HOWL BE QUIETの“本当の答え”が見えた、一夜限りのワンマンライブ
HOWL BE QUIET | 2016.09.23
良い意味で予想を裏切られたライブだった。HOWL BE QUIETが8月3日にリリースした最新シングル『Wake We Up』を引っさげて恵比寿リキッドルームで開催した一夜限りのワンマンライブ「Wake We Up! Special One Man Live!!」。思えば、ハウルがメジャーデビューのタイミングで開催した前回のツアー「チャンス到来TOUR~決戦前夜編~」の渋谷クアトロ公演では、スクリーン映像、ステージから伸びた花道、SMAPのカバーなど、この規模のライブハウスとは思えないほど趣向を凝らした演出が印象的だった。だが、この日のハウルはより広い会場になったにも関わらず、そんな演出は一切入れずに音楽一本で勝負をした。メジャー以降のアイドル宣言。それは“ロックバンド”という窮屈な枠組みからのバンドの解放を意味したが、その決意を過剰にわかりやすく伝えるための舞台が前回だとしたら、この日はひたすらシンプルに音楽と向き合うスタンスを貫いたライブ。これこそ、ハウルが出した本当の答えだと思った。
ソールドアウトの会場。赤いタオルを肩にしたお客さんが会場を埋め尽くす中、映画『インディ・ジョーンズ』のテーマソングのBGMに乗せて、紗幕に“HOWL BE QUIET”とバンド名が映し出された。そしてバサリと紗幕が落ちてステージに飛び込んできたメンバー。キラキラと輝くサウンドに《さあ 始めよう》と飛び出すエネルギーが全開の「Wake We Up」からライブはスタートした。出だしをハンドマイクで歌っていた竹縄航太(Vo・G・Pf)が軽やかな鍵盤を叩いた「Daily Darling」、橋本佳紀(B)のスラップと黒木健志(G)のクリアなリフがクールなセッションを決めた「孤独の発明」。ふんだんに取り入れた同期の音色も鮮やかに楽曲を彩りながら会場をカラフルに染めていく。
「最高だよ!半年ぶりのワンマンということで、全てを置いて帰ろうと思ってます。ガンガンやっていきます!」と、竹縄のMCは手短だった。オーディエンスの手拍子を煽りながら突入した「PERFECT LOSER」、マイナー調のシリアスなトーンが胸を焦がすような「千年孤独の賜物」。趣向を凝らした豊かなサウンドアレンジが1曲ごとにまったく違う景色をわたしたちに見せてくれる。岩野亨(Dr)が繰り出すマーチングドラムにのせたインディーズ時代の代表曲「Merry」は、これまではストーリー性のある映像とともに披露することが多かったが、この日は雪の結晶が舞うシンプルな光の演出だけで届けた。それがまた竹縄航太というソングライターの歌の良さをいっそう浮彫りにする気がした。
「My name is...」では、岩野がエレドラを叩き、黒木が鍵盤を弾く。生演奏でループするトラックのうえを語りかけるようにラップする竹縄。メロディに定評のあるハウルだが、竹縄を中心とした挑戦的なサウンドメイキングにはまだまだ大きな可能性がある、そんな1曲だ。ピアノをフィーチャーしたダークなバラード「バトルナイフ」では、竹縄の体に脈打つような光が直(じか)に投影。今回のライブで唯一の演出がVJを迎えた光と音楽のコラボレーションだった。シンプルで繊細な光が、ハウルが歌のなかで描く心の機微に静かに寄り添う。そこから絶望と孤独に抗おうと歌う「救難戦争」までのタームはこの日のハイライト。同時に、メジャー以降のキラキラとしたハウルの裏にある消えない闇を再確認する瞬間でもあった。
高校時代からのつながりがあるメンバーの和気藹々としたMCを聞けたのは終盤。「ドラムの亨ちゃんが(みんなを)笑わそうとしてる」と、岩野がMCで用意していたネタを先回りで言ってしまう竹縄に、「タケちゃん、今日はそういうの全部言っちゃうんだね(笑)」と、岩野は苦笑い。そんな岩野は、その後に披露したモノマネで会場がやや微妙な空気になり、「帰りたいよ~!」と弱音を吐いたりして、お客さんをさらに笑顔にさせていた。
そこからはアップナンバー「From Birdcage」を皮切りに、ライブはクライマックスに向けて一気にボルテージをあげていく。「一緒に歌おうよ!」(竹縄)と繰り出した「ライブオアライブ」から、重低音のリズムに踊るEDMナンバー「レジスタンス」へ。もともとは“ピアノを弾くボーカリスト”が原点の竹縄だが、最近はハンドマイクでフロア全体を巻き込みながら歌う躍動感溢れるフロントマンとしての姿も様になってきた。最後は笑顔で「本当に今日は楽しい!また遊ぼうね」と言うと、《かさぶただらけの心は 今日もちゃんと僕で動いてる》――そんな彼ららしいフレーズで希望を描く「ウォーリー」をラストソングにライブを締めくくった。それは絶対的なヒーローの応援歌のようなものではないけれど、誰もが胸に抱く《臆病な心》に火を灯し、明日への小さな勇気をくれる歌だった。
アンコールでは、竹縄は「本当はバンドでやろうと思ったんだけど……」と前置きをして、ひとり鍵盤の弾き語りで新曲「サネカズラ」を披露した。「俺のことを一生忘れられなくさせてやろうと思って書いた曲です」。そうやって紹介されたのは、別れた相手の幸せを願うピュアなラブバラード。美しい歌声とピアノの旋律で会場がうっとりとした雰囲気に包まれたところで、「俺らの歴史上でも大切な1日になりました!」と、竹縄はスペシャルな一夜を振り返った。そして「いろんな毎日のなかで闘い抜く、あなたたちの歌です!」と、ハウル最強のライブアンセム「MONSTER WORLD」で最高のフィナーレを飾ると、がっちりと肩を組んだ4人にオーディエンスからは惜しみない拍手が送られた。
なお、アンコールで披露された新曲「サネカズラ」はニューシングルとして、12月14日にリリース予定。メジャー3枚目にして真骨頂のバラードを用意してきたHOWL BE QUIETの本気を受け止めるときがきた。
【取材・文:秦 理絵】
リリース情報
Wake We Up
2016年08月03日
ポニーキャニオン
2.ウォーリー
3.My name is...
セットリスト
Wake We Up Special One Man Live!!
2016.9.11@恵比寿LIQUIDROOM
- 01.Wake We Up
- 02.Daily Darling
- 03.孤独の発明
- 04.PERFECT LOSER
- 05.千年孤独の賜物
- 06.Merry
- 07.My name is...
- 08.GOOD BYE
- 09.バトルナイフ
- 10.救難戦争
- 11.From Birdcage
- 12.ライブオアライブ
- 13.レジスタンス
- 14.ウォーリー
- EN-01.サネカズラ
- EN-02.MONSTER WORLD
お知らせ
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