ファンキー加藤 I LIVE YOU 2016 in 横浜アリーナをレポート
ファンキー加藤 | 2016.08.09
おかえりなさい。横浜アリーナの客席を探していると、角角に立つ案内係の方からこんなふうに声がかかった。ああ、ここは観客にとってのホームなんだ、と、あらためて。見渡すと、親子で来ている人がなんと多いことか。なかには親子三代と思しきファミリーも。ファンキー加藤が発してきたものが、こんなにも幅広い年齢層に浸透している。その理由を知りたいという素直な思いで、7月23日の【I LIVE YOU 2016 in 横浜アリーナ】に臨んだ。
まず、お馴染みの前説では、マネージャーのおふたりが、なんと連帯責任と書いたタスキをかけて、「このたびはお騒がせして申し訳ありません」と登場。誠意とユーモアあふれるMCと応援体操で、観客の気持ちにポーンと飛び込んでいったのは見事だった。長く加藤を支えてきたスタッフのこの愛情あふれる奮闘ぶりに、いつもとは違う緊張を持っていた観客もすっかり心を開き、一気に明るいムードが広がっていった。全員が応援団。それは、これまで体感したことのない一体感ある温かい空気だった。
SEとともに手拍子が湧き、派手な爆裂音とともに白いTシャツ姿の加藤が飛び出した。「いくぞ、横浜!」とのけぞるように叫んで始まったのは「中途半端なスター」。真っ直ぐな眼差しで、加藤は一人ひとりの目を見るように歌いかけていく。手拍子を打って盛り上がる客席を、モニターに乗ってながめる加藤。その目がちょっと潤んでるように見えたのは気のせいか。スカのリズムが夏らしい「まわせ!」では、カラフルなライトがグルグルと客席を照らしてタオル回しを誘う。“その声をあげろ”では、“ハイハイ!”とみんな笑顔で拳を突き上げた。
「ようこそ。ファンキー加藤だー!」と始まった最初のMCで、謝罪と感謝を述べた加藤は、「説得力ないかもしれませんが、今日は音楽に甘えてみようと思います。失ったものを取り戻させてください。寄りかからせてください。その代わり、胸のド真ん中に届くように一生懸命歌います」と決意表明。温かいミディアム・ナンバー「輝け」に突入した。“上手くいかない事ばっかで”という歌い出しは、まるでたった今の彼の心情のようだ。自分で書いた歌詞を噛み締め、何かが届くことを願いながら歌うその姿から、ストレートに一生懸命が伝わってくる。
「踊ろうぜ!」で始まった「ナツミ」では、会場の子供たちも楽しそうに手のひらを天に差し伸べた。サイリウムの腕輪がきれいにまたたく。手拍子と追っかけのコーラスも完璧だ。スクリーンには歌う観客の姿が映された。≪みんなが主役≫。思わず客席に降りて歌う加藤から、そんな心の声が聞こえてくるようだった。「あの夏のカクテル」でしばしチルアウトしたあとは、スイートなバラード「つながるから」。そのエンディングでは満天の星空が現れて、会場のあちこちから思わずワーッ!という声が上がった。
ここで、サポート陣のふたりを紹介。ちょうど2年MCを務めたMASATOは、自分のグループTHE BEAT GARDENでメジャーデビューするため、この横浜アリーナでサポートは卒業するという。加藤とMASATOのやりとりから、先輩、後輩のいい関係が垣間見えた。サウンドを一手に握る相棒・田中隼人は、加藤に内緒でスタッフが仕込んだ企画遂行のため、なにやらボタンを押す。すると、スクリーンにはあの井上公造リポーターと宮迫博之が相次いで登場し、叱咤激励のコメント。加藤は「聞いてないよー」と言いながらも、正座してそれを静聴。さらに、お仕置きとしてゴムパッチンを受けるという展開に。
サプライズの波状攻撃を受けた加藤は、しばし放心状態。そして、「いや、今回ホントに半分あきらめていました」と本音をポロリ。でも音楽の道しかない、進んでいきたいと、最後まで歌うのを迷ったという「ヒーロー」を、ありったけの思いをこめて歌いきった。「終わらない未来」でも、“何もかも失ったって まだ未来が残っている さぁ 頑張ろうぜ”と歌う。思えば、これまで加藤は、常にそうやって誰かを励ましてきた。どの曲にも、あるある、とうなずきたくなる、いろんな角度のダメさ加減と、そこを越えて奮起する心とが刻まれている。その昔自分が助けられたことを思い出して、今こそ加藤の力になりたいと思った人も多かったにちがいない。みんなが両手を“あの空へ”と高く伸ばした「あとひとつ」では、その壮観さに胸を打たれて佇む加藤の姿があった。
「今日ほどみんなからの頑張れが、心の深いところに突き刺さることはありませんでした。これからは、世界一の頑張れを、歌の中に込めていきます」と「ちっぽけな勇気」を熱唱。「どれだけ雨に打たれても、風に吹かれても、その拳のなかに無限の可能性が秘められていることを、けっして忘れないでください」と締めた。本編最後はデビューシングルで“悲しみを超えて大きな声でここにいるよと歌ってるんだ”と始まる「My VOICE」。加藤の今の状況を映したかのような楽曲に、サビを大合唱で歌う観客が応えた。
やっぱり言葉のある人なんだなとつくづく思う。伝えたいこと、伝えなきゃいけないことが、ちゃんと加藤の体温を通ってこちら側に響く。これだけの人を笑顔にして、これが私の声、これが僕の声と、競うように大きな声を出させてしまうのはなぜだろう。ほころびが露呈しても、やっぱり好きと思わせてしまうのはなぜだろう。それはやはり、ファンキー加藤が渾身の力をこめて内側から発するものに、頭ではなく、人々の心が共振するからではないだろうか。
アンコールでは、高所恐怖症でバンジージャンプに失敗したこともある加藤が、アリーナのド真ん中のいちばん高いところで、ハリツケ状態になって登場した。観客へのサプライズはこれだけでは終わらなかった。「勇者のうた」では、会場一周を超高速大疾走。しかも、二度までも。「これは俺、スタッフに言ってなかったぜ。ファンキーだろう?」と言って爆笑を誘った。そして、「俺にとって、再出発の日でした。全部失いかけてたけど、希望はここにありました」と「リスタート」。
自分の言葉を持って歌ってきた人だから、何事もなかったように進むことが、加藤にはできなかったのだろう。とにかく挽回は自分でするしかない。そんな覚悟で臨んだライブだったんじゃないだろうか。説得力がないと言われてもしかたないと、どこかで諦めつつも、かつて真摯に紡いだ言葉と向き合うことで、加藤自身が確実に何かを取り戻していった。そんな瞬間を目撃できた気がする。
「遠くからでもいいので見守っていてください」と、オーラスは「悲しみなんて笑い飛ばせ」。
歌を作る人、歌う人として、とにかくちゃんと言葉で心を届けるということをした。そんな加藤に、観客も声を上げて、精一杯のエールを送っていた。
【取材・文:藤井美保】
【撮影:笹原 清明 / 堂園 博之】
リリース情報
ブラザー≪初回生産限定盤≫[CD+DVD]
2016年06月08日
ドリーミュージック
M2. 勇者のうた (2016TBS系列プロ野球中継“SAMURAI BASEBALL”テーマ曲)
M3. あの夏のカクテル
【DVD収録内容】
・「ブラザー」VIDEO CLIP
・「ブラザー」VIDEO CLIP メイキング映像
・漢への道 番外編〜プロレス編〜
セットリスト
ファンキー加藤
「I LIVE YOU 2016 in 横浜アリーナ」
2016.07.23@横浜アリーナ
- M-1.中途半端なスター
- M-2.MUSIC MAGIC
- M-3.まわせ!
- M-4.輝け
- M-5.ナツミ
- M-6.あの夏のカクテル
- M-7.つながるから
- M-8.ヒーロー
- M-9.ブラザー
- M-10.終わらない未来
- M-11.太陽
- M-12.あとひとつ
- M-13.希望の唄
- M-14.CHANGE
- M-15.ちっぽけな勇気
- M-16.My VOICE
- EN-1.太陽おどり 〜新八王子音頭〜
- EN-2.大切
- EN-3.勇者のうた
- EN-4.リスタート
- EN-5.悲しみなんて笑い飛ばせ
お知らせ
お台場みんなの夢大陸2016 めざましライブ
2016/08/20(土) お台場夢大陸
MONSTER baSH 2016
2016/08/21(日) 国営讃岐まんのう公園
音楽と髭達2016 -C’mon OTOHIGE-
2016/08/27(土) HARD OFF ECO スタジアム新潟
宗像フェス〜World Heritage Munakata〜
2016/08/29(月) 神湊海水浴場(釣川河口左岸) 特設野外ステージ
秋田CARAVAN MUSIC FES 2016
2016/09/03(土) 秋田県横手市・グリーンスタジアムよこて
イナズマロック フェス 2016
2016/09/17(土) 滋賀県草津市 烏丸半島芝生広場
KANSAI COLLECTION 2016 AUTUMN & WINTER
2016/09/18(日) 京セラドーム大阪
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。