 3.14.2016”
メジャーデビューを宣言した感動のMCを含む東京公演を収録したダイジェスト・ライブムービー(全5曲収録予定)

お知らせ

■ライブ情報

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016
2016/08/06 国営ひたち海浜公園

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO
2016/08/12 石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ

Doors
2016/08/13 仙台PIT

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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