井上苑子、初の全国ワンマンツアーファイナル、超満員の赤坂BLITZ公演をレポート!
井上苑子 | 2016.09.02
アーティストの価値はライブやコンサート会場の大きさで決まるわけではないが、それでも、着実にキャパシティーを広げていく過程を共有できるのは嬉しい。
昨年7月にミニアルバム『#17』でメジャーデビューを果たした井上苑子の初の全国ワンマンツアー「井上苑子 1st SUMMER TOUR 2016 ~みんなおまたせ!~」。ファイナルとなる赤坂BLITZは2階席に立ち見が出るほどの超満員。ステージ上には、ひまわりやガーベラが植えられた花壇が設置されており、夏のガーデンパーティーに誘われたような雰囲気となっていた。今年3月に恵比寿リキッドルームで開催された、高校卒業記念のワンマンライブ「卒業。~私たちのJK完結!~」で制服とさよならし、今春から大学生になった彼女は、デニムのノースリーブに白のスカートという、少し大人になったスタイルで登場。観客はクラップと歓声で彼女を迎え、開演前から期待感で膨れ上がっていた。
ライブは「後ろの人も盛り上がってきましょう!」という彼女の掛け声からスタート。夏休みに入り、好きな人と会えなくなる切なさを描いたアップテンポのポップロック「線香花火」から会場は熱く盛り上がったが、観客のひとりひとりと目を合わせようと客席に近づきすぎたせいか、続く「だいすき。」の歌い出しに間に合わず、慌ててスタンドマイクに戻るハプニングもあった。ミラーボールが回ったポップナンバー「夢」のアウトロでヴォーカリストとして見事なフェイクをみせた彼女は、「2曲目が想像してた曲と違ってびっくりした」と苦笑いで釈明したあと、「ツアーの最後なのでもっともっと盛り上がって最高の夜にしたいです」と意気込みを語り、「彼氏に好きって言えない気持ちを描いた可愛い曲です」と説明した「おんなのこ」ではバンドとの絶妙なアンサンブルを響かせた。
高校時代の親友との別れの悲しさと、それでも前を向いて歩いていくんだという決意を込めた「サヨナラバイバイ」「君に出会えてよかった」の2曲を情感豊かに表現したところで、バンドメンバーが一旦、退場。「1人になりましたが、小6から路上ライブをやってるので、慣れたもんです。ここらは弾き語りで聴いてもらいます」と語り、まず、主演映画「私たちのハァハァ」でカバーし、最新シングル「ナツコイ」のカップリングにも収録されているクリープハイプの初期の名曲「左耳」を披露。アコギによるカッティングのリフに合わせて、観客もクラップで返すなど、すでに独自のコール&レスポンスが生まれていたのが印象的だった。続いては、観客のリクエストに応えるコーナーに。前回は会場にアンケートボックスが設置されており、ステージ上でリクエスト曲が書かれた紙を引いていたが、今回は客電を点灯させ、挙手によるリクエストに変更。そこには、指名した観客に、どうしてその曲を歌ってほしいかという理由も聞きたいという彼女の想いもあったのだろう。大原櫻子「ちっぽけな愛の歌」、彼女も好きだというサザンオールスターズ「真夏の果実」、夏の花火をモチーフにした阿部真央「貴方の恋人になりたいのです」、GReeeeeN「キセキ」の4曲を弾き語りでカバーし、大きな拍手を浴びた。
さらに、今回は<「ナツコイ」の歌詞をオリジナルアレンジしよう!>と題した替え歌コーナーも新設されていた。観客は入場時に「ナツコイ」の穴あきの歌詞を渡されており、そこに自分なりのフレーズを入れて、オリジナルの歌詞の替え歌を完成させ、ステージ上で彼女が選んで歌うという企画。観客が描いた歌詞はスクリーンに映し出され、選ばれた観客とのプライベートな恋バナにも花が咲いた。4人分の替え歌を歌った彼女は、「今日は恋の応援歌でしたね」とコメントし、ライブはいよいよ後半戦へ。
「代々木公園のカップルを想像して作った」というチャーミングなラブソング「ふたり」では会場全体での合唱となり、アップテンポのロックナンバー「グッデイ」「青とオレンジ」では、観客は拳を上げて叫び、ロックバンドのライブのような盛り上がりを見せ、「Say My Name」では「ふたり」よりもさらに大きな合唱が沸き起こった。ここで彼女は、「みなさん、いっぱい声を出してくれてありがとう。初めての全国ツアーなのでどうなるのかなと不安も感じていたんですけど、全国6カ所、どこもほんまに盛り上がってくれてありがたかったです。自分の初めての全国ツアーなので、絶対に一生忘れない日になると思います」と感謝の気持ちを語った。ラストナンバーは、人差し指でキスを投げるフリが印象的な最新シングル「ナツコイ」。銀テープが発射され、ハッピーなイブレーションと高揚感で包まれる中、「ありがとうございました! 井上苑子でした」と満面の笑顔で叫び、サマーソングで始まりサマーソングで終わった本編の幕は閉じた。
そして、アンコールの声が鳴り止まない会場のスクリーンに、「重大発表」の文字が映し出された。この秋に学園祭ツアーと新曲のリリースが決定したことに加え、12月からは東名阪ツアー『井上苑子 19th BIRTH DAY TOUR 2016 (仮)』の開催を発表した。’97年12月11日生まれの彼女にとっては、18歳から19歳になるタイミングでのツアーとなる。しかも、東京の会場は、キャパシティ2500人で、ライブハウスとしては日本最大級と言われているZepp DiverCity Tokyo。また1つ、大きな会場へと歩を進めることになる。
ざわめきが収まらない会場に髪の毛をアップにまとめて再登壇した彼女は、シャボン玉が舞う中で、好きな人と近づく近距離ならぬ“キュン距離恋愛”をテーマにした「君との距離」を歌った後、観客にこう語りかけた。
「私、7月でメジャーデビュー1年になりました。3年前の7月20日は、上京して初めてライブをやった日です。その時はお客さんが50人ぐらいやってん。こうやって、今日、1200人の人が来てくれて。この1年間で知ってくれた人もいっぱいいると思います。ほんまに夢みたいで不思議です。次のワンマンはZepp DiverCity Tokyo。赤坂BLITZからZepp DiverCity Tokyoという階段を上って。ここにいる人たちはみんな来てくれるのかな? 私はすごく楽しみにしてますので、みなさんも楽しみにしていてください!」
最後に、メジャーデビュー曲で親友への思いを込めたカントリーポップ「大切な君へ」を晴れやかに歌い上げ、「ありがとうございました。またね。次のワンマン、19歳の誕生日やからきてなー」と観客に手を振り、ステージを後にした。メジャーデビュー直後の代官山UNITから渋谷クラブクアトロ、恵比寿リキッドルーム、そして、この日の赤坂BLITZを経て、Zepp Diver Cityへ。ファンと友達のような親密な関係を築いている彼女が自身の未来をどこまで想像しているのかはわからないが、アーティストとしての階段を一歩ずつ上っていく彼女の姿をこれからも見届けたいと思う。
【取材・文:永堀アツオ】
【撮影:キセキミチコ】
リリース情報
ナツコイ[通常盤]
2016年06月29日
ユニバーサル ミュージック
02. 君との距離
03. 左耳
04. ナツコイ(Instrumental)
お知らせ
井上苑子 19th BIRTH DAY TOUR 2016 (仮)
12/02(金) 名古屋 BOTTOM LINE
12/04(土) 大阪 BIGCAT
12/11(日) 東京 Zepp DiverCity Tokyo
その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。