ゴスペラーズ、アカペラコンサート。“あの日”を忘れないためのハーモニー。
ゴスペラーズ | 2016.09.13
WAVOC(早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター)が行う、東日本大震災ボランティア活動の支援を目的とした、このアカペラコンサート。ゴスペラーズ主催で2011年から毎年開催され、今年で6回目となる。支援の輪とともに、アカペラグループの輪も広げようと、2103年からは、このコンサートに出演するアマチュアグループを選出するオーディションもスタートした。チャリティーではあるがコンサートとしての完成度は非常に高く、全編アカペラというスタイルにも注目が集まり、今年もソールドアウトとなった。
ステージはゴスペラーズの『NEVER STOP』で幕を開けた。指折りの前向きソングを、こぶしまわしたっぷりで歌いハモる5人。ヴォーカルグループの共演という点においても、自然と気持ちがみなぎるのだろう。今年は、ゴスペラーズとは旧知の仲で、初回から連続出演しているトライトーン、“X FACTOR OKINAWA JAPAN”で優勝し、8月24日にメジャーデビューを果たした男性4人組・Sky’s The Limit、アマチュアグループの馬鹿野郎と松本ママカペラが出演。ゴスペラーズの呼び込みで登場し、「今日はこの5組でアカペラミュージックを奏でていきたいと思います。みなさん、最後まで楽しんでいってください。よろしくお願いします!」と挨拶をしてコンサートを進めた。
トップバッターは馬鹿野郎。近畿大学アカペラサークル所属の男性6人組だ。結成してまだ6ヶ月だが、観客を巻き込む元気いっぱいのパフォーマンスで盛り上げる。続いて登場した松本ママカペラは、長野県松本市で活動する子育てママさん6人組。温かいハーモニーとほっこりトークで会場を和ませた。
ここで再びゴスペラーズが登場。2組のオリジナリティーあふれるパフォーマンスを讃え、「本当にいろんなアカペラがありますね。我々も、いろんなアカペラの最たるものから始めてみましょうか?」(村上)と「猫騒動」でステージをスタート。続いて「このイベントで歌うにふさわしい曲だと思います」と「さらば涙と言おう」を披露し、「最近歌ってなかったね、久しぶりに歌いたいねという曲を、メンバー各々がセレクトしました」と、今年のステージの選曲テーマを伝えた。まずは酒井のセレクトで「A DREAM GOES ON FOREVER」。2ndアルバム『二枚目』でカヴァーしたトッド・ラングレンのミディアムチューンだ。そしてビートルズの「All My Loving」。当時の思い出話にも花が咲いた。
さらに「ここで恒例のコラボレーションを行いたいと思います。今、日本で一番幸せな男たちです」とSky’s The Limit(以下、STL)を呼び込む。尊敬するゴスペラーズとの初共演に「すごく緊張しています」とSTL。その初々しい姿にデビュー当時の自分たちを重ね、目を細めるゴスペラーズ。そして「僕らにとっても大切な曲で、多くの人に知っていただいた曲です。きっと彼らも、そういう曲を生み出してくれるに違いないという期待を込めながら、セッションしてみようと思います」(村上)と「永遠(とわ)に - a cappella -」をSTLとのコラボレーションで聴かせる。互いの想いが重なる熱いハーモニーに拍手喝采が送られる中、「ここから彼らのステージをお楽しみください!」とSTLにステージを渡した。
STLの1曲目は「Desperado」。リードを取る山本のソウルフルな歌声、それを支える力強いハーモニーで、観客の心をグッと捉える。彼らはゴスペラーズ同様、全員がリードをはれるグループ。圧倒的な歌唱力かつ彩り豊かな4声が、一瞬にして会場をSTLワールドに染め上げた。そして「今日は、このような名誉あるステージに立たせていただいて、本当に光栄です。ありがとうございます。最後まで一生懸命歌います」と伝え、「Story of my life」と「Only Human」のスペシャル マッシュアップヴァージョン、「涙そうそう」、「上を向いて歩こう~明日があるさ」を披露した。1曲歌うたびに、喜びと感謝を口にしたSTL。その気持ちが歌声からもひしひしと伝わってくる、清々しいステージだった。
入れ替わり登場したトライトーンは「Raindrops Keep Falling On My Head」でスタート。軽やかなジャズハーモニーが心地いい。本当にいろいろなアカペラが楽しめるコンサートだと、改めて感じる。リーダーの多胡も開口一番「いや~、楽しいですね。もう楽しい」と満面の笑みを見せた。アカペラを通して世代が繋がっていくという素晴らしさに感激して作った温かいナンバー「ハモろうよ」、美しいハーモニーを堪能させてくれた「You Raise Me Up」、アップテンポの人気曲ナンバー「アカペラでゆこう」を次々と聴かせていく。阿吽の呼吸で紡ぎ出す、ゆるぎないハーモニーに身を委ねる贅沢な時間となった。
ステージ終盤、三度ゴスペラーズが登場。ここでは、懐かしいオリジナルソングが披露された。黒沢がセレクトした「Platinum Kiss 」、北山は1stアルバム『The Gospellers』から「深呼吸」、村上が「U’ll Be Mine」のアカペラヴァージョン。そして安岡のセレクトで、今年リリースされたBlu-ray BOXにしか収録されていない「W」という貴重なナンバーまで。「W」については、歌うのがあまりにも久しぶりで、歌詩カードが残っておらず、音源を聴いて歌詩を書き起こしたそう。自分達が作り、ハモってきたアカペラと正面から向き合うことで、グループが進化できる、新しいハーモニーを生み出すことができる。それもこのコンサートの大きな意義なのだろう。
ここで酒井の前にルーパーが運びこまれた。マイクから吹き込んだ音を繰り返し再生できる音楽機材だ。酒井がその場でビートを吹き込んでリズムトラックを作り、その上に5人の声を重ねるという、まさにアカペラの進化系で、今夏リリースされたニューシングル「GOSWING / Recycle Love」の「Recycle Love」で初導入された。「では、その曲をお聴きください」とステージが展開するはずだったが、ルーパーのトラブルで首尾よくいかないというハプニングが。すかさずメンバーが「これがライヴです!」「機材を整えるところからお楽しみください!」とフォローして和ませたところは、流石、デビュー22年目のキャリアだ。酒井の「OKです!」を合図にステージを再開し、『Recycle Love』からノンストップで『終わらない世界』ルーパーヴァージョンへ。これも今回が初披露。一段とダンサブルに進化したアカペラナンバーで、観客も総立ちとなった。
『星屑の街』で本編を締めくくり、アンコール。昨年に引き続き、出演者全員で「坂道のうた」をアカペラで披露した。
この曲は、“津波がきたら高いところへ逃げなさい”という先人の教えを、誰もが口ずさめる歌にして未来へ伝えていこうと、震災を受けて作られた1曲。この日のリハーサルでも繰り返し歌われた。その時間は、開場時刻の2分前まで及んだほどだ。リハーサルが終わる直前、北山は、ステージの全員に向けてこんなことを言った。
「みんなの声と想いをステージの上で一つにして、お客さんに届けるイメージで歌おう」
この言葉に、このコンサートのすべてが集約されている。
【撮影・取材・文・市橋照子】
リリース情報
GOSWING / Recycle Love
2016年07月06日
Ki/oon Music
2. Recycle Love
3. PRINCESS☆HUG
セットリスト
WAVOC presents 東日本大震災ボランティア支援
ゴスペラーズ アカペラコンサート
2016.8.27@サンシティ越谷市民ホール(大ホール)
【ゴスペラーズ】
- 1.NEVER STOP
- 1.あなたに
- 2.悲しみなんて笑い飛ばせ
- 1.にじいろ
- 2.ルパン三世のテーマ(ママカペラヴァージョン)
- 1.猫騒動
- 2.さらば涙と言おう
- 3.A DREAM GOES ON FOREVER
- 4.All My Loving
- 5.永遠(とわ)に - a cappella - (with Sky’s The Limit)
- 1.Desperado
- 2.Story of my life
- 3.涙そうそう
- 4.上を向いて歩こう〜明日があるさ
- 1.Raindrops Keep Falling On My Head
- 2.ハモろうよ
- 3.You Rainse Me Up
- 4.アカペラでゆこう
- 1.Platinum Kiss
- 2.深呼吸
- 3.U’ll Be Mine
- 4.W
- 5.Recycle Love
- 6.終わらない世界
- 7.星屑の街
- 1.坂道のうた(All Cast)
お知らせ
大分復興応援ライブ POWER of LIVE
2016/10/26(水) 別府 B-CON プラザ フィルハーモニアホール
GosTV 10th Anniversary ゴスペラーズ LIVE
<東京公演>2016/11/28(月) 豊洲PIT
<大阪公演>2016/11/30(水) Zepp Namba
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。